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ダライ・ラマ法王14世ノーベル平和賞受賞31周年記念におけるカシャック(内閣)の声明

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2020年12月10日

31年前の今日、ダライ・ラマ法王はノルウェーの首都オスロにおいてノーベル平和賞を授賞されました。吉祥なるこの場を借りて、内閣は、私たちが最も敬愛する偉大なるダライ・ラマ法王14世に心からの敬意と感謝を込めて礼拝し、この喜びを世界各地のチベット人、その友人である支援者の皆様に捧げたいと思います。

1989年、ダライ・ラマ法王は栄誉あるノーベル平和賞を受賞されました。チベット問題の解決に取り組むなかで示された、寛容と相互尊重を土台とする平和的解決を求める姿勢が認められたのです。

法王は60年以上にわたって世界平和のために献身され、慈悲・寛容・思いやりを説かれるとともに、異なる宗教間の調和と、普遍的価値に基づいた倫理を促進することにより、公正な社会への道を切り開いてこられました。また法王は常々、古代インドの知識である心と感情の働きを「こころの科学」として紹介され、これを復興させることをご自身の使命のひとつとして取り組んでおられます。法王が、世界中で最も愛されている指導者のひとりとしてより平和な世界へと絶えず導いてくださった結果として、チベット問題は世界中から支援をいただいているのです。

本日は、世界人権デーでもあります。チベットについて言えば、中国の憲法ならびに民族区域自治法に記載されているチベット人の基本的人権は、中国政府の抑圧的な政策によって踏みにじられ続けています。2009年以降、焼身抗議をしたチベット人は154人に上ります。彼らは自分の命を諦めることで、チベットにおける基本的自由を求めたのです。

今年の6月には、ルンドゥルップ・ダクパというチベット人歌手が、ある歌を歌っていることを理由に6年間の懲役刑を受けました。「黒い帽子」というタイトルのその歌は2019年の3月にリリースされたもので、彼はチベット人の苦しみを「この世の地獄」になぞらえて、チベット語に対する弾圧について歌っています。しかしながら、占領下の窮状を表現したために投獄されたアーティストはルンドゥルップ・ダクパだけではありません。彼は長いリストに追加された新たなチベット人に過ぎないのです。

ルンドゥルップの歌は、政治的活動をした疑いで1年前に恣意的に逮捕されて以来外部との連絡が断たれたまま拘束されているンガバ地区の僧院のリンチェン・ツルティムという僧侶のようなチベット人のことを示唆していると思われます。同様の報告は数日前にもあり、著名な作家で詩人のゲンドゥン・ルンドゥルップというレブコン(青海省同仁)出身のチベット人が、恣意的に逮捕されて以来所在がわからなくなっているようです。

今年9月、米国のジュームズタウン財団が発表した報告書により、チベットの貧困救済計画という名目の下に、”職業訓練”の仮面を被った軍隊式の強制労働収容所が展開されていることが明らかになりました。この報告はまた、2020年のまさに最初の7カ月間で50万人以上のチベット人が収容所に送られた証拠をつかんでいます。対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)は、チベットで展開されている強制労働システムを非難するとともに、世界各地の63人の国会議員が署名した声明を出し、速やかに残虐行為をやめるよう中国政府に求めました。

中国政府の露骨な基本的人権とアイデンティティの攻撃にもかかわらず、チベット本土のチベット人は非暴力の抵抗を続けています。チベット人の闘いは、真実・正義・自由のための闘いであり、それゆえに世界中から支援をいただき続けているのです。

この10月にニューヨークの国連本部で開かれた国連第3委員会一般討論では、39カ国による共同声明が出され、チベット、東トルキスタン、香港において人権を尊重するよう中国に求めました。つい先日も米国下院において、中道のアプローチの支持とともにダライ・ラマ法王14世の顕著な人類貢献を認める法案が満場一致で可決されました。

10月には、カナダのオンタリオ州議会においても、ブティラ・カルポチェ議員がチベット人のために7月を「チベットの文化遺産月間」とする法案を提出し、満場一致で可決されました。

さらに同月には、米国のマイク・ポンペオ国務長官が、チベットに関する問題の特別調整官としてロバート・A・デストロ次官補を新たに任命しました。チベット亡命政権(CTA)の首相が正式に米国国務省に招かれて特別調整官に会いに行ったのは、その発表からわずか数日後のことでした。

そして11月、チベット亡命政権の首相は正式にホワイトハウスを訪れ、アジア関連問題の担当官ら、大統領事務所と副大統領事務所の職員に会いました。米国の国務省とホワイトハウスを訪問できたことは歴史的なことであり、私たちはチベット問題を支え続けてくださっている米国政府に感謝を申し上げたいと思います。

中国政府は、チベット本土のチベット人の感情や願いに目をそむけ続けることはできないことに気づかなければなりません。チベットにとって真の解決は、中道のアプローチと対話以外の方法によって見いだすことはできないのです。2008年、北京で行われた第8回目の対話の席において、法王の特使たちは「全チベット民族が名実共に自治を享受するための草案(覚書)」を中国政府に提出しました。2010年には、中国政府によって提起された懸念に対処するための草案の付記が提出されました。法王とチベット亡命政権は、草案のとおりにチベット問題の解決に全力を注ぎ続けてきました。私たちはいつでも対話に入る準備ができているのであり、中国政府には対話要請に応じるよう強く求めたいと思います。

世界保健機関(WHO)によれば、新型コロナウイルス感染症による死者はすでに世界全体で150万人を超え、感染者は6,500万人以上に上ります。この感染症が世界にまん延した一因には、発生の初期段階において、圧政的な検閲によって言論の自由を弾圧するという長年の戦術が中国政府によって用いられたことがあります。米国を拠点とするピュー研究所が実施した調査においても、初期の中国政府の不適切な対応が中国に対する不信と好ましくない意見を増長させたことが示唆されています。中国が世界の信頼を取り戻し、世界のリーダー国というポジションを再び得るには、民主化・自由・国際法における時宜にかなった進化が必要です。

この秋には平和に向けた大きな動きがありました。中米の小さな国ホンジュラスが核兵器禁止条約の50カ国目の批准国となったことで、2021年1月22日に条約が発効されることになったのです。ダライ・ラマ法王は生涯にわたって核軍縮の唱道者であり、この知らせを歓迎するとともに、国連ならびに50の批准国の協調的な努力を「正真正銘の永続的な世界平和を確実にするもの」と述べて称えられました。われわれ内閣もまた、平和に向けた大きな一歩を歓迎しています」

内閣はこの場を借りて、チベット問題を支持し続けてくださっている各国の政府、国会議員、リーダー、団体、個人の皆様に感謝を申し上げたいと思います。また60年以上にわたってチベット人の亡命生活を支え続けてくださっているインドの政府と国民の皆様に、心からの感謝を捧げたいと思います。

新型コロナウイルス感染症が中国の武漢市で初めて確認されてから、この11月でほぼ1年になります。世界は今も新型コロナウイルスの荒波に揺さぶられ続けています。私たちチベット人はいつも祈りを捧げるとき、失われたすべての命のこと、二度と会えない悲しみのうちにある方々のことを心に置いています。チベット亡命政権は、この感染症による挑戦を引き続き受けて立ち、必要に応じた支援や援助を今後も提供していくつもりです。そこで皆様には、ご自身の役割を果たすとともに、引き続き感染予防対策を徹底するよう強くお願いしたいと思います。

法王は1989年のノーベル平和賞受賞スピーチのなかで、人間と自然が調和して生きることは夢ではなく現実であることを指摘されました。「私たちはさまざまなかたちで互いに依存し合っているのであり、他の地域で起きていることを無視したまま孤立して、地域社会の中のことだけを考えて生きていくことはもはやできない」という法王のお言葉は、まさに今人類が突きつけられている挑戦にあてはまるだけでなく、より調和の取れた豊かな未来へと導く光だと思います。

最後に内閣は、偉大なるダライ・ラマ法王14世が末長く健康で長生きをされて、その願いがすべて成就するようお祈り申し上げます。世界が平和になりますように、そして自由を得て雪の国チベットで再会を果たすというチベット人の念願が現実となる日が一日も早く来ますように。

2020年12月10日
チベット亡命政権内閣


(翻訳:小池美和)