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ダライ・ラマ法王14世ノーベル平和賞受賞28周年を記念してのカシャック(内閣)の声明

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2017年12月10日

偉大なるダライ・ラマ法王14世がノーベル平和賞を受賞されて28周年を記念する慶ばしいこの日、チベット本土内外のすべてのチベット人を代表し、一切衆生の最高の救済者であり、仏教の最高指導者であり、世界平和の偉大な提唱者であり、観音菩薩の化現であり、三界の精神的統治者であり、チベットとその人々の最高指導者であり救済者であるダライ・ラマ法王に、最高の感謝と深い敬意をここに表します。また、世界中のチベット人、友人、支援者の皆様にも心よりご挨拶申し上げます。

ダライ・ラマ法王は、今日の世界をそこに暮らす人々にとってより平和な場所にするために、その生涯を捧げて活動を行ってこられました。そして現在も、慈悲心、利他主義、正義観、宗教的調和といった基本的な人間の価値はすべての人間に内在する本質的なものであるという確固たる信念のもと、世界各地を訪問され、これらを高める活動を続けられています。こうした人間に内在する価値が実際に社会を変化させられるよう、ダライ・ラマ法王は、常に一般の人々や若い人々にこれらの価値観を生起するよう説いてこられました。この世界を、戦争、飢饉、核兵器のない平和な世界にしようと、一貫して取り組まれています。

テクノロジーと物質的な欲望に支配された今日の競争社会では、現代的な知識は、人類に真の幸福をもたらすことができていません。そこで、ダライ・ラマ法王は、問題を解決するための合理的で平和的なアプローチを導入することによって、真の幸福をもたらす取り組みを行われています。このために、ダライ・ラマ法王は時間をかけられて、ナ-ランダの伝統の教えに基づいて古代インドの智慧を学ぶことの大切さを、世界中の人々に強く説かれています。心理学と弁証法が書かれたナーランダの伝統的な主要な古典テキストは、信仰の違いに関わらず、万人にとって重要な学問を教えてくれるものです。この古代の伝統は、チベット人が何千年も守ってきたものです。ダライ・ラマ法王は、この古代インドの智慧を普及させることに残りの人生を捧げられ、その源であるインドの地でこれらの古代の伝統の復活させることにご尽力されています。この目的に賛同されたインドの中央政府と州政府の取り組みは、称賛されるべきものです。

チベット本土の状況は依然厳しいものですが、ダライ・ラマ法王のリーダーシップのもと、チベット人たちは非暴力の原則から決して揺らぐことはなく、対話を通じて、そして相互に利益のある解決策である中道のアプローチをもって、チベット問題を解決するという確固たる取り組みを維持してきました。このような慈悲深い取り組みの中核となる考え方が、同様に国際紛争解決の基盤となるべきであり、それにより人権侵害と環境危機の問題が解決されるべきです。ダライ・ラマ法王は常に、普遍的責任とは人間同士だけでなく、自然環境とそこに暮らす一切衆生の保護にまで及ぶべきであると主張してこられました。人類の価値観、平和、慈悲心を絶え間なく説かれたダライ・ラマ法王は、1989年にノーベル平和賞を受賞されました。今日、ダライ・ラマ法王は、世界で最も賞賛されるリーダーの一人であり、平和の象徴です。

ダライ・ラマが受賞されたことで、ノーベル平和賞の地位はさらに強化され、チベットの状況は国際的に認識され、その支持を広げました。

今月、ダライ・ラマ法王がインドで同じくノーベル賞受賞者であるバラク・オバマ元米大統領とお会いになったことは、私たち皆にとって大きな喜びでした。お二人の会見は今回が6回目で、そのうち4回はバラク・オバマ氏が米国大統領に在任中のときでした。ダライ・ラマ法王は、信頼できる友人との再会を喜ばれ、ノーベル賞受賞者たちが70億人の全人類に対して、ひとつになることを呼び掛けるときが来たと述べられました。

今年、ノーベル平和賞を受賞された核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に、心よりお祝い申し上げます。すべての核兵器の製造と使用を完全に禁止し排除しようとするその惜しみない努力に敬意を表します。ダライ・ラマ法王は長年にわたり、核兵器のない世界を強く提唱してこられました。

今日は、世界人権デーでもあり、世界人権宣言が採択されてから69年目を迎えました。残念ながら、チベットを含む多くの国々での人権は、今も変わらず嘆かわしい状況が続いています。この機会に、国際連合や国連人権理事会をはじめ、平和と正義を愛する人々や諸国政府に、世界では依然として抑圧や迫害が現実に起こっていることを再認識していただきたいと思います。

チベット本土で抑圧の状況がこれまで以上に悪化し続け、真の人権や宗教の自由がない状態であることは、議論の余地もない事実です。国際連合人権理事会、米国外交問題評議会、フリーダムハウスなどは、年次報告書の中でそうした現実を明確に記録しています。

チベットでは、文化的権利や政府に反する意見を表明しただけで逮捕、拘留され、適切な裁判の機会は与えられません。中華人民共和国の憲法と国家地方自治法では宗教的自由、文化、言語、環境保護が定められているにもかかわらず、このような状況なのです。

中国政府の抑圧的な政策に対し、これまでに150人のチベット人が焼身抗議を行いました。この150人のうち、128人が命を落とし、22人は今も所在がわかっていません。焼身抗議は、チベットの自由と、ダライ・ラマ法王のチベットへのご帰国を求めたものでした。

今年だけで5人のチベット人が焼身抗議を行い、うち4人は20歳代、30歳代の若者、一人は63歳の僧侶です。中国政府は、チベット人の抗議内容に対処するのではなく、抑圧を強化し、最悪の場合では焼身抗議を行った者を犯罪者としてその家族も逮捕し、焼身抗議者の遺体の返還を拒否しました。こうした基本的人権を無視した行為は正義を曲解した行為であり、世界人権宣言の基本原則に反する行為です。

チベット本土の状況は悪化しているものの、チベット人の精神と回復力は、正義と自由を愛する世界中の人々や諸国政府のご支援を賜り、強化されています。今年10月、米議会上院、下院ともに、ダライ・ラマ法王とチベット問題解決を支持する決議案が全会一致で採択されました。台湾の立法院でモンゴル・チベット委員会(MTAC)を解散する決議案が全会一致で採択されたことも、歓迎すべき一歩です。同様に、チベット問題は、EU諸国、米国、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの国々からも素晴らしい支援を得ています。

先月、パターソン上院議員など5人のカナダ上院議員が、同議会においてチベット政治犯の状態について、特にチベットの5人の政治犯とパンチェン・ラマの事件について、調査を実施しました。カナダのクリスティア・フリーランド外務大臣は、中国政府に対し、国連人権高等弁務官と、国連の言論・表現の自由に関する特別報告者が、ゲンドゥン・チューキ・ニマと面会することを許可するよう要請しました。フリーランド大臣は、チベットにおける人権と法規の問題について中国との自由な議論を継続し、カナダの外交官や代表団とチベットのアクセスを改善できるよう取り組みを行うと表明しました。

国際連合では、2月から8月にかけての6か月の間に、国連特別手続が4度に渡って合同で、中国に対してチベットでの人権問題についての緊急連絡を行いました。

チベットに経済発展をもたらしてチベット人を満足させようとする中国政府の試みは失敗しました。そのため、対話の呼びかけを聞き入れ、独立ではなく真の自治を求める中道のアプローチという相互に有益な解決策の智慧と寛大さに目を向けることで、長年のチベット問題に取り組むことに、中国が関心を向けています。中国政府とダライ・ラマ法王の使節団が対話を再開できる時期に来たのです。

チベット蜂起の第58回記念日の記者会見で述べたように、中央チベット政権と世界中のチベット人は2018年を「感謝の年」にします。2018年はダライ・ラマ法王と約10万人のチベット人が亡命してから60周年を迎えます。2018年3月31日から4月4日にかけて、中央チベット政権は、インドの人々と政府に感謝の意を表明する一連の「ありがとうインド」イベントをデリーで開催する予定です。同様に、他の国に住む亡命チベット人たちもプログラムを企画し、それぞれの受入国に感謝の意を表します。チベット人たちが教育や生活の面で各受入国から惜しみないご支援をいただいていることでチベットが掲げる運動が維持されています。

この特別な機会に、チベット人への変わらぬご支援をいただいているインドの人々と政府に、深く感謝の意を表します。また同時に、世界各地のチベット人たち、チベットの運動をいつもご支持くださっている自由と正義を愛する人々、諸国政府、指導者の皆様、国会議員の皆様、国際諸組織に、深くお礼申し上げます。

最後に、一切衆生のために、特にすべてのチベット人を代表して、チベットのダライ・ラマ法王14世のご長寿をお祈りいたします。ダライ・ラマ法王が望まれるすべてが満たされますように。私たちは、チベットの非暴力的な運動が勝利することを希望し、お祈りいたします。

カシャック
2017年12月10日

(翻訳:植林秀美)