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ダライ・ラマ、将来的には中国との対話が可能だと語る

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2001年12月8日
オスロ(ロサンゼルス・タイムズ紙)

チベット自治の対話を拒絶してきた中国政府だが、次期国家主席候補は柔軟性を示す可能性も

亡命中のチベットの最高指導者、ダライ・ラマは7日金曜日、チベットの自治に関し、中国政府へ最近申し入れた直接対話の要請は拒絶されたが、次期国家主席の有力候補者となら話し合いが持てる可能性があると語った。

ノーベル平和賞受賞者が集う平和シンポジウムのためにノルウェーに3日間滞在した法王は本紙記者の取材に答え、胡錦涛国家副主席の訪欧は歓迎できるものだと述べた。副主席江沢民主席の有力後継者と見られる胡副主席は、国際的には知名度が低いものの、今回の訪問によって世界の舞台へデビューしたと見ることができる。

チベットの精神的・宗教的指導者である法王は、「中国は国際社会の仲間に入る必要があると思います。この訪欧は、中国が外の世界と協調しようとする努力の一環でしょう」と意見した。南アジアに位置するチベットは、1950年代に中国に侵略されている。これに関して、ダライ・ラマ法王は9月、北京に代表団を送り、覚書を提出、協議する旨をニューデリーの中国大使館を通じて申し入れた。中国政府がこれを拒否したため、法王は「こちらとしては、すべての手段は尽くしました」と、行き詰まり状態を打破する手立てがないことを示唆した。

しかし、将来、胡副主席と話し合う「可能性はあります」ということだ。

現在59歳になる胡副主席は来年、江沢民主席の後継者として中国共産党の最高指導者となり、その翌年に中国国家主席に就任する可能性が高いと見られている。

1988年以来約3年間、胡副主席はチベット政策の最高責任者として、中国に対する反政府運動の弾圧を指揮してきた。1989年4月には特に激しい弾圧を行った。しかし、そこでの経験が胡副主席にどう影響するかについては、法王は2つの考え方があると見ている。

「1つは、中国の指導者の中でも、胡副主席がチベットに関して最も深い知識を持っていること、少なくとも他の指導者よりは知識があることです。これはチベットにとって好ましいことです」

「その一方で、胡副主席が中国共産党でチベット自治区の責任者だったからこそ、あれほど厳しい弾圧があったのだという意見もあります。だから、胡副主席のほうが御し難いという声も聞きます」

ただ、どちらの観点が正しいのか、現時点では分からないという。チベット人による反政府運動や中国政府による弾圧については、胡副主席が「個人的な考えに基づいて対処したのではないと思っています。今後どうなるかを見守るつもりです」

10月の欧州議会での法王の演説内容をまとめた原稿が、シンポジウムを取材する記者に側近の手で配られた。

法王は演説の中で、「チベットはいまだに占領下にあり、圧制に虐げられ、苦しみが跡を残しています。私が常に主張してきたのは、最終的には、チベットの人々が自ら国の将来を決めることができるようにすべきだということです」と述べた。

チベット人が「子供たちの教育・宗教・文化・破壊されつつある自然の保護など自治区内の問題、そして自治区内の経済に関して責任を持ち」、中国は「外交および防衛任務の遂行」を統制する、という協定案もこの演説で強調された。この協定案が法王により初めて表明されたのは1988年である。

7日金曜日、チベットが「占領下にある国」だとしながら自治を提案するのは矛盾ではないかという質問に対し、法王は「歴史を変えることはできません。・・・政治的には、将来も独立を望んでいるわけではありません。ですから、矛盾はどこにもないと思います」と答えた。

法王によると、チベットの独立は望まない、適切な扱いさえ受けられれば、引き続き中国の統治下におかれても良いというのがチベットの人々の思いだ、中国政府はこの事実をもっと信用するべきである、ということだ。

「中国人はチベット人を『弟や妹』だと見なしています。もしわれわれチベット人が本当に弟(や)妹のように扱ってもらえ、自治権を与えてもらえるなら、大多数のチベット人は喜ぶ(はずです)。お分かりでしょう?」と法王は語った。