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ダライ・ラマ 無関心という巨壁にぶつかる

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2001年1月31日
オーストラリアン紙

2008年開催のオリンピック誘致を有利にするため、中国共産党が(ダライ・ラマとの)コンタクトを再開したがっているという噂があった。しかし、北京との協議の場を確保しようというダライ・ラマの最近の努力は、無関心という壁に直面した。直接的な対話を再び確立するために、チベット亡命政権から代表団を派遣するという提案に対し、中国は何ら返答をしてこないと、チベットの精神的指導者はインドの記者団に語った。ダライ・ラマの代理として、その申し出を行ったのは彼の兄だった。彼は去年の十月、密かに北京を訪れている。

「中国政府は、兄が単独で再訪する分には問題ないと言っているが、代表団については依然として返答がない」

「これは、チベット社会全体に係わる問題なのだから、チベットの組織から数人を派遣するのが、より相応しいだろう」

北京が亡命中の宗教的指導者との話し合いに二の足を踏んでいるのは明白だが、結局、国際的外圧に屈し、問題を解決することになるだろうとダライ・ラマはかなり自信を持っている。国際世論がチベット問題を平和に解決し、チベットの自治権が回復するだろうと彼は指摘した。

「遅かれ早かれ、中国はチベット問題に関する国際的な気運を理解しなければならない」週末インドで開かれたヒンズー教のクンブ・メーラ祭を訪れたダライ・ラマはそう語った。

「この問題と取り組まなければならないと中国政府が自覚した日こそ、話し合いのためのドアが開かれるだろう」

「それまでの間、伝統的なチベットの生活様式を守りつづける努力をしなければならない」

「私達は、チベット文化、チベットの環境、平和、安定をその日が来るまで守りつづけなければならない。チベット文化はまだ生きており、独立したチベットを目にする望みはまだまだくすぶりつづけている」

中国政府は、1998年にダライ・ラマとの接触を断ち切ると、中傷活動を開始し、このチベット指導者のことを、中国に混乱を巻き起こそうとたくらむ「分離主義者」だの、食人者だのと罵倒の限りをつくしてきた。チベット人によると、北京はここ数年でチベットへの抑圧を強化し、宗教的な礼拝と教育を制限し、チベット文化を観光の目玉に変えようとしている。何万人ものチベット人は、逃亡することで異議を申し立て、海外亡命を選んだ。ほとんどが二カ月かけて危険なヒマラヤを越え、ネパールからインドへと逃れた。彼らの最終目的地、亡命政府の本拠地であるダラムサラは現在、増えつづける人口に懸命に対処している。

中国共産党が圧力をかけて、2008年のオリンピックを北京で開催するという法案を通過させ、(チベット問題に)希望の光が現れたことは確かである。中国政府は、キリスト教信者、チベット仏教信者、イスラム教徒のウイグル族、不法とされている法輪功運動の信望者を含む人々への人権侵害に対する国際的非難をそらそうと必死であり、宿敵ダライ・ラマとチベット問題を話し合うことも辞さないと考えられている。北京の外交的態度は明らかに軟化したが、聖職者だけではなく、ダライ・ラマへの忠誠を表明した一般のチベット人も投獄、虐待、処刑されていると人権団体から定期的な報告があることには変わりはない。

「チベット亡命政権の指導力をしっかりと安定させるため、ダラムサラの国会は直ちに、私と緊密な働きができる首相を選ぶことになるだろう」とダライ・ラマは言う。

「ダライ・ラマが単に高位にあるラマが受け継ぐことになれば、他派が黙っていないだろう。だから、最良かつ最も安全な方法は選挙によるやり方だ」

65歳のチベット仏教指導者はそう語った。