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カルマパの大胆逃亡劇

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2001年4月28日
ダラムサラ(ザ・ガーディアン)

15歳の仏教指導者カルマパ
ネパール到着から16ヵ月、ついに沈黙を破り、中国からジープで脱出した夜について語る

チベット仏教の最高位指導者の一人である15歳の少年カルマパは、4月27日、中国からヒマラヤを越えて脱出した劇的な夜について初めて語り、国外旅行が許可されなかったため、僧院の屋根から待機中のジープへ飛び乗ったことを明らかにした。

カルマパの談話によると、カルマパの何人かの師が亡命生活を送るインドへの旅行を許可するよう申請したが、中国当局は、この要求を「何度も硬く却下した」ということである。数年間の熟考の後、カルマパは脱出を決意した。彼は、暗闇に隠れ、数人の従者を引き連れて僧院を車で出発し、3日後、ネパール国境をひっそりと越えたのだった。

16ヵ月前のこの脱出劇は、亡命中のダライ・ラマから支持を取り付けようとしてカルマパを承認してきた中国政府にとって、非常に不名誉なことであった。中国当局は、カルマパの亡命が判明した後、この十代の少年がインドを訪問した理由は、彼の僧院が所有する儀式用の黒い帽子と楽器を取りに行っただけであると説明し、すぐに戻ることをほのめかした。

カルマパは、そのような主張を根拠がないものとして斥け、次のように語った。

「どうして帽子をインドから持ち帰りたいなどと思うだろうか。そんなことをしても、帽子が江沢民の頭上に載せられるだけではないか」
「中国がチベット統治を強化しようとして自分を手なづけようとした」 「チベット自治区の住民をダライ・ラマ法王と訣別させようとして自分を利用する計画があったのでは、という疑いが生じてきた」と述べた。カルマパは、中国当局から「特別待遇」を受け、中国の指導者との会談のため、北京にまで連れて行かれたこともあった。

カルマパは、12世紀に登場したチベット仏教の中でも強い影響力と豊かな財源を持つカギュ派の最高位に属する。ダライ・ラマ、および中国当局は、カルマパが7歳のとき、彼をラマ僧の転生であることをそれぞれ独自の立場で認めている。ウゲン・ティンレー・ドルジェ(カルマパの本名)は、今や、チベット仏教で3番目に重要な精神的指導者とされている。カルマパより上位の存在になり得るのは、ダライ・ラマ法王とパンチェン・ラマだけである。

パンチェン・ラマは、6歳のときに中国当局に逮捕されて以来、その姿は公にされていない。中国政府は、自分たちが担ぎ上げたパンチェン・ラマをその代わりとした。

中国を脱出して以来、カルマパは、ダライ・ラマがその居を構えるインド北部の丘陵地帯ダラムサラ近郊にあるギュトー寺に閉じこもっている。カルマパは、インド以外の場所へも訪れたい、と述べた。また、「法王猊下と一緒であればチベットへ戻る」と断言し、ダライ・ラマと一緒でなければ、チベットに戻る予定もないことを明らかにした。

カルマパはまた、ラサから約48キロ離れたツルプ寺を去る決意をしたのは、まったく自分の意志によるものである、と語った。

1999年12月28日午後10時半、彼は自室から階下へゆっくりと降り、仏堂近くの屋根へ飛び移った。その後、もう一人のラマ僧と運転手と共に、ジープが待機している地上へ飛び降りたのだった。

カルマパは、次のように語る。

「夜も昼もジープは走った。停車したのは、運転手が交代するときだけであった。検問所や二つの軍のキャンプ地を避けるため、丘や谷を越えて裏道を抜けていった。」 カルマパの25歳になる姉を含む一行は、誰にも発見されることなくネパールのムスタンに到着した。その後、極寒の中、危険にさらされながら、道なき道を歩んでいったのだった。

その後、馬、ヘリコプター、列車、そしてレンタカーを乗り継いで、8日後、カルマパはようやくダラムサラにたどり着くと、まっさきにダライ・ラマのもとを訪れた。ダライ・ラマ自身、1959年の中国のチベット侵攻後、雪に閉ざされたヒマラヤを越えて同じように脱出を図っているが、カルマパは、「法王は偉大な愛情と慈悲心をもって迎えてくれた。私の歓びは限りないものだった。」とその接見の様子を語った。

4月27日、ギュトー寺の大仏像前の玉座に着いたカルマパは、中国と結託してチベットを脱出したという噂を否定した。彼は、自分が属する宗派内部で対立する少なくとも一人の摂政から、中国の言いなりになっているとの批判を受けてきた。彼はまた、1981年に亡くなった第16世カルマパの真の転生であるとの立場をとる、もう一人のカルマパとも対立する立場にある。カルマパは言う。 「カルマパであるかどうかは、人気投票や人々の議論によって決められるものではない。先代カルマパ自身の予言により決定されるのだ」

カルマパは、仏教の勉学と実践に専念する意向を示している。