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カルマパ17世「チベット文化は絶滅の危機」と 初の公式発言報道

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2000年2月19日
毎日新聞 

カルマパ17世(AP Photo / Lynsey Addario)
カルマパ17世(AP Photo / Lynsey Addario)

【イスラマバード支局19日】チベット亡命政権があるインド北部ダラムサラから19日、AFP通信が伝えたところでは、同地に滞在中のチベット仏教の活仏カルマパ17世は、前日に続いてダライ・ラマ14世の即位60周年祝賀式典に出席し、「チベット文化は絶滅の危機に直面している」などと訴えた。中国出国後、カルマパ17世の公式な発言が伝えられたのは初めて。

カルマパ17世は集まった僧侶らを前に、「今日、世界中に争いや苦難があり、それはチベットも同様だ。かつてチベット文化は栄えていたが、今や絶滅の危機に直面している」と述べるとともに、ダライ・ラマやインド側に感謝の意を表した。

またカルマパ17世の自作の詩が披露され、詩の中でカルマパ17世は、「雪と美しい調べの国」チベットが「赤い中国によって破壊された」と、その悲しみをつづっている。詩はチベット出国の途中で作られたという。

◆ カルマパ17世のスピーチ(ダライ・ラマ法王即位60周年記念式典より) ◆

今日、「雪の国」チベットに転生されたダライ・ラマ法王がラサのポタラ宮で輝かしい玉座に就かれてから60年にあたるこのめでたき日に、私は、法王猊下ならびに、卓越した無宗派の指導者の方々、様々な宗派からお集まりいただいた仏教徒の皆様方、「雪の国」チベットにいる全ての聖職者と民衆、私たちの政府(チベット亡命政権)の閣僚及び公僕の方々、そして一般の皆様方に、ご挨拶を申し上げます。

概して、世界の様々な地域で紛争が多発しています。特定の地域や場所における、個人の自由を享受する権利の剥奪、無知と無理解が原因で、そのような地域や国々で対立が生じるのです。私たちの祖国、「雪の国」チベットを例にすると、かつてこの国では、敬虔な仏教信仰と知的で文学的なチベット文化があらゆる面で花開いていました。しかし、この20年から30年にわたって多くのものを失い、チベットの宗教的伝統と文化は絶滅の危機に瀕しています。

故に、私は、ダライ・ラマ法王の限りない慈しみの庇護、無宗派の指導者の方々、並びに多種多様な仏教的伝統を守る仏教徒の方々の比類無き利他主義、チベット人の祈りと共有のカルマがもたらす力、これらのもとでチベットの全ての民が平和と幸福を享受する日が来ることを常に祈っているのです。

一般的に言えば、私は普通のチベット難民にすぎません。しかし、インド政府とインド国民の皆様方、ダライ・ラマ法王、チベット亡命政権のご厚意、また無宗派の指導者の方々と多種多様な仏教的伝統に従う仏教徒すべての方々のご慈悲により、この阿羅漢の国インドにおいて、私はある意味で有名な難民となりました。また、世界中に散らばっているチベットの人々と非常に多くのジャーナリストの方々が私の件に関心を寄せることになりました。私は、ここで皆様に心から感謝の念を捧げ、お礼の言葉を述べたいと思います。

チベット舞台芸術研究所のご懇意により、今日こちらで観劇を楽しむよう特別に招待されました。このような機会を与えられ、とても光栄に思います。チベット舞台芸術研究所の令名と名声がいっそう、世界中に行き渡りますように。

この機会に、世界に平和と幸福の黎明が訪れることをお祈りしたいと思います。そして、比類なきチベットの指導者、ダライ・ラマ法王のご長寿をお祈り申し上げます。また、無宗派の指導者の方々、並びに多種多様な仏教伝統を守る仏教徒の皆様方のご長寿もお祈りさせていただきます。そして平和で非暴力の世界に暮らせますよう、チベットの人々のご多幸をお祈り申し上げます。

また、ジャーナリストの皆様方がカメラを手に、地球上のあらゆる場所へ行かれ、取材ができますように。

最後になりますが、この吉兆の日に皆様方が積極的に祝祭を楽しまれ、分かち合い、この幸運と繁栄の日を祝われますようお祈りいたします。