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「世銀行スタッフが1億6千万ドルの融資において 内部規則を破った」 監視委員会発言

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2000年5月4日
ウォール・ストリート・ジャーナル

世界銀行の内部監視委員会の報告によると、同行は、貧困対策プロジェクトの扱いにひどい失敗をし、5万8000人の漢族農民を、今や大きな論争の種となっている農業地域(伝統的にチベット族が居住)に移住させることになってしまったという。

いまだ非公開の調査結果に精通する人々によると、監視委員会は、世銀スタッフによる中国融資プロジェクトの準備に際し、自身のガイドラインに違反したと結論づけたとのことである。報告は特に1億6000万ドルの融資が青海省の環境と同省に居住するチベット族への影響への配慮の欠如を批判している。

「これはのっぴきならない報告だと理解した。我々は世銀が同プロジェクトを中止することを求める」とワシントンに本部を置く人権団体である「インターナショナル・キャンペーン・フォア・チベット」代表のジョン・アッカリーはこう発言。

同団体は現地のチベット族のために告訴を行い、それが監査委員会の再審査の発火点となっていたものである。同代表自身は報告を見てはいないと述べた。世銀幹部は監査委員会の調査結果に回答するまでは報告についての言及を避けるとした。調査結果への回答は世銀の規則の下では6週間を要することになっている。

その間、世銀幹部は、170ページ以上になる文書を限られた世銀職員にのみ配布し、報告を機密にすることに最大限の注意を払うとのことだ。中国側の世銀理事であるジュ・シーアンはコメントを求めたが、回答は得られなかった。

クリントン政権は今回の融資に強く反対しており、サマーズ財務長官が先月、「181か国に渡る債権国の信頼を崩壊し懐疑を巻き起こすことになる種類の世銀プロジェクトである」と指摘した。

クリントン政権は、この報告書を使って、このプロジェクトを止めさせ、世銀にさらなる改革を促すことができるだろう。また、クリントン政権が中国に対して強く確固とした態度をとっていることも議会にうちだせるわけだ。

しかし、同時にホワイトハウスは議会に中国との貿易の優遇を拡大するよう持ちかけている。対中国への優遇拡大についての投票は小差である可能性が高く、行政官の中には可決より中国の人権問題及び軍事政策を批判する絶好のツールを失うことになると心配する者もいる。

中国は1951年に軍事的手段でチベットを併合し、この行動が外国の批判を集めている。ジェームズ・D・ウォルヘンソン世界銀行総裁は対中国融資を擁護し、昨年の6月に、案件を、賛成を求めて理事会に提出していた。しかし、米国とドイツの反対に直面、同総裁は監視委員会が作業を終了するまで資金の扱いを保留することになった。

「我々は現時点で報告にコメントする準備はできていないが、案件が最初に理事会にかけられた時、重大な関心を持った。我々はこの特定プロジェクトのインプリケーションにも関心を持ち続けるし、世銀の融資政策が全ての国に首尾一貫して適用されるため、当該ケースが世銀の内部機構について示唆する広範なインプリケーションに対しても同様だ」と世銀上級管理職が言う。

世銀は最近、全方面から非難を受けている。先月の春の総会の際には、1万人程度の抗議デモがワシントンの街路を埋め尽くし、世銀と国際通貨基金による援助政策により世界の貧困を悪化させたと告発した。議会により委任された委員会は世銀の廃止を早期化するよう勧告している。世銀を根強く支持してきたサマーズ長官でさえ世銀改革案を出している。