チベットの人権問題

④言語と文化の権利

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言語の権利提唱により逮捕・拘束:タシ・ワンチュク氏


  • 2016年より行方不明
  • 2016年3月に逮捕が報じられる
  • 2018年1月に非公開裁判が開始
  • 「分離主義の扇動」罪の判決
  • 2018年5月に懲役5年の判決が下る

チベット語保護の権利提唱者であるタシ・ワンチュク氏が2016年1月に中国当局によって逮捕・拘束されたのは、ニューヨークタイムズのドキュメンタリーでチベット語への懸念と中国当局への取り組み関して取材を受けた数か月後のことだった。2015年11月に発表されたドキュメンタリーで、主にチベット語と文化の保護について語っていた。

ワンチュク氏は2016年1月から2ヶ月以上も行方不明だった。国際メディアで大きく注目を集めた後、2016年3月24日に、ようやく家族にワンチュク氏の逮捕が知らされた。

ワンチュク氏は2015年5月、中国の青海省にあたるチベット東部カムの、地元キグドでチベット語教育への支援を受けられなかったことに対し正式な訴えをおこすために北京に向かった。

キグドで消えゆくチベット語教育の懸念を、ワンチュク氏は明確に表明していた。中国政府はバイリンガル教育を推進するという名目で、チベット人学校での指導に北京語の使用を推進した。ワンチュク氏はニューヨークタイムズのインタビューのなかで、チベット人の「独立」を訴えるものではなく、中国憲法や地方自治区に関する法に基づき、チベット語と文化の保護、またその権利と自由を訴えるのだと語っている。しかしワンチュク氏は「分離主義を扇動した」とされ、非公開の裁判が開かれ、2018年5月に懲役5年の判決を受けた。

中国の憲法と地域民族自治に関する法律は、少数民族は独自の言葉を使用し発展させる権利を有すると定められている。中国の義務教育を含むその他の規定でも、少数民族の独自言語の権利が定められている。これらの規則の存在にもかかわらず、ワンチュク氏はチベット語衰退への懸念を表明し、法律が履行されないことに対して中国当局を訴えたために、政治犯として拘束され実刑を受けた。

世界人権デーの2016年12月10日、在中国アメリカ大使マックス・ボーカス氏は、声明を発表し、中国当局に拘束される多数の人々について述べ、ワンチュク氏についても「チベット語教育の平和的提唱を行って投獄された」と言及し、速やかな釈放を求めた。

PENアメリカは、中国による外国報道の検閲について、タシ・ワンチュク氏の事例を挙げている。

2018年8月23日、タシ・ワンチュク氏の弁護士リアン・シャオジュン氏は自身のツイートのなかで、ワンチュク氏の判決に対する上訴が棄却されたと述べた。ワンチュク氏と弁護士の提出した反論は却下され、5年間の服役の判決は青海高等裁判所によって支持された。

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