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『大乗荘厳経論』の法話会 2日目

2021年11月5日
インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ロシアとロシア連邦モンゴル人居住地域の仏教徒に向けたオンライン法話会の2日目の朝、ダライ・ラマ法王の姿が画面に映し出されるやいなや、カルムイク共和国の仏陀釈迦牟尼僧院の金堂から、帰依者たちによるカルムイク語の『般若心経』の誦経が捧げられた。続いてサンクト・ペテルブルクのクンツェ・チョネイ僧院(Kuntsechonei Datsan)から、ブダ・バドマエフ僧院長を経頭として、ロシア語による『般若心経』が唱えられた。

法王公邸からインターネットを介して行われた法話会の2日目、クンツェ・チョネイ僧院のメンバーが唱えるロシア語の『般若心経』を傾聴されるダライ・ラマ法王。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

法王公邸からインターネットを介して行われた法話会の2日目、クンツェ・チョネイ僧院のメンバーが唱えるロシア語の『般若心経』を傾聴されるダライ・ラマ法王。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

法王ははじめに、本日の法話会について次のように述べられた。「私は、今回リクエストがあった『大乗荘厳経論』の伝授を受けていますが、この長さでは最後まで読むことはできないでしょう。そこで、仏教概論の講義をしてからもう一度『一切ヨーガの菩提心生起』を復習し、その後で皆さんからの質問にお答えしたいと思います」

釈尊は成道された後の最初の説法で、“四つの聖なる真理(四聖諦)” を説かれました。すなわち、‟苦しみが存在するという真理(苦諦くたい)”、‟苦しみには原因があるという真理(集諦じったい)”、‟苦しみの原因が止滅した境地が存在するという真理(滅諦めったい)”、‟苦しみの止滅に至る実践道が存在するという真理(道諦どうたい)”です。釈尊はこの四つの真理を説かれた後に、苦しみを知るべきであると助言されましたが、それは苦痛に基づく苦しみ(苦苦)だけでなく、変化に基づく苦しみ(壊苦えく)と遍在的な苦しみ(行苦ぎょうく)のことも含めて述べられたのです。釈尊は、苦しみを完全に知ったなら、その原因を知る必要があることを明らかにされました。問題は、そのようにしたなら苦しみの原因を克服できるかでしたが、答えは ‟できる” ということでした」

「若い頃は煩悩でいっぱいかもしれませんが、煩悩がいかに破壊的であるかを知れば、対策を講じることができます。それには三学の実践修行が含まれ、その第一の修行道が戒律の実践です。執着・怒り・無知という三毒に気づいたなら、そしてそれらを変えることができるか自問したなら、愛のような善き要因によって三毒を対治できることがわかると思います。悪しき感情は、長年の慣れから無意識に生じますが、それを変容させることもまた可能なのです。論理を用いて分析・精査するなら、悪しき感情が正当なものだとみなすことはできません」

「苦しみの因は悪しき行為と煩悩ですが、善行を積むことによってそれらを減らしたり滅したりすることができます。こうした理由から、苦しみの断滅を実現できるのです」

「密教には、死に至る過程における真白に現れる心(顕明けんみょう)・真赤に輝く心(増輝ぞうき)・真黒に近づく心(近得きんとく)の三つのビジョンの後に現れる死の光明の心についての解説があります。光明の心は、睡眠中にも現れることがあります。そのようなときには、精神的苦痛がもたらす欠点を知ることができます。そのような心は間違った状態にありますが、偶発的で一時的でもあります。このことを理解したうえで、光明の心の性質を理解したなら、私たちは素晴らしい資質を培う可能性を得たことになります」

「苦しみの断滅が可能なのは、心の汚れは一時的なものだからです。無知を克服できることがわかると、釈尊が ‟苦しみの止滅の境地に至らなければならない” とおっしゃった意味がわかると思います」

法王は、すべての宗教的伝統が愛と慈悲の大切さを教えていることにふれて、次のように述べられた。「仏教とは、仏陀・仏法・僧伽の三宝にただ祈るのではなく、心をよりよく変容させていくためのものです。苦しみの原因を滅することによって苦しみを断滅する方法を教えているのが仏教なのです」

法話会2日目、法王公邸からインターネットを介して聴衆に語りかけられるダライ・ラマ法王。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

法話会2日目、法王公邸からインターネットを介して聴衆に語りかけられるダライ・ラマ法王。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「ナーガールジュナ(龍樹)の『根本中論頌』のように、インド人の導師が著したテキストには、縁起について詳しく述べられています。すべての事物は縁起(相互依存)によって生じていることを理解すると、実在論か虚無論のいずれかに執着するのを避けられるだけでなく、事物がその現れのようには存在していないことも明らかになります。事物の中やそれ自体に実体を求めても、何も見つけることはできません。事物はそれ自体の力で独立して存在していないからです。実際、事物は他の要素に依存して存在しているのであり、ナーガールジュナの弟子のアーリヤデーヴァ(聖提婆)は、次のように書いています。

からだにはからだの感覚器官が行きわたっているように
無知はすべて〔の煩悩〕の源に存在している
ゆえに、すべての煩悩も
無知を克服することで克服できる(『四百論』第6章第135偈)

「つまり、縁起を理解していれば、無知は生じないということです」

「釈尊は四聖諦の第三の観点から、“苦しみについて知らなければならないが、そこには知るべきことは何もない(苦諦)。苦しみの原因を断滅しなければならないが、そこには断滅されるべきものは何もない(集諦)” と言われました。私たちの一人一人がからだ・言葉・心を所有しているかのように見えますが、そのからだ・言葉・心が属する “私” の実体を指し示そうとしてもそれはどこにも見つかりません」

「空とは、私たちがそれについて考え、瞑想し、経験を育むことのできるものです。それゆえに、私たちは実体への捉われを克服することができるのです。仏教は、論理と根拠に基づいています。私たちは、ナーガールジュナの『根本中論頌』とチャンドラキールティの『入中論』などの著作を拠りどころにすることによって空の確信を深め、『般若心経』の中に言及されている五つの修行道の階梯と菩薩の十地を悟りに向けてのぼっていくことができるのです」

「五道(悟りに至る五つの修行道)を学び、慣れ親しんでいくと、自身の内にこれを統合できるようになります。釈尊はこれを要約して、苦しみが存在することを知り、苦しみの原因を滅し、苦しみの止滅に至る修行道を実践し、苦しみの止滅の境地に至らなければならないと助言されたのです」

「仏陀の教えを聴聞し、熟考し、瞑想をして心に馴染ませてください。この聞・思・修の実践を私は子どもの頃から行なってきましたが、結果として、よき変容があったことがわかります。ですから、仏法における私の兄弟姉妹である皆さんには、私と同じ道を歩むことを自信をもってお勧めしたいと思います」

法話会2日目、法王公邸からインターネットを介して説法をされるダライ・ラマ法王の後ろに捧げられた供物。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

法話会2日目、法王公邸からインターネットを介して説法をされるダライ・ラマ法王の後ろに捧げられた供物。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

ロシアのさまざまな地域の参加者の質問に答えるなかで、法王は、仏教心理学(Tib. lo rig)と証因論理学(Tib. ta rig)に関する基本的なテキストを学術的見地から研究してはどうかと提案された。

また帰依に関して、「仏陀・仏法・僧伽に帰依します」と私たちは言葉にするが、仏陀・仏法・僧伽とは何なのか自問する必要があることを指摘された。

ひとつの生のうちに仏陀の境地に至ることについて質問者が訊ねると、法王は、波羅蜜乗にはこのようなことは説かれていないことを説明された。「この修行は無上ヨーガタントラの一部であり、実践できるのはきわめて特殊な修行者に限られています。ミラレパは大変な苦難を経たのちに更なる努力をして徐々に悟りに近づき、一生のうちに悟りを得られたのです」

続いて、ゲシェ・ランリタンパの『心を訓練する八つの詩頌』の第二偈の、自分を誰よりも劣った者とみなして他者を慈しむ密教の修行の考え方について質問者が訊ねると、法王は、こうした密教の修行は、すべてをくうに溶け込ませていくことから始まると説明された。「からだもその現れも空の中に溶け込み、消えてなくなります。そして、より微細なレベルに溶け込んで行く段階において、三つの現れ、すなわち真白に現れる心(顕明けんみょう)、真赤に輝く心(増輝ぞうき)、真黒に近づく心(近得きんとく)が順に消滅したあと、死の光明の心が立ち現れます。究極的には、本尊ヨーガにおいて実体のない本尊に対して実体のないプライドを培い、本尊を生起させる際に土台となるのが、この光明の心です」

次の質問者が、心の散乱により心が仏法から離れてしまうのを防ぐにはどのようにすべきか訊ねると、法王は、波羅提木叉はらだいもくしゃ(プラーティモークシャ)の戒律を遵守することをあげられた。「苦行生活を修行に取り入れることもありますが、マルパ翻訳官のように家庭を捨てなかった修行者もいます。大切なのは、心を訓練して事物に執らわれないようになることなのです」

亡くなった人たちのために何ができるかという質問に、法王は、遺灰を粘土に混ぜて ‟ツァツァ” と呼ばれる小さな像を作る習慣があるが、必ずしも必要ではないと述べられた。そして、「これは私が母を亡くしたときにしたことですが、オーム・マニ・ペーメ・フームを60万回唱えるのもよいと思います」と述べられた。

上師に帰依するだけでなく、内なる師を育むには、修行者はいかにすべきか、という質問に対し、法王は相承の系譜の導師たちを観想し、菩提心について考え、それに関連させて愛と慈悲を実践することを勧められた。「私は、甚深なる智慧の見解の系譜の導師たちに関連させて、空と縁起について考えるようにしています。シャーンティデーヴァ(寂天)によってもたらされた偉大な系譜については、広大なる修行の道を熟考し、平等心と、自己と他者の交換の修行を中心にしています。こうした導師たちを思うことで、私たちは菩提心と空を想起できます。シャーンティデーヴァによる次の偈頌も、同じ目的で書かれました」

ゆえに、落胆や疲れをすべて取り除く
菩提心という馬に乗って
幸せ〔な生〕から幸せ〔な生〕へと進んでいくことを知ったなら
いったい誰が怠惰な心を起こしたりするだろうか(第7章30偈)

自分の幸せと他者の苦しみを
完全に入れ替えなければ
仏陀となることはできないし
輪廻においても幸せを得ることはない(第8章131偈)

超宗派主義について意見を求められると、法王は次のように述べられた。「すべての宗教的伝統という観点から訊ねているのなら、私は、キリスト教徒の兄弟姉妹が世界中で他者に救いの手を差し延べてきたことは常に素晴らしいと思っています。あるいは一般的な仏教、パーリ語とサンスクリット語の伝統、チベット仏教のさまざまな宗派のことでしょうか?後者について述べるなら、祈願文の読誦に違いはあるかもしれませんが、すべて同じ教えの心髄が貫かれています。どの宗派もすべて菩提心を土台としているからです」

法話会2日目、法王公邸からインターネットを介して行われた法話会で聴衆の質問に答えられるダライ・ラマ法王。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

法話会2日目、法王公邸からインターネットを介して行われた法話会で聴衆の質問に答えられるダライ・ラマ法王。2021年11月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンペル / 法王庁)

「釈尊は、悟りに至るには煩悩障と所知障の両方を克服する必要があることを説かれました。これはただ祈願をするだけでは達成できず、修行道を実践して自分の心に教えを馴染ませていく必要があります」

新型コロナウイルスの世界的流行による外出制限から、生徒たちがクラスメートや教師に会えないでいることにふれて、法王は、次のように指摘された。
「私の師はもうほとんど亡くなりましたが、最近は、『入中論』や『入中論自註』などの著作を師として毎日読んでいます。ロシアの仏教徒の皆さんも、ご自身の仏教の伝統を学び、復活させて保持していくとよいと思います」

最後に、菩提心を育むことと環境を保護することをどのように結びつけることができるか意見を求められると、法王は「私たちは通常、一切有情を助けると言いますが、実際に可能な話をするならば、私たちが本当に助けることができるのはこの地球で暮らしている70億の人間だけです。私は、70億の人類はひとつの人間家族であると考えており、気候変動が私たち全員に影響を及ぼしている事実や、環境を保護することが極めて重要であることにも賛同しています」と述べられた。

法話会の終わりに、法王は『一切ヨーガの菩提心生起』の瞑想へと参加者を導かれ、「空を理解する智慧が白い五鈷杵ごこしょとなって現れ、胸の位置に白い月輪となって現れた菩提心の上に立っていると観想してください」と述べられた。

テロ・トゥルク・リンポチェは閉会の辞の中で、新型コロナウイルスは今なお世界中の人々に影響を及ぼしており、ロシアにおいても悪化していることを法王に伝えて、次のように述べた。
「この1年半の間に、新型コロナウイルスにより多くの友人が命を落としました。ロシアの仏教徒たちは緑ターラー菩薩の真言を唱え続けていますが、命を落とした人々のために、その遺族のために、そして感染して闘病中の人々のために法王様にも祈っていただけないでしょうか。この危機的状況により、ロシアのいたるところで多くの人々が感情的にも精神的にも経済的にも苦しんでいるからです」

テロ・トゥルク・リンポチェは、ロシアの仏教徒たちはできる限りの努力をして『大乗荘厳経論』を読む決意であることを法王に伝えるとともに、リンポチェの話に耳を傾けられた法王のやさしさに感謝を表した。また法話会の後に復習会をして下さったゲシェ・ラクドル師にも感謝を述べた。そして、13年間にわたって法話会の実現に協力してきた人々に感謝の意を伝えた。

法王は、祈願文の王者といわれる『普賢菩薩行願讃』の廻向の偈を唱えて法話会を締めくくられた。

勇者文殊が〔あるがままのありようを〕知る通りに
かの普賢も〔それを〕知っている
私は彼らの教えを受けたその通りに
この善根をすべて廻向いたします

三世に属する一切の勝利者の方々により
最高の廻向と称賛されたゆえ
私はこの善根をすべて
至高の普賢行のために廻向いたします

そして『真実の言葉』から次の偈を唱えられた。

要約すれば、守護者観世音菩薩が
勝利者(仏陀)とその息子たち(菩薩たち)の御前で
雪国(チベット)を完全に守ると誓われた広大な祈願の善き結果が
今ここで速やかに現われるよう祈願いたします

現われと空という深遠なる縁起のありようと
三宝の慈悲の力と、真実の言葉の力が
欺くことなき因果の法の真実の力によって
私の真実の祈願を障りなく速やかに成就してくれますように

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