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警察における共感と思いやり

2021年2月17日
インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝ダライ・ラマ法王は、インターネットを介した対話の始めに、目の前のモニターに映し出された人々の顔を確認し、手を振って「おはようございます、ナマステ(ヒンディー語でこんにちはの意味)」と挨拶された。

法王公邸から行われたインド警察財団との対話の冒頭で、モニターに映し出された参加者たちに挨拶をされるダライ・ラマ法王。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

法王公邸から行われたインド警察財団との対話の冒頭で、モニターに映し出された参加者たちに挨拶をされるダライ・ラマ法王。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

インド警察財団(IPF:Indian Police Foundation)の会長であるプラカーシュ・シン氏は、IPFのメンバーとインド警察全体を代表して法王を歓迎した。シン氏は、インド警察は元々、この国を支配していた帝国を支援するためにイギリスによって組織されたと説明した。最近では、警察は独立したインドの民主主義の価値観を反映して、人道的で思いやりがあり、公平・公正でなければならないとも述べた。シン氏は、インド警察をこのような路線に変革していくことに関心があると宣言し、「愛と思いやりは贅沢なことではなく、私たちが生き延びていくために必要なものだ」という法王の助言を引用した。

続いてシン氏は、聴衆に法王を紹介し、法王に講演をお願いした。

これを受けて、法王は次のように返答された。
「ありがとうございます。今日は、インド警察の方々と意見交換ができることを大変嬉しく思っています。私は、これまでの人生のほとんどを警備の下に過ごしてきました。チベット本土における9年間は、中国警察によるものでした。1959年にインドに亡命してからは、インド警察が警備を担当してくれています。どちらも、私を守るために働いてくれましたが、中国警察には警備の他に、私を監視するという第二の義務がありました」

「中国は地球上で最も人口の多い国で、古代からの文化を持ち、伝統的に仏教国でしたが、そこには自由がなく、全体主義体制が取られていました。一方で、インドには真の自由と民主主義があります。世界の主要な宗教は、すべてこのインドで繁栄がもたらされています。私がインドのイスラム教徒に会う時、そこにはシーア派とスンニ派の間に争いがないことがわかります。何千年もの間、インドは “アヒンサー(非暴力)” と “カルーナ(慈悲)” の実践を守ってきました。この二つは国が従う根本原則であり、民主主義はこのような思想と一致しています」

「宗教的伝統、地域社会、異なる言語や文字の書き方などが全て認められ、そこに属する人々はインドの一員であることを喜んでいます。これは全世界への模範となるものです。異なる言語や文化を持つ人々が互いを尊重しつつ共に生きることができており、インド警察は帰属意識の根底にある “アヒンサー” と “カルーナ” を守る役割をはたしています」

「私は、インド警察に満足しています。彼らを恐れてはいません。毎朝、私の部屋から外に出ると、昼夜を問わず私を守ってくれる警察官たちがいます。私は彼らに挨拶をして、よく冗談を言い合ったりしています」

「警察における共感と思いやり」の講演中に、モニターに映し出された聴衆に向かって語りかけられる法王。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

「警察における共感と思いやり」の講演中に、モニターに映し出された聴衆に向かって語りかけられる法王。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

「私が皆さんに申し上げたいのは、今日の若い世代のインド人たちは、全世界が必要としている思想である “アヒンサー” と “カルーナ”にもっと注意を払うべきだということです。これが皆さんに伝えたいことです。イギリスは、近代教育と技術開発を導入しました。それらは有益なものではありますが、あなた方インド人は、何千年もの間培ってきたあなた方独自の伝統もしっかり守っていくべきです」

法王は、前世紀の自由を求める闘争の中で、マハトマ・ガンジーが提唱した非暴力の実践が、南アフリカのネルソン・マンデラからアメリカのマーティン・ルーサー・キング牧師に至るまで、他の人々に大きな感銘を与えてきたことについて言及された。今世紀においても、異なる言語や信仰などを持つ人々が平和的に共存しているインドは、世界の模範となることができる。現代の世界では、人種や国籍、宗教の違いなどがあまりに強調されているが、インドは人々や国家間の調和を促進する力を持っている、と法王は述べられ、次のように続けられた。

「今日この地球上に生きている70億の人々は、ひとりの人間であるという点でまったく同じ立場にあります。私たちは皆、この地球上で共に生きていかなければなりません。私たちはグローバル経済の中に生きており、地球温暖化のような私たち全員に影響を与える問題にも直面しています。私たち人間の個人的な相違などは二の次です。重要なのは、70億の人類はひとつの人間家族であるという一体性を認識することです。そのように心掛けることによって、私はどこへ行こうとも、安らぎを感じることができるのです」

「私は、インド警察財団が国を守るだけでなく、世界が必要とする非暴力や思いやり、調和の原則を守ってくれていることに対し、本当に感謝しています」

インド全域から集まった警察官たちからの質問に答える中で、法王は、私たちの行動がよいものになるかどうかはその背後にある心の動機にかかっていることを強調された。正当な理由があれば、時には厳しい措置が必要になることもある。法王は笑いながら、チベットの寺院の壁に描かれている多くの本尊は忿怒尊であることも多いが、それらはすべて有情の悪い行いを戒めるための慈悲の表れなのである、と述べられた。特定の状況に対応する際に大切なのは、正しい動機を持ち、広い視野に立って目標を見通すことだと繰り返された。

国境警備隊や軍人たちは、土地の問題だけでなく、そこで発展してきた文化や価値観も守っているのであり、彼らは根本原則を守るために犠牲を払っている。ゆえに、彼らは勇気と決意を持って行動すべきだとも法王は述べられた。

法王公邸から行われたインド警察財団の警察官たちとの対話の中で、モニターに映し出された聴衆からの質問に答えられるダライラマ法王。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

法王公邸から行われたインド警察財団の警察官たちとの対話の中で、モニターに映し出された聴衆からの質問に答えられるダライラマ法王。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

インド警察は、自由と民主主義を守っているのだから、時には厳しい対応を迫られることもあるだろう。重要なことは、警察官が自らの動機を見極め、自分たちの行動原理を思い起こすことであると、法王は繰り返し述べられた。

「やさしさと思いやりは人間の基本的な性質です。シンプルな心からのやさしさが人間社会にもたらす利益は常識的なことです。このような良き資質を強化するためには、インド古来の根本原理である “アヒンサー” と “カルーナ” を現代教育と結びつける必要があります」

「健康な身体を維持するためには、身体が健康かどうかを観察する必要があるのと同じように、心の平和を達成するためには、破壊的な感情(煩悩)を克服する方法を学び、感情面における健全な心の状態を保たなければなりません。私たちは皆、幸せを望んでいるわけですから、宗教に信心をしているかどうかに関わらず、内なる心の平和を育む方法を学ぶ必要があるのです。すべての宗教に敬意を払うというインドの世俗的な伝統は大変重要ですが、宗教の実践は個人的なことであるのに対し、思いやりの心を育むことは社会全体に影響を与えます。さらに、慈悲の心を動機として持ち続けることは、ダルマ(仏法)の実践の一部なのです。それが、前向きで楽観的であり続ける方法です」

法王は、国民の信頼を得るためには、警察は何をするにしても、慈悲の心と知性を組み合わせる必要があることを指摘された。そして、民主主義国家では、警察は民主的な価値観に基づいて行動すると同時に、“アヒンサー” と “カルーナ” を尊重し続けなければならず、また、現実的であることも重要な要素のひとつであると法王は付け加えられた。さらに、自由で民主的な国だからと言って、すべての人が道徳的原則に動機づけられているわけではない。一部の人々が利己的で不正な行動をとった場合、社会全体の平和と調和を守るためには、強硬手段を取ることが必要になる場合もあるだろう、と法王は語られた。

法王公邸から行われたインド警察財団との対話の中で、法王に質問する警察官。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

法王公邸から行われたインド警察財団との対話の中で、法王に質問する警察官。2021年2月17日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャンぺル / 法王庁)

最後に法王は、仏教における司法制度についての質問を受けた。それに対して法王は、そのようなものがあるかどうかは知らないが、一般的に仏教の修行は個人的な事であり、もし僧侶が主な戒律の一つを破った場合、事によっては僧院から追放されるかもしれないが、それ以外に罰せられることはない、と語られた。他の宗教的伝統では、行動の規則や行動規範を制定することもありえるが、仏教では心を訓練することに重きを置いており、心の変容や、慈悲、自己鍛錬などの内的な価値観を養うことが重要である。このような制度の中で訓練を受けた学生は、自ずと慈悲深くなっていく、と述べられた。

法王は、死刑には反対であることを明言されており、最も悪い行いを為した者であっても、時間と機会が与えられれば、変わることができるはずだと述べられた。

司会のN・ラマチャンドラン氏はインド警察財団とインド警察全体を代表して、法王がシンプルでかつ適切なアドバイスを与えて下さったことに感謝し、法王の健康と長寿を祈願した。

「ありがとうございます」と法王は答えられた。
「私の方こそ、インド警察が昼夜問わず私を守ってくれていることに深く感謝しています。私には、何の恐れもありません。彼らを信頼し、敬意を払っています。皆さん、今日はありがとうございました」

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