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中国との対話における最も大きな障壁は「信頼の欠如」

(2005年11月 Tibetan Bulletin
 以下は、第4回世界チベット支援議員連盟会議でケルサン・ギャルツェン使節が語った、中国との対話の現況に関する講演テキストの全文である。

本日、私は、中国と進めている対話の状況が現在どうなっているか、皆さまに説明するべくこちらに参りました。まず初めに、ダライ・ラマ法王の特使であり、中国に対するチベット代表団長を務めるロディ・ギャリ氏から、この重要な会議へ出席できないことについて、心からのお詫びをお伝えします。ご存知のように、ダライ・ラマ法王は、アメリカ合衆国への訪問を大きな成功のうちに終えられました。訪問中、法王はブッシュ大統領やライス国務長官を始め、政府指導者や合衆国議会の方たちと、とても建設的で実りの多い会合を持つことができました。引き続き緊急かつ重要なフォロー会議に出席するために、ワシントンに残らなければならなくなったギャリ氏は、旧友の皆さまに再会できるこの集まりでお話しする機会を逃してしまったことを、大変残念がっておりました。

1959年に私たちがチベットから亡命した後、初めて中国と直接交渉を持つことができたのは、1978年後半のことです。亡命前、ダライ・ラマ法王は、中国人民解放軍の将軍たちはもとより、中国政府指導者たちとも平和的共存が図れるよう、8年以上に渡り最善を尽くし続けました。中国の文化大革命の混乱が収まりかけ、トウ小平が直接交渉の意思をほのめかしたときも、法王は躊躇なく積極的にそれに応じました。中国チベット対立問題の最も初期の段階から、法王はあくまでも非暴力を貫きとおし、対話を通じて対立の解決を実現するよう、固く決意されていました。すでに1970年代初期の段階で、法王と亡命政府閣僚たちは度重なる討論を繰りかえした結果、遅かれ早かれ、中国指導部との直接交渉を持ち、チベットの将来に関して彼らとの対話を始める必要を認めていました。そして、法王と亡命政府は機会さえあればいつでも中国と直接対話に入れるよう、準備万端整えて待機していたのです。

その後数年間に渡り、法王は中国指導部を真摯な対話の場に導きいれるよう努力し続けました。残念なことに、中国側は政治的意志もヴィジョンも欠けており、法王からの何回にも及ぶ働きかけにも応じることなく、ついに1993年8月、私たちの中国政府との直接交渉は終わりを告げました。

時を移さずしてダライ・ラマ法王はロディ・ギャリ氏と私に、北京政府との橋渡しを可能にするような非公式ルートを探るよう指示しました。民間や半公的機関などを通じて、私たちは幾つかのルートを確立することに成功しました。やがて、3度の会合が秘密裡に行われました。

1998年の晩秋、はっきりとした理由なしに、私たちのすべての交渉ルートの道は閉ざされました。対話中の中国側の姿勢、特に法王への態度が突然硬化したのです。チベット地域における抑圧が新たに強化されたことに歩を合わせるかのように、この事態は起こりました。

こうした後退にも関わらず、法王は私たちを励まし、有効と思われるあらゆる手段を講じる努力を続けるよう勇気づけてくださいました。民間、非公式ルートを通じての私たちの努力が実り、ついに2002年、チベット政策を掌握する中国官僚との、中国国外での初めての直接会議が開かれました。

この会議によって、2002年9月に4名のチベット代表団による中国およびチベットの首都ラサへの訪問の道が開かれました。ダライ・ラマ法王の代表がラサを訪問することができたのは、1980年以来初めてのことでした。

その後、チベットの代表団は、2003年、2004年と中国を訪問し、またチベット地域の周遊も実現しました。今年はチベットと中国の代表によるさらなる会合が中国国外で開かれました。2005年6月30日と7月1日に、スイス、ベルンの中国大使館で会合は行われました。

2002年の初めての会合で、代表団に託された任務は2つありました。1つは、北京指導部との直接交渉の道を確立させ、この先、定期的に直接会議を開いていけるような雰囲気づくりを行うこと。2つ目は、チベット問題解決に向けての、ダライ・ラマ法王の中道政策を説明すること。

北京で私たちは中国人民政治協商会議の副議長で中国共産党の中国国家統一工作小組代表Wang Zhaoguo氏、NAの大臣でUFWDの副代表Li De Zhu氏と会合を持ちました。友好的な雰囲気のもとで、私たちは彼らと率直に意見の交換をしました。彼らは、ダライ・ラマ法王との対話に関して中国政府の従来の主張を繰りかえしました。私たちは、和解と対話の精神で交渉を進めることで、チベット問題を解決していこうとするダライ・ラマ法王の考えを説明する機会を得ました。中国指導部は私たちの説明に興味深く耳を傾け、自由で自然な交流が実現しました。

2003年、私たちの訪問は中国政府ならびに中国共産党首脳の刷新後に行われました。その結果、私たちの主要な目的は2002年に開始されたプロセスを継続し、チベット問題やチベットとの関係を掌握する指導部や官僚たちと広く関わりを持つことに置かれました。さらに、この訪問に臨むに当たり、私たちは特に3つの目標を携えていました。

  1. 様々な地域を訪れ官僚たちとの会合を重ねることで、中国の状況への私たちのあらゆる理解を広げること。
  2. 中国の仏教指導者たちと会い、また仏教の聖地を訪れること。
  3. 何よりも、チベット地域を訪問し、チベット官僚たちと対面すること。

私たちはこの2度目の訪問で、中国人民政治協商会議の副議長で中国共産党の中国国家統一工作小組代表のLiu Yangdong女史、次長のZhu Weiqun氏、国務省のChang Rongjung氏、その他の官僚たちに迎えられました。チベットと中国の関係が過去において紆余曲折を経てきたこと、そして未だに多くの点で合意に至っていないことを双方が認めあいました。現存する諸問題を乗りこえ、お互いの理解と信頼を培うためにはより多くの努力が必要とされていることを、双方ともに確認しました。

2004年、私たちはチベットに関してこれまでで最も広範に及ぶ重要な意見交換を行いました。北京で2度、討議の場が持たれました。Liu Yangdong公使との会議はより公式なセッティングで行われ、3時間以上に渡りました。翌日には、ビジネスライクなセッティングのもとで、5時間を越える会議が行われました。ZhuWeiqun次長は、討議の場に中国代表使節を連れてきていました。

討議は率直かつ友好的に進みました。中国側は、チベットの活動、立場、見解に対して批判や反意を述べる長いリストを用意してきていました。多くの、しかもいくつか根本的な問題に関して、重要な見解の相違があることが討議を通して明らかになりました。お互いの溝を埋め、共通点を見つけるために、より実質的な討議が必要とされていることを双方ともに確認しました。

相違をなくすためには、柔軟で長期的視野に立つ姿勢を双方が示さなければならないと、私たちは強調しました。

チベットと中国の4度目の代表会議は、2005年にスイスのベルンで開かれました。現実的かつ実質的な討議が、友好的で率直でビジネスライクな雰囲気のなかで進みました。チベット側は、前回の北京での討議において中国側から出された批判や主張に、一つ一つ詳しく回答しました。さらに私たちは、お互いの信用と信頼を築き、また、進行中のプロセスが、チベット問題に関して双方ともに納得可能な解決へと導く実質的交渉に入るために、新たな段階へ進めるようにいくつかの提案をしました。状況の改善のためにはあらゆる努力を惜しまない意志があることを、私たちは繰りかえしました。同時に私たちは、中国側にも努力を促し、彼らからこういった姿勢が感じられないことを指摘しました。

進行中のプロセスについては、双方ともに前向きに捉えていました。Zhu次長は、両者の直接交渉が安定し「確立された実践」段階に入ってきたことを喜びました。彼はまた、中国共産党の中央指導部が、ダライ・ラマ法王との直接交渉に重要な意義を置いていることを、私たちに伝えました。「悲観的になる必要はない、より多くの会議や意見交換を通じて相違を埋めることはできる」。そう次長は述べました。

以上が、チベットと中国代表の間で行われた数年間のやり取りの要約です。

明らかに多くの、しかもいくつか根本的な問題に関して、重要な見解の相違が未だに存在しています。中国側との討議を通じて、私たちの直面している最も大きな障壁は、信頼の欠如であることがはっきりしてきました。根深い誤解と強い不信感が双方の間に横たわっています。

この誤解や不信感は、数回の訪問や会議を繰り返すだけで解決されるものでないことは明らかです。しかしながら、お互いの不信感を取りのぞくための重要なスタートはすでに切られています。直接対話を続けることで、問題の核心に関するお互いの見解や見通しをより広く共有できるようになるでしょう。このプロセスを続行させ、信用と信頼を培えるよう小さくとも確実なステップを踏み、相手側に誠実さと真摯さを示すことが、今は何よりも必要とされています。これは冷静な外交かけひきであると同時に、あくまでも公的な態度と積極性が要求されるデリケートなプロセスです。

目下のところ、私たちの最も憂慮すべき懸念は、中国指導部との直接交渉開始後も、チベットでは何ら変化が見られないことです。それどころか逆に、チベット内での抑圧は強化されています。初めての訪問以来、チベット亡命政権が信頼構築のために続けてきた方策に、北京側からの対応はありません。チベットでの中国の強行姿勢に変化の兆しもなければ、真摯な対話の開始に中国指導部が心からの関心を示そうとはしていない事実を、私たちは直視しなければなりません。

はっきりさせておきたいのですが、このことは中国政府に対する私たちの政策への疑問を表すものではありません。現在進行中のプロセスを積極的に押し進めていく決意と義務を、つい先ほどチベット亡命政権の主席大臣が強調したばかりです。

現在、中国は大きな変化のただ中にあります。この変化の過程は、中国に対する国際社会の姿勢や政策に相当な影響を与えることが予想されます。これは、翻れば、対チベットや対ダライ・ラマ法王に関する中国の政策に及ぼす影響も大きい、ということに繋がるでしょう。こうした状況下においては、この先チベットの人々が自由と尊厳に満ちた生活を享受できるかどうかは、もっぱら中国指導部の手にだけに委ねられているわけではないのです。チベット問題と中国に向けられる自由世界政府の政策もまた、将来を左右することになるでしょう。

中国指導部が私たちの訪問への同意に踏みきったのは、国際社会がチベットに強い関心を寄せているおかげであることは間違いありません。だからこそ、国際社会はチベット問題における中国政府への働きかけを続けていく必要があるのです。

現在行われているプロセスの進み具合に引き続き強い関心を示し、問題の平和的解決に向けた真摯な交渉の場へ導きいれるよう、中国政府を促し説得し続けることが、最も重要なことなのです。

どうもありがとうございました。

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