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国連人権委員会 チベット問題のイニシアチブ

チベット亡命政権ジュネーブ代表部事務所(国連担当)発
「アクチュアリテ・ティベテンヌ」1999年2月号

99年4月23日、第55回国連人権委員会は、「中国不信任案を提議しない」という動議を採択した。中国は、国連人権委員会の討議を邪魔する意図でこの動議を出し、中国不信任決議案採択を妨げようとしたのである。チベット人、中国の民主活動家たち、NGOなどは、(国連に)裏切られたことを知る。会議の外では、テントが張られ、ハンガーストライキが決行された。このハンストは、チベット青年会議によって行われたもので、国連に対する失望がいかに大きいかを表していた。国連の裏切り行為は、明らかに、世界の人権侵害問題を調査する任務を担う国連中枢機関に起因する。国連人権委員会の会場では、中国の外交官や中国支持の複数のNGOが、あからさまに歓喜し、自分たちの「勝利」を祝って拍手していた。

中国不信任決議案を出そうという試みは、今回で7回目になる。最初は92年で、91年8月23日にチベット問題が採択に価する議題として認められた。同年10月には国連分科委員会による少数民族保護決議が採択された。92年の国連人権委員会では、チベットの人権状況完全報告書が提出された。この報告書は国連事務総長に出されたものである。これに対応して、当時ポルトガルが議長国であった欧州連合は、「チベットにおける状況」と題した決議案を出した。しかし、この決議案は、パキスタンによって阻止され採択されるに至らなかった。

ここ10年、国連担当のチベット亡命政権代表団は、国連後援のいくつかのシンポジウムで仕事をこなしてきた。それらのシンポジウムは、一方ではチベット問題への興味を再燃させようとするものであり、他方ではこれらのシンポジウムの働きに対するよりよい理解を得ようとするものである。チベット亡命政権代表団のこうした努力は、以下に挙げる意義ある結果を得た。

  1. チベット亡命政権代表団が、リオデジャネイロから北京に至る世界会議など国連の様々な会議に出席することが可能になったこと。また国連条約を守っているか監視する国連の機関において、チベット亡命政権代表団が、中国が署名した条約の義務を怠っていないか調査することが可能となったこと。
  2. 国連人権委員会の機関に関与することが可能となったこと。国連人権高等弁務官事務所から受けたチベットの人権尊重を守るための任務を遂行できるようになったこと。
  3. こうした国際的な機関のもと実のある仕事をやり遂げるため、ジュネーブからダラムサラに至るチベット亡命政権機関やNGOのもと、教育任務を展開することができたこと。
  4. 国連人権委員会によって1つも採択されたものがないにしろ、国連人権委員会を使い、中国にチベットの人権を尊重しているかどうか状況を調査することが可能になったこと。チベット人の責任者たちがこうした与えられた機会を見逃したり、チベットの状況に対する懸念を表すための持てる手段を利用しなかったならば、事態は酷いことになっていただろう。
  5. 91年、国連分科委員会が出したチベット問題決議案の採択を得た時のことが挙げられる。チベット亡命政権ワシントン代表事務所(現在はない)の特派員ロディ・G・ギャリ氏、及び当時同政府ジュネーブ代表部事務所代表だったケルサン・ギャルツェン氏に率いられたチベット代表団による働きかけが功を奏したからである。これが、65年以来のチベットに関する国連の決議であったことを忘れてはならない。

外交情勢に関して言うと、これらは国連安全保障理事会の常任理事国である中国に対する一撃となったわけである。中国は今日、国連人権委員会に対し、人権の状況に関する決議採択にあたり分科委員会が持つこうした監督権を撤回するよう求めている。オブザーバーらの意見によると、この撤回案は実現に向け進んでいるとのことだ。
ともかく、私たちは、国連主催の会議、人権問題に関する話し合いの場に出席することが認められたのである。こうした成功のいくつかは、国連での時間、労力、金銭の無駄ともいえるような私たちの努力の甲斐あってのことだ。

そして今、私たち自身、チベットの人権問題の状況に対する国連の対応について考えてみよう。私たちは、国連人権委員会の機関で働いてきた。報告書のタイトルは様々だ。信教の自由、強制執行、拷問、表現の自由、女性に対する暴力…。ワークチームは、行方不明や不法拘留などを調べた。個人、公の機関、そして国連人権委員会は、毎年、様々なテーマ別の年次報告によりチベットの人権侵害を熟知することになった。

国連人権委員会の機関で活動することは、そのタイトル以上に重要なことである。なぜなら、私たちチベット人が、国連の重要書類の細部に渡って、チベットで増大する人権侵害を公表することができるからだ。65年〜80年代初頭まで、そういったことはできなかったからだ。今、人権侵害の多くは、回答を迫るか、時には緊急訴えといった形で、直ちに中国当局に通知される。つまり、国連人権委員会の機関の働きで、ある特別な問題に関しては中国政府からの公式な返答が得られるようになったのである。ここでパンチェン・ラマのケースを挙げてみよう。96年、パンチェン・ラマ11世であるゲドゥン・チョーキ・ニマ少年が強制連行なのか事故で行方不明なのか、これを調査している国連人権委員会のワークグループに、中国政府はこの少年を(いわゆる行方不明になる前に)拘留していたことを認めた。

人権問題の状況を自らの目で判断するためチベットに赴くよう、私たちが国連の機関や重要なポストにある人たちに働きかけたことは、いかに意味のあったことか。94年、97年、98年、信教の自由と不法拘留の問題を担当する国連のワークチーム、国連人権高等弁務官事務所の特派員を現地に送った事実は、私たちが国連機関に働きかけたことによって大いに発展したことを物語っている。

信教の自由の問題を担当した特派員は、94年、チベットと中国を訪れた際の報告書の中で、チベットでは信仰活動の自由に対する度重なる取締り政策が行われたことへの懸念を書いている。特に「チベット自治区では宗教に関することに接すると、大きい障害に頻繁に遭遇した」と書いたこの特派員は、特に、僧たちの早急な自由を要求している。僧たちが「反革命活動をした」として拘留されていたからだ。
その他、国連人権高等弁務官事務所と中国政府のやり取りを記録した「覚書」は、きっと将来、チベットにおける人間としての権利を守り、さらに発展させるために貢献することだろう。こうした進展は、中国が「内政」と呼んでいるところの問題を(国際社会から)見過ごさせるためのプロパガンダ作戦にしくじったことも証明している。

人権における悪いイメージを払拭するため、中国政府は、現時点では、外国の人権擁護団体がチベット入りすることを承認している。中国政府は、国連及び各国政府と人権問題に関する定期的な話し合いの場につくようになった。こうした進歩は、10年前にはとても有り得ないことであった。

もちろん、国連の調査機関からほとんど回答が無い場合など、国連と仕事をするということはフラストレーションが溜まることでもある。また、国連職員の人事異動が頻繁にあることから問題も生じる。つまり、重要問題を効果的に処理できる人物を見つけることが時折困難になる。それにより、一般的な情報にアクセスできないことがよくある。国連は、世界各地に広報事務局を持っている。「コンフィデンシャル・プロシージャー」という名で知られる国連人権委員会1503機構と仕事をした時は、私たちのフラストレーションは相当なものだ。チベット人がこの「コンフィデンシャル・プロシージャ—」のことを指摘したのは、何年も前のことである。しかしながら、中国の現役あるいは元外交官たちがこの1503におり、本当に平等な立場で出席する機会など私たちには全く与えられなかったのである。チベット亡命政権ジュネーブ代表部事務所が最近提出した報告書は、98年5月のドラプチ刑務所で頻発した虐殺に関するものだ。国連人権委員会のワークグループは「情報伝達に関するワークグループ」、国連分科委員会の方は「状況に関するワークグループ」という名だ。中国は、これら2つのワークグループに中国代表が選ばれるよう働きかけている。

第55回国連人権委員会に話を戻すとしよう。またもや、国連人権委員会の7つの機関から出された報告書からチベットの人権問題の現状が省かれていた。各国政府やNGOは、チベットの状況が悪化していることを改めて発言した。ヨーロッパ10カ国からの支持を受け、欧州連合はチベットの現状に関して非常に懸念していることを表明した。ドイツの外相ジョスカ・フィシャーは、国連人権委員会で欧州連合議長として演説を行った際、チベットに関するこうした懸念を言及した。ドイツ以外、チベット問題を取り上げようとした外国政府を挙げると、アメリカ合衆国、ノルウェー、アイルランド、スイス、カナダがある。

またNGOが声明を出し明確にチベット問題を提起したことは、言うまでもない。今年、3人のチベット人がチベットに関する声明、つまりチベットが国家という立場、チベット人の市民及び政治の権利そして子供の権利を打ち出した。その宣言のうち2つは、4月5日〜同月30日、ジュネーブの国連会議場の前で、ハンガーストライキに参加したカルマ・イェシとペマ・ルンデュップが読み上げた。前述のチベットについて発言したNGOとは、インターナショナル・フェローシップ・オブ・リコンシレーション、ヒューマン・ライツ・ウオッチ、クリスチャン・ソリダリティ・インターナショナル、アジア平和仏教会議、フランス・リベルテ財団である。

国連人権委員会の会議期間中に行われたチベット青年会議によるハンガーストライキ運動は、チベット問題に対する意識をまた新たに呼び起こすことになった。第55回国連人権委員会が閉会する時に、アン・アンダーソン女史がこう発言した。
「世界の様々な地域で勃発する紛争やコソボ危機で感情が高ぶるような問題に直面したとき、私たちは挑戦しなければならない。こうした問題に対し、私たち国連の注意が弱まることはない。自分たちの問題の正当性を信じている人々、またこの国連人権委員会に期待を裏切られたと感じている人々全てのことも忘れてはならない。彼らの多くが、自分たちの信条を守るため高い代償を払う準備が出来ている。それは、近頃、国連会議場に出席していた私たち全てが証言できることだ」

メアリ・ロビンソン国連人権高等弁務官、ノルウェー、ドイツ、アイルランド、ニカラグア、フィンランド、スウェーデン、インド、スイス、アメリカ合衆国、以上の各国代表は、ハンガーストライキのテントに訪れた。その他、チベット亡命政権代表団、チベットNGOメンバー、チベット支援団体は、中国不信任決議案に支持をとりつけるよう53カ国の国連加盟国に働きかけた。チベット亡命政権から発せられた任務により、チベット亡命政権ジュネーブ代表部事務所が、様々な外国政府の首都や外務省にこうした働きかけを行った。人権擁護団体やチベット支援団体は、自国内で貴重な貢献をもたらした。中国不信任決議案支持を表明するため、中国の民主活動家たちを始め、チベット人、モンゴル人(内モンゴル)、ウイグル人、全ヨーロッパから人々が、ジュネーブの国連会議場の前に徹夜で集結したのである。結果として、今年中国に対するこの決議案を反古にした事実を1番話題にしたのは、各国政府、NGO、国連の責任そしてこの問題を取材していた報道関係者たちである。他のいかなる国連決議も国際的な報道機関のトップページを飾ることはなかったし、国連人権委員会についてこれほどの関心を引き起こすということもなかった。

4月23日、中国は、第55回国連人権委員会で、真剣に討議することも、中国政府が提出した人権報告書に対する不信任投票をも妨げた。決議案は、「チベット人への文化、信教、その他の自由引き締め政策の増大に対する懸念」を表したものであり、中国に対して「チベット人やその他の民族の文化、民族、言語、固有の宗教のアイデンティティーを保持するよう」訴えるものである。中国によって出された「提議しない」動議に関する45分に渡る議論の末、22カ国が中国に賛成、17カ国が反対の票を投じ、14カ国が棄権した。

97年、同じように中国から動議が出た当時は、賛成が27カ国、反対が17カ国、棄権が9カ国であった。国連人権委員会に加盟している国は53カ国で投票権を持っていることもここで記しておく。こうした投票権で最も勇気付けられたことの1つに、中国はアフリカの1部の国に賛成の票を取りつけることが出来なかったことである。つまり、リベリア、モーリシャス、ナイジェリア、セネガル、チュニジアは棄権し、南アフリカ共和国とルワンダは反対に票を投じた。それまで国連人権委員会のアフリカの加盟国は、中国に対してこれまでのように支持を強調してきたのにである。結局、この投票が決議だとはっきり言える内容のものではなかったということだ。中国はまたもこの問題に関する討議や投票を阻止することに成功はしたが、中国自身にとっても手続き上の「勝利」でしかなかったのである。

私がまた強調するように、国連人権委員会の前で中国不信任決議案を通過させる試みは、国連に対してチベット人が努力を続けなければならない数ある目的のうちの1つなのである。決議案が1つであろうと10あろうと、チベットの全ての人権侵害を必ずしも終わらせるものではないし、チベット問題に最終的な解決をもたらすものでもない。南アフリカ共和国や西サハラ、キプロス、コソボ、パレスチナ、ミャンマー、東ティモールのような他の国の人権問題を見つめることができた。私たちはそれらの人権問題を把握しなければならない。しかし、中国不信任決議案を提出するために私たちチベット人の挑戦を続けることを止めるわけにはいかないのである。

自由なチベットの未来のために、こうした問題にうまく対処できる必要な人材を持つには、国連の機能に対応できるようチベット人の若い世代を導き、世界的な人権擁護の動きに合わせて教育していかなければならない。糾弾することだけに甘んじていては、チベットの人権の現状を根本的に改善することはできないし、政治囚の釈放も不法な刑の執行も止めさせることもできない。

国連人権委員会の機能をいかに使うか、中国で毎年どの人権侵害を取り上げ、国連人権高等弁務官事務所の任務をどう利用するか、これらがポイントとなる。こうした働きかけを通じて、中国の民族差別政策下のチベットで広がる惨事を公表するための機会として、人種差別に関する世界会議のようなものを国連人権委員会が新たに提案するよう、力を集結させなければならない。

私たちは、国連人権高等弁務官事務所の人権について専門のアシスタント研究グループといったような他の様々な方法を通じて、チベットの現状が少しでも改善する方法が見つかるよう留意していかなければならない。もし欧米諸国に国連人権委員会で中国不信任決議案に支持を表明してほしいなら、これらの国に働きかけ始めた仕事をさらに発展させることが大変重要になる。アメリカ合衆国と欧州連合の間に確認された見解の相違は、遅れをもたらすことになった。92年、欧州連合が断固たる態度で中国不信任決議案を支持したのに対し、アメリカはチベットに対して好意的ではなかった。7年後、立場は逆転するわけだが。

人権侵害から未来の世代のチベットを守るため、私たちの社会に人権を打ちたてるため、絶え間ない努力を続けていかなければならない。とりわけ、チベット語のラジオ放送は、チベットにいるチベット人に情報を提供するという重要な役割を担っている。それは、今日、自由と権利を奪われたチベットの兄弟・姉妹たちのために私たちが続けている努力を、さらに広げ、確かなものにしてくれるものだ。

ンガワン・C・ドラマギャポン
(チベット亡命政権ジュネーブ代表部事務所 国連担当)

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