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中道のアプローチ(UMAYLAM)― チベット民族の真の自治

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中道のアプローチ 要約

「チベット問題を解決するには、中華人民共和国憲法ならびに民族地域自治に関する法律により定められたすべての自治権が中国政府により真に施行され、すべてのチベット人民が一つの自治体制のもとにおかれなければならない。さらに非暴力はこれらの目的を達成するための唯一の手段であるべきである。これらが中道の不可侵の原則である。」

中道のアプローチ その性質と経緯

チベット民族の真の自治を得るための中道のアプローチ(チベット語でUmaylam)は、ダライ・ラマ法王が提唱された政策です。1967年、1968年以降、ダライ・ラマ法王は、世界中、特に中国で蔓延する状況を考慮し、当時の意思決定機関と幅広い討議を行われました。その結果、1974年に内部決定として、中国政府との対話に臨み、チベット独自の文化と民族意識を守るために平和的手段を模索し、チベットにとって意義のある自治を確保する政策を貫くこととしました。これは、中央チベット政権とチベット人民によって何十年にもわたって行われた一連の議論により民主的に採択された政策です。現状と独立の間にある中道であり、相互に有益な提案です。中国からの分離を求めずに、チベット人民に対する中国政府の現在の抑圧的な植民地政策を無条件に拒否するものです。

今日までダライ・ラマ法王は、チベット内で直面している、重要かつ切迫した問題に対する現実的かつ実用的な解決策としてこのアプローチを一貫して保持されています。この政策が初めて達成したことは、ダラムサラと北京の間の直接の接触でした。1979年に鄧小平は次のように述べました。「独立以外のことなら、すべての問題を議論し得る。」1979年から1985年にかけて、調査団が四度にわたってチベットを訪れました。ダラムサラからの調査団は、1982年と1984年の二度、北京で中国の最高指導部と面会し、1993年8月まではダラムサラと北京の間には公式な接触がありました。

一方、1987年以降、ダライ・ラマ法王は、中国指導部を再び議論の席に着かせることを望まれ、米議会と欧州議会をはじめとする世界各地での討論の場で中道のアプローチを提唱されました。中国との対話は2002年に本格的に再開され、合計9回にわたる協議が行われました。前例のない広範囲の抗議運動がチベット各地で起こった2008年に行われた第7回の協議の際、中国政府はチベット側指導部に対し、チベットが求める自治の内容を書面にするよう求めました。チベット民族の真の自治に関する草案は、2008年に開催された第8回の協議で提示されました。

中国政府はこの草案に対して数々の懸念や異議を表明しました。これらに対処するため、2010年1月に行われた第9回で最後となった協議の際にチベット側代表者がチベット民族の真の自治に関する草案の覚書を提出しました。草案と覚書は、チベット民族の真の自治が中華人民共和国の憲法、統治権、領土保全、三つの遵守原則[*1]、中国の中央政府の階層と権限という枠組みの中で行われることを説明するものです。覚書にはさらに中国政府が挙げた懸念事項に回答しています。単一の自治体、政治・社会・経済の制度、公安維持、移民制限、言語、宗教です。覚書はまた、草案に含まれるダライ・ラマ法王の立場や意図に対して中国中央政府が疑念や懸念があれば正式な見解を示す用意があると表明したものです。

2010年以来、中国との対話は実施されていません。それでもチベット指導部は、チベット民族の真の自治を求める中道のアプローチへの取り組みと、ダライ・ラマ法王の特使団と中国指導部代表団との対話を通じた持続的な解決策を求める姿勢を固持しています。

  • [*1] 中央政府が定めた三つの遵守原則は、(1)中国共産党の指導、(2)中国独自の社会主義、(3)区域民族自治体制。

チベット民族が中道のアプローチを通して求めているものとは?

チベット民族が求めているのは、チベット民族の基本的な必要事項を満たすことができ、中華人民共和国の統一と安定性を脅かさない自己統治の形であり、チベット民族が習慣や価値観、言語、生活様式、土地などを共有する自治形態です。チベットは現在、チベット自治区と、住民の大半が中国人である近隣の青海省、四川省、甘粛省、雲南省に分けられていますが、単一行政下に置くことで統治はより効率的かつ効果的な形になります。

中国当局は、チベット指導部の意図はチベット地域から「すべての中国人」を追放することであると主張しています。実際には、草案にはこれが事実ではないことを明記されています。「我々の目的は、非チベット人を追放することではない。我々の懸念は、他の民族も含め主に大勢の漢民族が多数のチベット人地区に大規模な移住を行い、もともとのチベット民族の人口が少数派となってしまうことである。」草案では、チベット地区ではチベット人独自の民族意識の保護、発展のため、チベット民族が住民の大半を占めることを求めています。中国のチベット民族の人口は620万人(中国の第6回国税調査による)であり、中国の総人口の約0.47%です。

チベットの地方行政は、チベット民族の11項目の基本の要求事項の保護と促進を統括するもので、それは次の通りです。

言語、文化、宗教、教育、環境保護、天然資源の活用、経済発展と商取引、公衆衛生、移民制限の条令の制定、諸外国との文化、教育、宗教的交流活動。 これは、中華人民共和国憲法ならびに地域民族自治に関する法律を遵守するものです。

ダライ・ラマ法王の立場

2011年、ダライ・ラマ法王はその政治的責任を選挙で選ばれたチベット指導部に移譲しました。これが民主的に選出されたチベットの政治的指導者である主席大臣の指導下にある中央チベット政権です。草案で述べたように、ダライ・ラマ法王は、チベットの政治的地位を有しないと数多くの機会に明言されています。チベットの団結と民族意識の象徴であるダライ・ラマ法王は、チベット民族の希望の光です。チベット民族は、チベット内の現状に平和的解決をもたらす存在としてその希望を精神的指導者に託しています。ダライ・ラマ法王は一人のチベット人として、現状で閉塞する問題を解決するために必要な支援をし、中道のアプローチを忠実で揺るぎない提唱を続けられています。

中道のアプローチに対する支持の広まり

チベットの指導部は、中道のアプローチは現在のチベット内の緊急事態に対応する最も有効な解決策であると考えています。また、国際的にも強く支持されています。米国、EU、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなどを含む多数の国の政府が公式にダライ・ラマ法王の特使団と中国の指導者の代表者との対話に支持を表明しています。過去2年間だけでも、対話を支持する決議、動議、表明が、米国、EU、フランス、イタリア、日本、オーストラリア、ブラジル、ルクセンブルク他多数の国の議会で決議されてきました。

中道のアプローチは、中国社会からの支持も年々増加しています。中国でも最も尊敬を集める有識者や芸術家にも政策を支持する人がいます。ダライ・ラマ法王の平和の取り組みへの支持を表明した2008年に公開書簡の共同執筆者の一人であり投獄されたノーベル賞受賞者の劉暁波氏もその一人です。それ以降、中国の学者や作家がチベットの問題を解決するための対話をサポートする1000件以上の記事や意見を発表しています。北京に拠点を置く法的なNGO団体である公盟法律研究所が発表したチベット民族の訴えを伝え政策の見直しを求める報告書もそのひとつです。2012年には、15カ国に拠点を置く82の中国のNGO団体が国連、EU、様々な議会や政府に対し、「中国政府にできるだけ早く交渉を開始するよう促してほしい」という内容の請願書を提出しています。

このほか、中道のアプローチを支持する中国人有識者の中には、著名な作家の王力雄(Wang Lixiong)氏、中国社会科学院の研究員で憲法専門家の張博樹(Zhang Boshu)氏、『四川文学』誌のライターとして著名な由雲飛(Ran Yunfei)氏、共中国共産党上級党員で北京在住の法律専門家である于浩成(Yu Haocheng)氏、元中国社会科学院経済学者の蘇紹智氏、趙紫陽前中国共産党総書記の側近である厳家其氏が名前を連ねています。

中道のアプローチの実現を求めて世界の指導者たちが対話を要求しています。バラク・オバマ米国大統領、ジョージ・ブッシュ元米大統領、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官、キャサリン・アシュトン欧州連合外務・安全保障政策上級代表、欧州委員会副委員長、ゴードン・ブラウン元英国首相、二コラ・サルコジ元フランス大統領、アンゲラ・メルケル現ドイツ首相、スティーヴン・ハーパー現カナダ首相、トニー・アボット現オーストラリア首相、ケビン・ラッド元オーストラリア首相、馬英九(Ma Ying-jeou)中華民国総統などです。

2011年7月16日ならびに2014年2月21日にオバマ大統領はダライ・ラマ法王と会談し、その後ホワイトハウスは、「非暴力を貫き中国との対話を求める中道のアプローチを提唱するダライ・ラマ法王の姿勢」を称賛し、「長年にわたる異議を解決するための直接対話」を推奨して、「その結果は、中国とチベット人民双方にとって有益なものになるだろう」と表明しました。

中道のアプローチは、ノーベル平和賞受賞者たちにも支持されています。南アフリカのデズモンド・ツツ大司教、米国のエリー・ヴィーゼル氏、米国のジョディ・ウィリアムズ氏、リベリアのレイマ・ボウィ氏、ポーランドのレフ・ワレサ氏、イランのシーリーン・エバーディー氏、グアテマラのリゴベルタ・メンチュウタム氏、東ティモールのジョゼ・ラモスホルタ氏、アルゼンチンのアドルフォ・ペレス・エスキベル氏、アイルランドのマイレッド・コリガン・マグワイア氏、英国のベティ・ウィリアムズ氏などです。

2012年に胡錦涛中国国家主席への公開書簡では、ノーベル平和受賞者12人は次のように記しています。「チベット人民はその声が届くことを望んでいます。彼らは長期にわたって意義のある自治を求めてきました。その手段として交渉と支援者たちの協力を選んだのです。中国政府は彼らの声に耳を傾け、その訴えを理解し、非暴力的な解決策を見つける必要があります。その解決策として、分離主義を提唱した事実のない、私たちの友人であり兄弟であるダライ・ラマ法王が平和的な道を選択してこられました。法王が差し伸べる意義のある対話の糸口を掴むよう、中国政府に求めます。一旦この道が開かれれば、それを開き続け、活発に生産的な対話を持つべきです。その対話により、チベット民族の尊厳と中国の統一を尊重しながら、緊張の高まる現在の問題の解決に取り組むべきです。」

中道のアプローチを支えてきたチベット内部の著名な指導者もいます。公然とこの政策への支持を表明した故パンチェン・ラマです。また、チベット内のチベット政府の故アボ・アワン・ジグメ元大臣は、中国政府に対し、十七条協定[*2]で約束した通りのチベットにおける区域自治の実現を促しました。

故プンツォク・ワンギャル中国共産党チベット上級党員は次のように述べています。「ダライ・ラマ法王が提唱する、チベットの独立ではなく意義のある自治を求める中道のアプローチは、現状の歴史的な流れの中で、法王がチベットとチベット民族全体の基本的な利益、将来、運命について慎重に検討する大きな責任を有することを表すものだ。それはまた、彼は、双方に関わる問題を理解することと、変化を続ける状況を慎重に吟味することに上で大きな責任を有することを示している。さらに、それは現実と先見性に基づく考え方である。」

チベット人共産党員指導者であり北京の中国チベット学研究所元所長のドルジェ・ツェテン氏、チベット自治区人民政府元主席サンギェ・エシェ氏、ラサのチベット大学タシ・ツェリン英語学教授、チベット人共産党指導者のヤングリン・ドルジェ氏などのチベット人指導者たちも、単一行政下でのすべてのチベット民族の統合を支持しています。

  • [*2] チベット政府は、1951年に軍事的侵略の脅威の下で協定への締結が強要された。 1959年、ダライ・ラマ法王は、中国がその条項を遵守しなかったため協定を拒否した。

未来への道

チベット政権は、中国政府が和解の精神で対話の再開に臨むこと、真の自治は双方に有益であることを理解するよう、中国社会ならびにより広い国際社会から中国政府に説得するよう支援を求めています。

中国中央政府はチベット内部のチベット人民は中国の現在の政策に満足しているという姿勢を維持することはもはやできなくなっているとチベット指導部と考えています。チベット人民は調和の中で暮らすためにチベット人民自身の問題に対する真の発言権を認められるべきです。中道のアプローチを受け入れることで、中華人民共和国は、その法律に従って地域の平和と安定を確保することができます。それはまた同時に、国際的にも世界中の人々の中国に対する印象を改善し、その領土保全と主権を守ることができるのです。


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