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チベット問題解決の中道政策とその他の関連資料

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全チベット民族が名実共に自治を享受するための草案についての覚書

はじめに

この覚書は、2008年10月31日北京での第8ラウンド会談で提出された「チベットの真の自治メモランダム(Memorandum on Genuine Autonomy for the Tibetan People. 以下、メモランダム)」に対して注がれた中国政府の主たる懸念および反論に対する回答を目的とする。

われわれは、当会談における杜青林大臣と朱■群副大臣の回答、反応、メモ、および会談後の中国政府の声明を注意深く検討した。その結果、メモランダムが提起したいくつかの論点に誤解が生じており、また、それ以外のいくつかの点について、中国政府の理解が得られなかったように見受けられる。

中国政府は、メモランダムは中国憲法および「三遵守事項(中国共産党の指導力、中国的特色を持つ社会主義、民族自治)」に違反していると言及している。一方、チベット側は、メモランダムに盛り込まれているチベット側要望は、中国憲法の枠組み、精神および、その自治原則に合致しており、「三遵守事項」にも違反しないと考える。われわれは、当覚書がこの点を明らかにすると信じるものである。

1974年の段階から、独立ではなく自治協定の締結を通じてチベットの将来のあり方を模索するべく、ダライ・ラマ法王はチベット亡命政権内部で討議を行ってきた。1979年、中国の鄧小平主席は、独立を除くチベット問題のあらゆる内容について、話し合いによる解決を目指したい意向を表明した。爾来、ダライ・ラマ法王はさまざまなイニシアティブを採り、双方が受け入れ可能な平和的解決策を見出す努力をしてきた。つまり、双方が受け入れ可能な互恵的解決策を、和解と妥協の精神で追求していく「中道アプローチ」を、断固たる決意で推進してきたといえる。

五項目和平プランと、ストラスブール提案は、この精神に基づいて作成された。これに対し、中国政府から前向きな回答を得られなかったことに加え、1989年3月にチベット地区に戒厳令が敷かれ、情勢悪化したことを受け、1991年、チベット亡命政権側は、ストラスブール提案の無効化の声明を出さざるを得なかった。それでも、ダライ・ラマ法王は、中道アプローチを堅持し続けた。

2002年、中国政府とダライ・ラマ法王使節団の会談が再開したことで、双方が自らの立場を説明し、相手側の懸念、要望、利害に対する理解を深める機会が得られた。さらに、中国政府の真の懸念、要望、利害に直面することで、法王は状況を現実的な観点から見直すことになった。これは、法王が柔軟かつ開放的で現実主義者な人物であることを示しおり、互恵的解決策を真摯、かつ決然と求めている証左でもある。

「チベットの真の自治のためのメモランダム」は、2008年7月に開催された第7ラウンド会談における中国側の提案に応えるものとして作成された。しかしながら、メモランダムに対する中国側の反応、および批判の主たるものは、公式に提出された提案に対するものではなく、それ以前になされた提案や、異なる時期に異なるコンテクストでなされた声明などを対象としているように見受けられる。

メモランダムや当覚書を通じてダライ・ラマ法王が求めているのは独立や分離ではなく、中国憲法とその自治原則の枠内での解決策である、ということを、ここであらためて強調したい。

2008年11月に行われた亡命チベット人の特別集会では、中道アプローチに基づく中国との対話プロセスの当面の継続を支持する決定がなされた。また、国際社会は、双方が対話のテーブルに戻るよう促すと同時に、討議のたたき台として(チベット側が提出した)メモランダムはふさわしいものである、との意見を表明している。

(1)中国の主権と領土の一体性を尊重する

ダライ・ラマ法王は中国からのチベットの分離、独立を要求しない旨を再三、言明している。法王は、中国の域内においてチベット問題に持続可能な解決策が与えられることを望んでいる。この立場は、メモランダムに明快に表明されている。

メモランダムが求めているのは真の自治であり、独立、「半独立」、「偽装された独立」ではない。真の自治という表現の意味するところを、メモランダムは完全に明快に表現している。メモランダムが提案する自治の形態と度合いは、中国憲法が規定する自治原則に合致したものである。世界のさまざまな地域においてメモランダムが提案する形態での自治が行われており、だからといって、そうした地域が属する国家の主権や一体性が問題にされ、脅威にさらされているわけではない。単一国家における自治区、あるいは、連邦国家における自治区いずれにも、真の自治の成功例がある。チベットびいきでない、公平な国際社会の指導者や学識者も、チベット側提出のメモランダムは、中国域内における自治を要求するものであり、独立、分離を目指すものではないと認めている。

中国政府によるチベットの歴史認識は、チベット民族による認識と異なっており、チベット側は中国の認識に賛成できないということを、ダライ・ラマ法王は十分承知している。しかしながら、歴史は過去のものであり、今更、変えることはできない。ダライ・ラマ法王は、過去にこだわることなく、未来志向であろうとしている。法王は、歴史認識の相違が、中国の枠組みのなかで中国人とチベット人が互恵的な共通の未来を模索していくための障害になることを望んでいない。

メモランダムに対する回答により、中国側は、チベット側の提案が独立という真の野望を実現するための戦術だと依然として考えていることが明らかになった。ダライ・ラマ法王は中国がこうした懸念を持っており、(中国支配下にある)チベットの現状の正統性について敏感であることを良く理解している。だからこと、法王は中国への使節団や、公的な声明を通じ、自治協定が締結されたあかつきには、中国から与えられた自治に対し、自らの権威を与え、それが支持を得て適切に実施されるのに必要な正統性を付与するつもりだと言明している。

(2)中国憲法を尊重する

メモランダムには、ダライ・ラマ法王が求めるチベットの真の自治は、中国憲法およびその自治原則の枠内にあるものであり、そこから逸脱することはない、と明記されている。

民族・地域の自治という概念の底流をなす基本原則は、平等と協力の精神のもとに、多民族国家における少数民族のアイデンティティ、言語、習慣、伝統、文化を守るというものである。憲法は、少数民族が集中居住する地域では、彼らによる自治権の行使のために、自治組織を組織することを規定している。この原則に則り、「チベットにおける地域的民族的自治の白書(2004年5月)」は、少数民族は「自らの運命を決定するものであり、自らの主である」としている。

この基本原則の精神を踏まえたうえで、憲法はその時々のニーズに応え、新しい、あるいは変化した状況に対応可能なものである必要がある。過去の中国の指導者は、憲法を柔軟に解釈、運用し、状況の変化に応じて、それに修正や改定を加えてきた。こうした柔軟性を現チベット情勢においても発揮することで、チベット民族の要望を憲法の枠組み及び自治原則に合致させることができるだろう。

(3)「三遵守原則」を尊重する

ダライ・ラマ法王の立場は、いかなる点からも中国共産党の指導的地位に挑戦するものではなく、それに疑問を呈するものでもない。しかしながら、一体性、安定性の高い、調和ある社会の実現のためには、チベットの文化、宗教、アイデンティティを脅威と捉える共産党の現行の態度に、しかるべき変化が加えられることを期待している。

また、メモランダムは中国の社会主義システムに盾突いくものでもない。中国のシステムに変更を迫る要求も、チベット人地域から中国システムを排除するような要求も、そこにはない。ダライ・ラマ法王は、良く知られている通り、社会主義経済および、平等や貧困層の地位向上に利する社会主義思想に対し好意的である。

ダライ・ラマ法王による中国枠内での真の自治要求は、中国憲法の少数民族の自治原則を踏まえたものであり、原則に合致したものである。今日、自治に関する規定が現実に施行されている内容は、チベット民族の真の自治を否定する結果となっており、「自らの主として」 チベット民族は自らを治める権利を行使し得ないでいる。今日、チベット民族の福祉に関する重要な決定は、チベット民族によるものではない。メモランダムが規定する真の自治が実現すれば、中国憲法の自治原則に則って、チベット民族による自治権が十全に行使され、チベット民族は自らの主となることが可能になるだろう。

つまり、「真の自治のためのメモランダム」は、「三つの遵守原則」に抵触するものではない。

(4)中国政治・行政組織のヒエラルキーと権威を尊重する

メモランダムの提案には全国人民代表大会をはじめとする中国中央政府の諸機関の権威を否定する要素は一切なく、中央政府の機関とチベット自治区政府のあいだのヒエラルキー格差を十全に尊重したものである。

およそ、真の自治といわれるものは、立法機能における中央政府と地方自治区政府のあいだの権限、責任の分担を前提としている。そのうち、自治区政府が決定する法規制の有効範囲は自治区の範囲に限られている。これは、中央集権国家においても、連邦国家においても同様である。

こうした原則は、中国憲法にも認められたものである。自治において憲法が規定する精神は、自治区に通常の省に比べて広範囲の意思決定権を与えるというものである。しかし、全人代常務委員会による事前承認に関わる憲法条項(第116条)の援用方法のせいで、自治区は通常の省と比べても、地域の実情に合った決定を下す裁量余地が小さいのが現状である。

政府の異なる階層(中央政府と自治区政府)間に意思決定の分担があり、階層間で異なる決定がなされた場合には、諮問と協力のためのプロセスが重要となる。こうしたプロセスにより、相互理解が深まり、政策決定における矛盾や対立が避けられる。また、異なる機関に付与された権限の行使に関わる係争も少なくなる。もちろん、こうしたプロセスやメカニズムがあるからといって、中央政府と自治区政府の地位が対等になるわけではなく、中央政府のリーダーシップが否定されるわけでもない。

憲法の枠内において適正な自治協約を結ぶということは、中央政府と自治区政府を対等の立場に置くということではなく、中央政府の権威を制限したり、弱体化させたりするものでもない。(チベット側が提案する)自治協約は、自治区政府と中央政府のいずれもが、共同で作り上げた自治の基本的性格を、どちらかが一方的に変更しないという法的保証を加え、少なくとも、本質的な変更には、諮問プロセスを必要とすることを意図したものである。

(5)中国政府が懸念を表明した点への回答

(a) 治安

メモランダムの中には、自治区の裁量事項の一つとして治安機能を掲げたが、中国政府は国防機能と解釈したようで、これに対し懸念を表明した。治安機能と国防機能は同じものではない。ダライ・ラマ法王は、中国の国防に関する責任権限は、今同様、今後も中央政府のものであり、自治区政府によって行使されるものではないと明快に表明している。メモランダムは、「自治区内の公共秩序と治安」において、治安に携わる人員の大半は、現地の風習や伝統を理解するチベット民族によって担われるべきであり、このことにより、民族間の不調和による事件を減らすことができるとしている。治安についてのメモランダムの主張は、以下にある、中国憲法120条(地方民族自治法第24条にも反映)の原則に合致している。

「民族自治区の自治機関は、国家の軍事システムと実質的な現地の需要に沿い、国務院の承認を得て、公共秩序の維持のために現地の治安部隊を組織する」

この文脈において、チベット地区からの中国人民解放軍の撤退は提案していないことを強調したい。

(b) 言語

チベット言語の保護、使用、発展は、チベット民族による真の自治の実施における最重要事項の一つである。チベット語をチベット地域における標準かつ主要な言語として尊重する必要性については、すでに中国政府が作成した「チベットにおける地域的民族自治」の白書に同様の内容が盛り込まれていることから、新たな論争を起こすまでもないだろう。白書は、チベットの地方政府は、「チベット自治区において、チベット言語をメインとしつつも(下線は当覚書による)、チベット語と中国語は同等の配慮を加えるべきである」と述べている。メモランダムでは、「標準の言語」という表現が使用されているが、これは、チベット自治区における、チベット語以外の言語の使用をも当然の前提としている。

メモランダムには、中国語の使用や教育もなされるべきであるという規定がなされていないが、これは、中国全体の基幹的な共通語である中国語の「排除」という意味で解釈されるべきではない。ちなみに、亡命政権では、亡命チベット人に中国語の習得を奨励する措置を採っている。

であるから、チベット民族が自らの言語の習得に力点を置く、という提案は、「分離主義的立場」と解釈されるべきではない。

(c) 人々の移動

メモランダムは、自治区政府に、他地域から域内に移住を希望する人々の転入、域内における居住、雇用、経済活動を規制する権限が付与されるよう提案している。これは、自治区に一般的な権限であり、中国国内ですでに前例がある。

すでに多くの地方で、脆弱な地域経済や少数民族を、他地域からの過度の移住を防ぐことで保護するシステムや法制が敷かれている。メモランダムは、すでにチベット地域に長年にわたり住んでいる非チベット人の排除を求めていないと明確に、ダライ・ラマ法王とカシャクは、こうしたことを声明や、中国との交渉使節団を通じて中国側に伝えている。2008年12月4日、欧州議会において、ダライ・ラマ法王は、「われわれは非チベット人を追放する意図はない。われわれの懸念は、漢民族をはじめとする他民族のあいだに誘発されているチベット地域への大量移入が、地元のチベット民族の疎外や環境問題を引き起こしていることにある」――と改めて述べている。 このことから、法王はチベットはチベット人だけが住み、他の民族が住めない場所にしようとしているわけではないことは明らかである。この問題の論点は、一時的、季節的労働者を管轄する部署と、長期移住に関わる部署を2つに分け、チベット地域の脆弱な地元住民を保護することにある。

中国政府は、自治区政府が国内他地域からの転入と移民による自治区での経済活動の規制は、憲法と地域民族自治法に違反するものとして退けている。ときに、中国地方民族自治法43条には次のような規定がある。

「法的規定に基づき、民族自治区の自治区政府は一時滞在民の管理のための方策を講ずる」よって、この提案は、憲法に違反するものではないと考える。

(d) 宗教

メモランダムは、チベット人が自らの信念に基づき宗教信仰を実践する自由を強調しているが、これは、中国憲法が保証している宗教の自由という原則に完全に合致したものである。それはまた、多くの国で実践されている政教分離の原則にも則ったものである。

中国憲法36条は、いかなる者も、「人々に特定の宗教の信仰、もしくは、信仰の禁止を強要することは許されない」--としている。われわれは、この原則を支持するものだが、今日、中国では、チベット民族が自らの宗教を実践する過程に深刻な干渉が加えられていると考える。

師と弟子のあいだの霊的関係や、両者のあいだの宗教教義の伝授は、仏教信仰実践の本質的要素である。こうしたことを制限することは、宗教的自由の侵犯に当たる。同様に、「2007年7月18日施行の転生ラマの管理に関する国家規定」が規定するような、国家や国家的機関が転生ラマを認定するといった宗教への干渉、直接関与は、憲法規定にある宗教的自由にたいする深刻な背反といえる。

チベット民族の大半は宗教を実践しており、それは民族の根幹をなすものである。仏教を脅威とみなすのではなく、伝統的歴史的に見ても、仏教はつねに、チベット民族と中国民族を統合するポジティブなファクターであり続けたことにかんがみて、関係当局はそれを尊重するべきである。

(e) 統治機構の一元化

単一の自治区で単一の統治体から統治されたいというチベット民族の願望は、憲法における自治原則と完全に合致するものである。チベット民族の一体性を尊重するべき理由はメモランダムに明快に説明されており、それは「大チベットか、小チベットか」という問題とは別のものである。メモランダムの指摘にあるとおり、中国の地方民族自治法は、適正な手続きを踏んだうえで、行政領域にこうした変更を加えることを可能にしている。よって、こうした提案は、憲法違反には当たらない。

これまでの会談でチベット側使節団が指摘してきたとおり、周恩来総理、陣毅副総理, 胡耀邦総書記といった歴代の中国指導者は、すべてのチベット人居住区を単一の行政地域にまとめるという考えを支持してきた。第10世パンチェン・ラマ、ガプー・ガワン・ジグメ、ババ・プンツォク・ワンギャルといった中国国内の歴代チベット人指導者たちもこれを求めるとともに、これが中国憲法、法制に則ったものであることを主張してきた。また、1956年、中国共産党党員だったサンゲ・イェシ(天宝)が中国政府から任命されて、統合された単一のチベット自治区のための詳しい計画を立てていたが、超左派の妨害を受けて中断した、という経緯もある。

居住地域を一つの行政地域にしたいという要望は、自身の文化的、宗教的価値体系を守り育てるべく、単一民族としての自治を行いたいというチベット民族の深い願望に基づいている。これはまた、憲法第四条にあるような、憲法が規定する地方民族自治原則の存立理由であり、目的でもある。チベット民族は、現状システムが継続すると、民族的統合性が保たれなくなる懸念を持っている。チベット民族がはぐくんできた歴史的、宗教的、文化的遺産、そして、チベット高原という独自の環境に対する愛着こそが、民族を一つにまとめあげるものである。チベット民族は、中国において複数の民族の集合体ではなく、単一民族として認定されている。チベット自治区で生活しているチベット民族も、他の省内の特定地域で生活しているチベット民族も、同一の民族である。ダライ・ラマ法王をはじめとするチベット民族は、自らの文化的、宗教的価値体系の保護育成、およびチベット高原の環境問題について懸念を持っている。われわれが主張しているのは、チベット自治区の拡大ではない。中国国内のいくつかの地域で実施されているように、すでにチベット民族の居住区として認定さている地域が、チベット自治区と同一の行政主体によって統治されることを望んでいるのである。チベット民族居住地域が単一の行政地域とならないかぎり、チベット文化と生活スタイルは有効に保全されないだろう。今日、チベット人の半数以上が、(省における少数派であるために)有意な役割を果たすことができず、自らの優先順位や利益とは異なる政策目標に従わざるを得ない状況に置かれている。

メモランダムの説明にあるとおり、チベット民族は、民族全てを管轄する自らの自治政府、選挙による議会などの機関を有して初めて、真の意味での地方民族自治を達成することになる。この原則は、「集中的居住が認められる地域において」「自治の権利を行使するために自治政府の諸機関を設置し(第四条)」、少数民族が地方自治を行うことを認める中国憲法の精神を反映したものである。もし、地方民族自治法の前文において、厳かに宣誓されている「少数民族が自治を行う権利に対する国家の尊重と保証」に基づいて、同一民族が集中的に生活する地域を全て包括して自治区を形成できないのなら、憲法の自治原則そのものが機能しなくなる。

チベット民族を複数の異なる法規制下に置くことは、真の自治の権利を否定することであり、民族独自の文化的アイデンティティの保全を困難にする。内モンゴル自治区、寧夏自治区、広西壮族自治区などの事例を見れば、中国政府がチベット地域で必要な行政的修正を行うことは不可能でないと考える。

(f) 政治、社会、経済システム

ダライ・ラマ法王は、1959年以前にチベットが持っていた古い政治、社会、経済体制を復活させる意図は皆無であると一貫して主張してきた。未来のチベット自治区においては、チベット民族の旧来の社会、経済、政治的状況は改善されるべきでこそあれ、過去に戻るべきではない。中国政府は、ダライ・ラマ法王と亡命政権が旧システムを復古しようとしていると再三、主張しているが、これは根も葉もないことで、われわれを当惑させるものである。

中国を含む世界中の国と社会が、現在では受け入れがたいような政治システムを過去に受容してきた歴史がある。チベットの旧システムもその例外ではない。人類は、社会的、政治的進歩によって、人権の認知と生活水準の向上という点において大きな進歩を遂げてきた。亡命チベット民族は、チベット的な現代民主制度や教育、厚生のためのシステムや組織を発展させてきた。この点では、チベット民族は、他の国の市民と対等の世界市民になったといえるだろう。また、中国領土内に住むチベット民族も、中国の統治下で、自らの社会的、経済的状況や、健康福祉を改善してきた。しかしながら、中国内のチベット民族の生活水準は、依然として国内最低水準にあり、チベット人の人権は尊重されていると言いがたい。

(6)本質的論点を認識する

ダライ・ラマ法王および亡命政権指導陣には個人的な要望は一切ない。法王は、チベット民族の人権と福祉のみを考えている。より本質的な問題は、チベット民族が自らの才覚と要望によって自らを統治する「真の自治」を実施するにあたって、この制度に対していかにしてチベット民族からの信認を得るか、という点である。

ダライ・ラマ法王は、自らが深い歴史的な絆を持ち、完全な信頼関係にあるチベット民族の名のもとに発言を行っている。実際、ダライ・ラマ法王のチベット帰還の要望については、チベット民族は完全一致している。ダライ・ラマ法王がチベット民族の正統な代表であることには論争の余地がなく、チベット民族は、法王を真の代表かつスポークスマンとみなしている。ダライ・ラマ法王との対話を通じなくては、チベット問題を解決することはできないという現実を認識することが重要である。

ダライ・ラマ法王のチベット問題への取り組みは、自らの個人的権利を主張するとか、政治的地位を要求する、もしくは、チベット亡命政権の利益を保全するといった目的によるものではない。自治協約が合意に達すれば、チベット亡命政権は解散し、チベット本土のチベット人が統治の主要な責任を負うことになろう。ダライ・ラマ法王は(真の自治が実現した)チベットにおいて自らはいかなる政治的地位も持たないと再三、言明している。

(7)ダライ・ラマ法王の協力

ダライ・ラマ法王は中国政府の疑問点、懸念点の払拭に役立つのであれば、自らの立場および、これまで述べた論点の意図を公式の声明として発表する用意がある。

声明の文言については、中国政府とチベット側の基本的要望を満足させるものとなるよう、法王使節団と中国政府のあいだで事前に十分な検討が加えられるべきである。

チベット側も、中国側も、懸念があればそれを相手に率直に伝えるべきである。過去にそうだったように、懸念を対話プロセス中断の口実とするべきではない。

ダライ・ラマ法王は中国憲法の自治原則および、チベット民族の利益に則って、中国と一致点を見出すことが可能であるとの信念に基づき、このイニシアティブを採った。法王は、メモランダムと当覚書によって与えられた機会を利用して、双方が議論を深め、相互理解を増すべく大きく前進をすることを希望している。


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