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ドクター・ダワの「チベット医学入門」第4回(講義2日目午後)

七つの体質について

チベット医学上、人間の体質を七つに分類することができることは最初に述べましたが、それについてもっと詳しくご説明しましょう。どの人も三大体液のルン、ティーパ、ペーケンを持っていますが、その割合によって体質を認識します。これらの体質は受精時の(カルマを持った)意識、両親の種、五大元素に影響され、出来たもので、生涯変わることはないDNAのようなものです。普段、私たちの周りには様々な体質の人を見かけるような気がしますが、チベット医学では、この七つの体質の中に含まれていないものはないと考えます。悪い体質から良い体質の順に挙げていきます。

まず、三大体液のひとつだけが優勢のものです。

  1. ルンの単独体質
  2. ティーパの単独体質
  3. ベーケンの単独体質

これらの単独体質は、七つの体質の中で一番下にランクされているものです。なぜかというと、ルンにしてもティーパにしてもペーケンにしても、少しでも単独体質に適さない食物を摂取すれば、すぐに病気になったりするからです。単独体質の中では、ペーケンの単独体質が一番良く、次にティーパの単独体質、そして(1)のルンの単独体質が一番良くないとされています。

次に、三つのうち二つの体液が同じくらいの割合で優勢のもので、混合体質と呼ばれるものです。

  1. ルンとティーパの混合体質、
  2. ルンとペーケンの混合体質、
  3. ティーパとペーケンの混合体質

ほとんどの人は、これら(4)(5)(6)の混合体質にあてはまります。二種混合体質の中では(6)のティーパとペーケンが最良です。この体質の人は、寒さにも暑さにも我慢できないことがあります。これはティーパとペーケンの要素を併せ持つためです。次に(5)のルンとペーケンの混合体質が良いとされます。この体質の人は、朝は機嫌が良いのに、午後になるといらいらしてしまうことがあります。そして(4)ルンとティーパの混合体質が最悪とされています。この体質の人は、短気で怒りっぽくかりかりしています。

そして、三大体液がほぼ均等であるものです。

  1. ルンとティーパとペーケンの混合体質

七つの体質の中で一番優れた体質は、この最後の⑦、三大体液のバランスがとれているものです。しかし、この体質の人は少ないかもしれません。この体質の人は、どんな食物を摂っても消化可能ですし、何かの環境の変化などで五大元素が少々アンバランスになって少し体がおかしくなったりしても、三つの体液がバランスを補正し、病気にかかりにくいのです。いつも元気で長生きの人たちと言えます。

このように人の体質には、ルン、ティーパ、ペーケンの三大体液が大きく関わっているのです。さらに、この三大体液が食後、栄養を消化吸収し、血液や筋組織を増強し、脂肪や骨、骨髄と精液(月経)を作る働きをします。三大体液のいずれかが多すぎても少なすぎてもよくありません。各人が自分の体質を見極め、日常の生活態度と食生活によって、この三大体液のバランスを保つことが健康の秘訣と言えるでしょう。

三毒

さて、前回は精神と体は深く関わっているということをお話しました。ではいかなる精神(心、意識)が発病のもととなるのでしょうか。病気を引き起こす心の状態に、仏教で言う三毒、すなわち『貪(とん)』『瞋(しん)』『痴(ち)』があります。『貪(とん)』―欲望―はルンを、『瞋(しん)』―憎しみ―はティーパを、『痴(ち)』―無知―はペーケンをそれぞれ過剰に増大させ、病気の引き金となります。チベット医学で『心の本質(セムカム・リクパ)』について述べる場合、これら三毒を土台にして説明します。心をより良い状態にもっていくために、まず三毒を正しく理解する必要があります。この三毒は、私たちが生まれ落ちた時からずっと一緒に心にあるものです。チベット医学ではこれを、空高く飛ぶ鳥の影が地面に映らないことに喩えます。つまり・・・我々の目には見えないけれども、鳥の影は空間に連続体としてあるということなのです。これと同じように、三毒も、誕生から死ぬまで常に私たちと共にあるのです。

つい私たちが利己的になるのも、三毒が原因です。私たちが、この常に「苦しみの輪」、輪廻世界にいるのも三毒が原因です。悟りの邪魔をするのも三毒です。仏教の教えでは、心の本質そのものは、空の如く、清明で汚れのないものと考えます。この汚れのない清い心を曇らし乱すのが、欲望、憎しみ、無知なのです。ここで言う欲望とは、性的な意味だけではありません。もっと幅広く様々な欲望を指し、自分の心に浮かぶもの、人、事柄に執着することです。憎しみは、怒りと深く関わっています。無知とは、物事の良し悪しを正しく認識できずにいることです。チベット仏教の教えの中には、その三毒を認識し、心を本来のあるべき姿へ導く方法がはっきりと示されています。

チベット医学では、両親の種、意識、五大元素が影響して人としての身体を形成する段階で、三つの『脈官』が深く関係していると考えます。一つ目は頭頂にあり、脳と関わり無知と関係しています。二つ目はみぞおちにあり、肝臓や腎臓と関わり、憎しみと関係しています。そして三つ目は生殖器に位置し、これはルンと関わり、欲望と関係しています。

全ての苦しみは、三毒を原因として生まれます。欲望を例に述べてみましょう。日本では少々のたしなみは体に良いとされるようですが、チベット医学では、飲酒は三大体液のバランスを崩し、良くないとされます。日本ではつきあいでつい連荘で深酒してしまう人が多いようです。これは、三毒をコントロールできないことが原因です。また、喫煙についても同じことが言えます。タバコは発ガン性があり、脳血栓、動脈硬化などを引き起こし、寿命を縮める原因となります。しかし、体にいかに有害か知りつつも、喫煙の誘惑に勝つことができません。これも、三毒のせいです。各人にその欲望と煩悩の原因となるものがあり、それを分析してみることが必要です。それから、もう一度、タバコの害について分析します。身体に害を加えるのみで、良いことはほとんどありません。確かに疲れた時の一服は、爽快かもしれません。しかし、これは、タバコの毒と身体の体液が一時的に反応しているからなのです。一時の快楽で理性を欺きつつ、喫煙は私たちの体を確実に蝕んでいるのです。喫煙は吸う本人だけでなく、周りの人たちにも迷惑をかけます。また癌などの疾病にかかると、家族に物質的にも精神的にも多大な損害を与えます。確かに、たった一日でたばことおさらばすることは難しいですが、禁煙する努力をして、心を良い方向へ習慣付けることが大切です。これら要因(キョン)を全部わかった上で、たった一日でやめることは難しいけれど、やめる努力をして、徐々に良い方向へと習慣づけること(ゴムラム)が大切です。三毒が、私たちの心の中に悩みや苦しみを作り、それによってさらに苦しむ方向へ行動を誘う原因なのです。それを防ぐ為にも、各人が生活習慣においてそのことをしっかり肝に銘じることが必要でしょう。

経済的に恵まれ、何一つ不自由のないように見える人の中にも、不安で精神的に辛い日々を送っている人が多いものです。企業の社長などは、社員や取引のことなどを常に考えて生活しなければならず、毎日の精神的なプレッシャーは相当なものでしょう。また、ホームレスの人もその日暮らしで、心が落ち着かないかもしれません。いかなる人も三毒に影響され得ます。自分自身の心のありようを分析し、三毒を知ることが必要です。そうしないと、三毒によって心と体が蝕まれていきます。

夢分析

チベット医学では、夢は心と深く関係しているとみます。例えば、裕福な人は、自分の財産が誰かに盗まれたり脅かされたりする夢を見て不安をおぼえます。これは、普段、お金のことばかりを考えながら生活をしている証拠です。貧しい人は、大金を発見したり、ご馳走を思いっきり食べたり、豪奢なお屋敷に住んだり、贅沢で美しい宝石や着物を身に付けたりする夢を見ます。夢はこのように、その人の願望や不安と深く関係しています。

チベット医学では、夢を六つの種類に分けます。

  1. 日常生活で普段目にしていることの夢
  2. 睡眠中の音や光などの情報を素材にした夢
  3. 体験した事柄に関する夢
  4. 願望の夢
  5. 正夢
  6. 病気と関係のある夢

夢は、五感と関係し、ルンとも深く関わっています。ルンには、五つの本部のルン、五つの支部のルンがあります。支部のルンは、五つの感覚器官(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)と関係しており、それを通して心に働きかけます。お昼に食べたものを、夜にその匂いや味まで夢で再現することはよくあることです。ルンのバランスが崩れると、心に影響を深く及ぼすのはそのせいです。

チベット医学は、チベット仏教と同じように、心の要素が体、その人の在り方に深く関係していると考えます。そのような意味でも、三大体液、五大元素のバランスを考慮した食生活などに気を配りながら、三毒を正しく理解し、自分の心を分析し、心を良い方向へ導くような生活態度を心がけることは大切なことです。

人生前半では憎い相手であっても、人生後半には心を理解しあえる友人になることさえあります。また昔は鬼のように残酷と思えた人間でも、菩薩のような優しく穏やかな人物に変わったりすることさえあります。これは一体何が変わったのでしょうか。何でこう変わったのでしょうか。心です。心が変わったのであり、心で変えたのです。自分自身の心に平和と幸福をもたらすためには、思いやりと優しさ、まごころ、真の愛情を持って周りに接することが大切です。

確かに「言うは易し」で、実際にそうした心がけを行動に起こし、持続することは非常に難しいですね。そこで私のアイデアを述べましょう。

自分にとって良くない考え、物事、生活態度は捨て、良いことのみを日常生活で生かすことです。これは一日や一年でできることではありません。日常生活で徐々に経験して身につけていくことです。チベットでは、良い習慣をつけることを「ゴムパ」と名付け、とても大切なこととしています。良い習慣は、私たちを常に追い立てる煩悩を消滅させ、心を良い方向へ転換させます。人も動物も、喉が渇けば水を飲み、空腹を感じたなら食べ、寒さをしのぐために暖をとれば、すぐに満たされます。しかし、心の飢え、つまり渇望や苦悶は、複雑ですぐに解決されません。不安や悩みは、常に心の中に残っていてなかなか消えてくれません。それなら、過去現在未来と考え、まず過去は変えようもないから、現在と未来について考えます。前向きに考えるのです。未来を大切にするために、現在、努力することです。自分自身、相手、周囲の人々皆が幸福に過ごせることを願いつつ、努力することです。心をすぐに変えることはできませんが、忍耐強く前向きに努力していけば、必ず道は開けてきます。

以前、ダライ・ラマ法王は、忍耐を養うためには、敵が最良の相手であるとおっしゃいました。忍耐を学び、怒りをコントロールすることを、敵によって学ぶことができるというわけです。自分にとって心地よい知人や友人からは、忍耐を学ぶ機会はありません。忍耐を養うことは、心と関係しています。忍耐を養うことは、それは心の三毒を消滅させるよう努力することで成り立つのです。心の修行は、日常生活と深く関係しているのです。

質疑応答

自分の体質は、どのように知ることができますか。その方法を教えてください。
(ドクター・ダワ)

ご自分の体型、顔色、性格を三大体液のルン、ティーパ、ペーケンの特徴と照らし合わせてみることです。チベットの医者が診断すれば、その人の性格や生活態度を見てすぐに、その人の体質を当てることができます。

チベット医学では、歯科の治療はどのように行っているのでしょう。
(ドクター・ダワ)

一七世紀頃に描いた医学タンカには、歯の治療などを盛んに行った絵が描かれていますが、その後、徐々に歯科治療は衰えていったようです。歯痛止めに、歯に薬油を塗ったり、薬を服用したりします。その他、化膿止めの薬、歯を丈夫にする薬草があります。

アトピーなどのアレルギーの原因は何でしょうか。西洋医学では、薬や治療の副作用などもあるようです。チベット医学では、どのようなアレルギー治療がありますか。
(ドクター・ダワ)

チベット医学での治療法はあります。まず、原因をつきとめ、薬草を調合します。チベット医学によれば、皮膚病のほとんどは、関節にあるルンが原因しており、血液とも混ざっています。酸っぱいものや体に合わないものを食べてルンに変化が起きると、ルンと血液の混ざる量が限度を超え、何らかの皮膚病が生じます。

現在、私たちは化学肥料を多く使った食物を食べなければなりません。このことについて何かアドバイスはありますか。また、熱性の食物、寒性の食物の見分け方を教えてください。
(ドクター・ダワ)

まず、化学肥料や農薬を使った食物についてですが、体にとって良くありません。先進国は同じ問題に直面しています。それで、最近では化学肥料の害を知って、高価な有機野菜や無農薬野菜などを買う人もいます。化学肥料の効力の裏には、副作用があります。化学肥料や農薬を使った野菜や果物を食べ続けると、その害は体に蓄積され、いつか影響が出てきます。最近、自然食について見直されていることも、多くの人がそうしたことを知りつつあるからでしょう。

次に、食物が熱性か寒性といった場合、熱性の効力、寒性の効力があるということを指しています。例えば、寒性の食物のほとんどは「甘味」のある食べ物です。なぜなら、「甘味」には、五大元素の「地」と「水」の効力を多く含んでいるからです。「甘味」と言っても、決して砂糖などの甘味類だけでなく、小麦粉、米なども含まれます。さて、熱性の食物には、唐辛子などの香辛料、「辛味」が挙げられます。これらは、五大元素の「火」と関係しています。また、玉葱、ニンニク、ショウガなども熱性の野菜です。寒性の野菜でも、香辛料を使って炒めるなどの調理をすれば、熱性が加えられ、バランスがとれます。

体質を変えることによって、心も変わるのでしょうか。逆に、心を変えることによって、体質も変わるのでしょうか。心と体の関係を教えてください。
(ドクター・ダワ)

チベットには、「体を良くするのも悪くするのも心」という諺があります。体は、心に大きく左右されます。病気を引き起こす原因の中に食生活によるものと、生活態度によるものがあります。生活態度にも、身体の生活態度、言葉の生活態度、精神の生活態度の三つがあります。食事にしても、食べる前に、何を食べようかとまず頭の中で考えますね。それから行動に移します。それらはすべて心で行われているのです。心が三毒で乱れていると、食事も乱れ、体に害を及ぼしてきます。そして病気になれば、そのことでまた心の苦しみが増幅されます。そういう意味で、まず心のありかたがいかに大切かお分かりでしょう。

この4回にわたる「チベット医学」シリーズは、チベットハウスジャパン主催で行われた「チベット医学入門」(2003年2月)「生活の中に生かすチベット医学」(2003年7月)の講座内容の録音をテープ転書し、和訳し直したものをさらに読者に分かりやすく編集したものです。

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