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ドクター・ダワの「チベット医学入門」第3回(講義2日目午前)

ストレスによる現代病 ― 5大元素のアンバランスが原因

さて今日は、現在世界中で1番深刻になっている精神的な問題(ストレス、睡眠障害、パニック症候群、不整脈など)について話したいと思います。現在、経済の有無に関係なく、世界中どこの国でも精神的な問題は悩みの種になっています。

チベット医学では、精神と体は互いに深く関わっていると考えます。チベット医学は、大きく分けて3つの観点から成っています。第1は薬による治療、第2はアドバイスによる治療、これは精神と体をいかに安定させるかを着眼点とします。そして第3は病気予防についてです。以上の3つの観点を理解するには、精神と体がどのように関係しているか、そのしくみを知ることが必要となります。

さらに、チベット医学では、病気の原因をすべて5大元素によって説明します。5大元素は様々な要素を持つエネルギーです。この世にあるすべては、5大元素で成り立っています。体が成長するのも、この5大元素によるものです。受精からの体の形成と成長過程、食生活、生活習慣に至るまで、5大元素のバランスがいかに必要か、さらにそこに精神がいかに関連しているかを理解しなければなりません。5大元素のバランスが崩れると、病気が生じます。つまり、病気の予防とは、そのバランスをいかに保つかということです。

5大元素をバランスよく保つためには、まず普段の食生活と生活習慣に留意しなければなりません。味には、6つの種類があるとチベット医学では分けます。これらの6つの異なった味は、摂取され、体内部で8つの効力となります。さらにそれから、17の特性(ヨンテン)が生じます。これらもすべて、5大元素から成り立っています。

5大元素とは、地、水、火、風、空の5つです。例えば地ですが、地面や土を連想したら間違いです。地とは、地が持っている効力のことを指しています。火の元素についても同じで、火そのものではなく、その効力である温かい温度などが火の元素と関係しています。「体内部に火がある」といっても、火そのものがあるのではなく、「体内部に火の効力がある」という意味で、体温を指しているのです。

チベット医学では、体温は胃と深く関わっているとみなします。胃の熱は、食生活の内容によって、時には上昇し、時には下降します。例えば、暑い季節に我々は寒性の性質をもった食べ物をずっと食べ続ければ、胃の熱が壊され、体のバランスが崩れます。そのような意味で、チベット医学では、4つの季節の変化に合わせて食物を摂取することが大切だと教えています。前にも申し上げたように、氷水は空腹状態の胃には、胃の熱を奪う最悪のものです。胃の熱が奪われると、特に脂っこいものを食べると、消化がスムーズに行われません。簡単な例を申し上げますと、温かい手と冷たい手の中に氷を置いた場合、温かい手の中のほうが氷が早く溶けます。冷たい手の中の氷は、溶けるのにとても時間がかかることでしょう。胃の消化もしかりです。健康を保つために、食べたものが胃によって充分に消化され、栄養素として体のすみずみにまで吸収されることが必要です。そのためには、何より胃の状態が良くなければなりません。そしてそれを維持するために、季節に応じた食事をすることが大切なのです。胃の熱は、体温、つまり火の元素と関係していますので、それを考慮しながら食生活で火の元素のバランスを保つことが重要です。食物にも、寒性のもの、熱性のもの、中間のものの3つがあります。季節の変化と個人の体質に応じた食生活が、健康の秘訣と言えるでしょう。

一部の障害のある人を除いて、ほとんどの人は健康に生まれてきます。病気は、後から発生してくるものが多いのです。チベット医学では、食生活と季節のアンバランス、5大元素のアンバランスによって病気を生じさせるとします。ですから、治療も5大元素のバランスを取り戻すことを目的とします。人間が死に近づいた時、5大元素の力がそれぞれ弱くなります。外部(私たちの体を取り巻く環境世界)の5大元素と内部(私たちの体)の5大元素は深く関係しています。外部の5大元素が変化すると、内部の5大元素にも変化が生じます。例えば、1日の変化は、外部の5大元素の変化を表します。朝が涼しいのは、5大元素の中で地と水が優勢であることを表します。また、昼が暖かいのは、火の力が増大し、地と水の力が減少したことを表します。夕方では、風が優勢となります。四季の変化についても、5大元素の増減の変化があります。

チベット薬 ― においの強さは効き目の強さ

チベット医学には、病気を治療するために13種類の薬があります。においが強い時、薬の効力が1番良いということになります。においが少ない場合、薬としてあまり効力がないことを指しているのです。さらに調合法によって効力も異なってきます。

前回、「高貴薬(リンチェン・リルプ)」は、鉱物の強い毒性を消し、つまり解毒してから調合することを述べました。そうしたチベット独自の解毒方法が、現代技術を取り入れて果たしてどのくらいのレベルになっているものなのかが現在研究されています。

チベット医学の薬には、少なくとも3種類、多くて35種類の薬草が調合されています。「高貴薬(リンチェン・リルプ)」はなんと140種類もの薬草を調合しています。様々な薬草を調合し、体の5大元素の調和をはかるためです。1つの薬草を単独で使うと、特定の疾病や場所には効果があっても、他の部位に副作用が起きる可能性があります。チベット医学では、単独の薬草のみを扱うことはあまりしません。

チベットの薬の形態には、丸薬、粉薬、液薬、薬用バター、薬用酒などがあることは述べました。薬用バター(メンマー)は滋養があり、体力を消耗して衰弱したり疲労したときに用います。メンマーは塗ることも稀にありますが、口に含んだり舐めたりします。チベットではよくお産の時に、妊婦にメンマーを与えます。薬用酒(メンチャン)は、薬草とまじえて使用し、気持を和らげ、ストレス解消に効能があります。

お酒 ― 飲むなら少量を

薬用酒(メンチャン)がでたところで、ちょっとお酒についてお話しましょう。確かに、お酒はストレス解消に効きます。特に疲れた時などにお酒を少量飲むと、疲れがとれ、ぐっすり眠れます。しかし、酒酔いには、3つの悪い段階があります。最初の段階は「酔った状態」で、悩みや苦しみが消え、とてもいい気持になります。第2段階は「酔っ払った状態」で、現実を穿き違え、間違った思考や感覚に陥るものです。例えば、借金しているのは自分なのに、貸した気になるという感覚です。そして、普段の人格が一変し、騒いだり泣き喚いたり喧嘩したり、普段やらないことをしてしまいます。第3段階は「泥酔」で、意識が朦朧となるものです。酒は百薬の長と言われますが、これらの3つの悪い段階になると、飲みすぎていることになり、体に火の元素が増大してバランスを崩していることになります。体に火の元素が増大すると、肝臓や血圧などに問題が生じることになります。お酒はストレス解消になるからといって飲みすぎると、その時点ではストレス解消というプラス要素があっても、他方でマイナス要素があるのです。日本ではアルコール摂取量が多いようです。お酒の量を少し減らすことが健康のために良いでしょう。お酒に限らず、食物でも過度の摂取は内部の5大元素のバランスを崩すことになり、健康を損ねてしまいます。

温泉 ― 季節と5大元素のバランスを考えて入浴

さて、お酒だけでなく、日本人に馴染み深い温泉について、チベット医学の見地から述べたいと思います。チベット医学では、水にもいろいろな種類があるとみます。温泉は、5つの種類に分類されます。温泉が湧き出る場所の岩石や含まれるミネラルによって異なります。日本には温泉の数が多く、日本人は温泉に入るのも大好きなようです。温泉に入るにしても、チベット医学では季節、個々の体の状態、環境などを考慮します。温泉に含有されているミネラルの種類、湯の温度、そういった事柄でも効力が変わります。硫黄が多く含まれている温泉は、臭いも強烈ですが、温度も高いです。この類の温泉は、リュウマチ、関節炎、皮膚病、冷え性などに効能があります。しかし、熱性の病気、例えば黄疸、高血圧、心臓疾患の人には、お薦めできません。チベットでは温泉に入る季節として、春と秋が効能ありとされています。ここでも5大元素を考慮して、温泉の効能を考えています。

「意識」 ― 永遠に続くこの秘めたる力

前にも説明したように、チベット医学タンカは、「四部医典」の内容に基づいて描かれたもので、チベット医学を勉強する人には大変分かりやすい3考書のようなものです。チベット医学タンカで描かれた絵をひとつひとつチェックしながら、膨大な数に及ぶ「四部医典」の説明書である教典を学ばなければなりません。

人間の体が成り立つための必要な要素として、まず精子と卵子に問題がないこと、5大元素に問題がないこと、そして健全な「意識」です。この3つが揃って初めて、人間が形成されるのです。チベット医学で言う「意識」は、永遠に続くものであり、なくなることはないとされます。ですからチベットでは、肉体は滅んでも、意識、精神は滅ぶことはないと考えます。つまり、私たちの肉体は家に喩えられ、意識は1つの家からもう1つの家へ移るのと同じだと説明しています。肉体は変わっても、意識はいつまでも続くとします。意識、精神、心というものは、目で見ることもできなければ、手で掴むこともできません。しかし、私たちの中で物凄い力を持つものなのです。

質問

日本でチベット医学を勉強するためには、どのような方法があるでしょうか。ダラムサラまで行って勉強するしかないのでしょうか。

確かに日本には、チベット医学を勉強するための特別な環境はないようです。それで私たちもどうすれば良いか考えているところです。チベット医学を本格的に勉強するなら、ダラムサラのチベット医学・暦法学研究所(以下、メンツィ・カン)が1番良いでしょう。しかし、短い期間でチベット医学を修得することは無理ですが、健康のために勉強しようと思うなら、チベット医学関係の書籍を読むのも良いですし、実際にダラムサラまで行ってチベット医学の医者たちの話を聞くのも良いでしょう。

本格的にチベット医学を学ぶ場合、チベット語をマスターしていなければなりません。全くの初歩だと、マスターするためには少なくとも現地で3年間はかかるでしょう。チベット医学はチベット語で書かれているため、チベット語ができることは必須なのです。チベット語をマスターしたら、メンツィ・カンの語学試験や適正検査を受け、合格して入学となります。メンツィ・カンの授業は、チベット医学の講習が5年、臨床が1年、合計6年です。

ぼけ防止にどういったことがあるでしょうか。

年をとると内部の5大元素のエネルギーが弱まり、体の機能や感覚、記憶力などが低下してきます。このように徐々に老化していくわけです。これはチベット医学では、若年、中年、老年と区分けして考えます。若年はペーケンが優勢、中年はティーパが優勢、老年はルンが優勢で、老化にはルン・ティーパ・ペーケンの3体液が関連しているとみます。

ボケを全く防止する方法はありませんが、薬、食事、日頃の考え方などによって、ボケを改善することはできます。また、オイルマッサージ療法などもあります。

伝統医学と西洋医学が近づきつつあります。しかし、伝統医学の中の、科学で解明されない部分が削除され、伝統医学そのものが変わってしまうことはないでしょうか。

チベット医学の特長を残しながら、西洋医学といかに結びつくかは重要な課題です。現在、伝統医学(東洋医学)は、西洋医学と共に研究を続けながらも、その独自性を守っています。しかし、伝統医学に西洋医学を混合したら問題だと思います。チベット伝統医学の独自性という点からみても、よくありません。しかし、西洋医学が発展し変化していくにつれ、伝統医学も内容を充実させ、改善していくことは大切だと思います。例えば、飲みにくい薬を飲みやすくすることも大切でしょう。

人間の体の7割は水分です。1日何杯ぐらいの水を飲むのが、体に良いでしょうか。

チベット医学では、人間の体は5大元素によって成立しているとし、体の何割かが水分でできているというふうには考えません。夏は5大元素の火が優勢になるので、水が1番必要となります。体に水が不足すれば、血が濃くなって病気が起きる可能性があります。夏は水分を多く摂取したほうが良いです。チベット医学では、腎臓結石は夏場の水分不足で徐々にできると考えます。反対に、冬は、5大元素の地が優勢になり、火の力が減少しています。冬に水をあまり飲まなくとも悪影響はありません。それどころか、冬に水分をあまり摂り過ぎると、腎臓と膀胱に負担をかけることになります。春と秋は、水分を適量に摂ることが大切でしょう。

夏場の水分は良いですが、氷水はあまり飲んではいけません。夏場の氷は、自然のものではないのです。飲む瞬間は、冷たく美味しいですが、胃の消化にとってもよくありません。夏の暑い季節の時、冷たい水をいくら飲んでも満足することはありません。また、喉が乾いていきます。体にとって1番良い水とは、体温にあった自然水(白湯)を飲むことです。季節にあった量の白湯を飲み続けることは、とても健康に良いのです。

チベット医学は占星術との関わりが大変深いことと聞いています。実際、治療に携わるにあたり、どのように占星術を重視しているのでしょうか。

チベット医学と占星術の関係について簡単に申し上げましょう。チベット医学で使用する薬のほとんどは、植物の葉、種、木、枝、根などが原料です。占星術で計算して、原料の植物を採る時期を決めます。特定の病気には、原料の植物を採る日、薬を飲む方法まで決まっているのです。そうすることによって、植物の効力を最大限に発揮させるのです。季節によって脈も変化します。そういったことも占星術によってわかります。瀉血やお灸などを行う時も、季節ごとの変化はもちろん、その日、その日によって変化しますので、これも占星術によって調べます。月ごとに体は変化しますし、占星術で魂「ラ」が体内のどの部分に位置しているのかを知る必要があります。「ラ」がある部分に瀉血やお灸を行うと、危険だからです。このように、チベット医学と占星術は深い関係にあります。

どのくらいの休みをとるのが最適でしょうか。

その点については、多少の違いはあるにせよ、人間も動物も変わりはありません。昔は人間も、日の出と共に起き、日没と共に寝るものでした。暗くなれば、寝るのが普通だったのです。現代の日本人は働きすぎと聞きますが、それは体を動かして働くということよりも、頭脳労働、つまりメンタルな部分を酷使していることではないでしょうか。1日朝9時から午後5時までの時間労働が一般的でしょうが、中には12時間、14時間も働く人がいますが、これは働きすぎかもしれません。帰宅しても、食事中も仕事のことばかり考えると、精神が疲れ、ストレスが溜まることになります。そうなると、働き過ぎと言えるでしょう。これでは到底、体が持ちこたえることはできません。

日本では、過労死がありますね。しかし、チベットでは、働きすぎて死んだなんて話は聞いたことがありません。チベットでは、有り得ない話です(笑)。
チベットに次のような諺があります。
「心はああしようこうしようと動こうとするが、休息したい体はそんな心についていけない」

1日8時間ぐらい働いて、それ以外は心も体もゆったりと休息をとることが大切でしょう。そうしないと、健康を損ね、寿命が短くなります。働きすぎて休息をとらないと、ストレスが溜まり、体の中でルンが増大します。ルンは精神と直接関係しているからです。睡眠不足、食欲減退、消化不良になり、徐々に体のバランスが崩れます。体のバランスが崩れると、病気になります。

働きすぎは日本だけではありません。先進国では同じような問題を抱えています。現代において、産業が発達し、昔と比べてずいぶん物資的に恵まれた生活を送れるようになりました。しかし、精神面、心の面の負担、重圧は日に日に深刻になりつつあります。社会における人間関係もドライなものになり、家庭も例外ではなく、ぎくしゃくするようになりつつあります。これでは疲労が溜まるだけではなく、精神的に大きなダメージを受けることになりかねません。以上の点から見ても、常に精神と体のバランスを保つことがいかに重要か、そのことを考慮しながら休息をとるようにすることが大切かお分かりでしょう。


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