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ドクター・ダワの「チベット医学入門」第2回(講義1日目午後)

三大体液の作用

午後の部を始めたいと思います。79枚あるチベット医学タンカ(仏画)の中の1枚に、2本の幹が描かれているものがあります。健康な体を表した幹(健康な幹)とバランスを崩した不健康な体を表した幹(不健康な幹)です。健康な幹は、人間の体を成り立たせるエネルギーのようなものであるルン、ティーパ、ペーケンの三大因素のバランス、つまりそれらの三大要素が体で正しく機能することが健康な体の条件となります。青色はすべてルン、黄色はティーパ、白色はペーケンを表しています。不健康な幹にはそれらのアンバランスな状態が描かれています。ルンティーパペーケンの三つのエネルギーは、五大元素(地、水、火、風、空)と結びついています。例えば、ルンは風の元素、ティーパは火の元素、ペーケンは地と水の元素と結びついて成り立っています。

ルンは、人間の体の動きそのもの、血液の循環、呼吸、つばを吐く、喋る、考えごとをする、消化と排泄作用、月経や妊娠などを司る働きがあります。さらに手足を伸ばしたりすることなどもルンの働きによるものです。ルンは、感情(心)と非常に密接な関係にあります。辛かったり悲しかったり、意気消沈したりすると、心に深く作用し、体の中にあるルンが増大します。そしてルンの増大が原因で、ルンのバランスが崩れ、次第にルンと関係のある五臓六腑を攻撃し、病気になるのです。

ティーパは、体の中で熱を作り出す働きがあります。血の色、体液の色、あらゆる色を作る働きもあります。また、勇気や自信が湧き出るのもティーパが活発に働いている証拠です。

ペーケンは、体の安定を保ち、睡眠の調整、人間の体の湿った部分、関節の動きなどを良くする働きがあります。

健康な食生活 不健康な食生活

摂取する食べ物でルン、ティーパ、ペーケンのバランスを保ちます。食べ物を六つの味の要素、つまり甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味に分けます。チベット医学では、それぞれ味で分類される食物が関連する五大元素から成り立ち、その効力を含んでいると考えます。

これら六つの味の食物をバランスよく取ることによって、健康な体をつくることができます。そして各自が自分のルン、ティーパ、ペーケンのどの体質かを知り、その体質に合ったものを食べ、住んでいる地域の「性質」*(温帯熱帯寒帯、高地低地、山陸部海沿いなど)を把握し、四季の「性質」*を考慮することによってはじめて心身ともに健康な状態になるのです。

*註「性質」・・・五大元素に合わせて考えた場合の性質

この反対に季節などを考慮しない食生活は体を害することになります。例えば、日本のレストランでよく冬の寒い時期でも氷水を出したりしますが、これは非常に健康に悪い習慣です。胃の熱を奪われ、消化する力が弱まり、人間の体を作り出すエネルギー自体も生れません。また下痢を引き起こすなど排泄にも不安定な作用を引き起こします。また体全体の熱も失われ、腎臓の病気を引き起こす可能性もあります。チベット医学の教典では、夏でも氷水を飲んではいけないと書いてあります。自然状況から考えても夏の暑い季節に氷などありません。夏の氷水は人間が作り出したものです。たしかに、暑い季節に氷水を飲むと涼しくなり爽快かもしれません。しかし、チベット医学では、病気には潜伏期間と発症期間というものがあるとし、一時的には良くても、潜伏期間が病気を引き起こす悪い要素がどんどん蓄積されていく状態であることを認識しなければなりません。チベット医学では、胃の熱が健康にとって非常に大切なものと考えます。夏に氷を食べると胃の熱が失われても、戸外が高温のためすぐには自覚症状が現れません。胃の状態があまりよくない上、さらに冷たい清涼飲料水などを飲んだり、アイスクリームやカキ氷を食べたりすると、体が冷えてしまいます。確かに日本のように夏が厳しい地域では、暑さをしのぎやすいものにするためにある程度の涼をとることは必要かもしれません。しかしチベット医学の観点から見ると、年間通して、真冬でさえも、氷水や冷たいものを常飲することは病気を引き起こす原因のひとつになり得ると言わざるを得ません。

チベット医学タンカでは、健康の幹の上に二つの花が描かれています。ひとつが長寿の花、もうひとつが無病息災の花です。この二つの花の上にさらに三つの実が描かれています。ひとつめの実は、この二つの花、つまり長寿と無病息災によって仏教を勉強する時間を得られることを表します。次の実は利益(りやく)、そしてもうひとつの実が解脱を表します。

病気

ここで、チベット医学タンカで描かれている不健康な幹について少しご説明しましょう。病気になる根本原因である煩悩、怒り、無知が葉で示されています。さらにこれらの原因のもととなるものに、時、悪霊、食べ物、生活習慣の四つが示されています。そして引き起こされた病気の経路が示されています。皮膚に広がり、肉に拡散し、脈管(血管あるいはルンの経路)を通って骨へ、そして五臓から六腑に病気が広がります。

ルン、ティーパ、ペーケンの作用は、世代や時節による違いがあります。例えば、子供はペーケンが優勢、青年はティーパが優勢、老人はルンが優勢です。時節では、ルンは夏、夜明けと夕暮れ前に優勢となり、ティーパは秋、日中または夜中に優勢となります。そしてペーケンは、春、早朝と夜に強くなります。

ルンの病気を治す場合においても、必ずティーパやペーケンも考慮に入れて治療しなければなりません。つまりルンを治すためにはそのルンの悪い作用をティーパ、ペーケンなどに転換してしまわなければならないのです。ですから食物や場所なども考慮にいれなければならないのです。ティーパにおいてもペーケンにおいても同様です。
チベット医学では1600種類の病気が挙げられていますが、それらは全てルン、ティーパ、ペーケンの三つの特徴を持つ症状に集約し説明しています。「熱性」の病気はティーパが関係していると考えられ、「寒性」の病気にはルンとペーケンが関係していると考えます。故に、「寒性」の病気なら「熱性」の薬を処方し、「熱性」の病気なら「寒性」の薬を処方します。

「荒い」性質を打ち消すためには、「なめらかな」薬を処方する必要があります。ルンは「軽い」という性質を持っており、その「軽い」性質を打ち消すためには、「重い」性質の薬を処方する必要があります。このようにルン、ティーパ、ペーケンの特性を理解し、薬を処方します。

さて、ルン、ティーパ、ペーケンは五臓六腑や体の作用とどのように関係しているのでしょう。ルンが引き起こす症状は主に、皮膚、心臓、大腸、ペーケンは肺、胃、腎臓、ティーパは肝臓や胆嚢によく現れます。

ルンが引き起こす症状は一番深刻かもしれません。ルンは心と密接につながっているからです。日々の仕事や人間関係のストレス、将来の不安、恐怖などの感情が原因となってルンが過剰となり、病気を引き起こします。このルンの関連する事柄は、現代社会において人々が最も身近で関心のあるものでしょう。ルンを抑制するためには薬だけに頼るのではなく、食生活、生活習慣を改善します。チベットでは生活習慣を体、言葉、心の三つの大きな要素として考えます。つまり、体の生活習慣、言葉の生活習慣、そして心の習慣(持ち方)を注意することによって、バランスを保つことができると考えます。例えば、体の生活習慣の点から言えば、食事をすることも忘れて仕事に没頭しすぎてしまう。心の習慣の点から言えば、家でも仕事のことばかり考えている。言葉の点から言えば、喋りすぎたりするなどが挙げられます。こうして三つの要素が過剰することでルンが過剰し、ルンが引き起こす症状を発症することになります。こうして慢性的な不眠症、消化不良、下痢、便秘、ルンと関係している部位の血の巡りが悪くなりコリがでる、わけもなく突然怒り出してしまう、足腰の間接が痛む、耳鳴、心臓の病気など、現代社会では主にルンによる病気が深刻になっています。チベット医学でも、ルン、ティーパ、ペーケンの中で一番病気を引き起こす原因となるのはルンと見ています。

診断

チベット医学の診断では、まず患者の舌が何色か、どういう状態かを診ます。さらに目の状態、顔や体の色や状態などを注意深く診ます。

次に脈診です。チベット医学では脈診を最も大切な診断のひとつとして考えます。脈は、患者と医者を結びつけるメッセンジャーの役目を果たしています。チベット医学教典では、脈の打ち方には80種以上あると説明されています。脈診には人差し指と中指と薬指の三つの指のみを使いますが、複雑な決まりがあります。例えば、医者は指の上方部分を患者の手首に当てて、五臓(心臓・肺・肝臓・腎臓・脾臓)の状態を診ます。そして指の下方部分で六腑(胃・大腸・小腸・胆嚢・膀胱・精嚢)の状態を診るのです。脈を大きく分けると、男性脈、女性脈、菩薩脈(男性と女性の中間脈)の三つとなります。脈を診る時間帯も大切です。チベットでは日が昇りまだ土が温まっていない時間帯、つまり朝(六時から八時)が最も適していると言われます。脈を診て、患者の体質を「熱性」か「寒性」かに分けます。病気自体や症状の段階においても、「熱性」と「寒性」に分けます。寒性と熱性をしっかりと判別した後、五臓六腑のどこに障害があるかを診ます。

次に尿診です。尿の状態を大きく三つに分けると、暖かく湯気が立っている状態、温くなった状態、冷たい状態があります。色、濁り、泡、立ち上がる湯気などの状態を見ます。

そして問診です。普段どのような食生活を送っているのか。どのようなものを食べたのか。どのような痛みがあるのか。何を食べれば治るのか。何を食べてはいけないのか。そういった事柄を問診し、触診などを合わせて診察を進めていきます。

治療法

チベット医学タンカでは、チベットの四大治療法、つまり食生活、生活習慣、外的治療、薬方の四つが大きな幹で描かれています。例えば、食の幹には、ルンの患者がどのような食べ物や飲み物を摂ればいいのかを表しています。確かに描かれている食物は当時の人たちが実際に食していたもので、時代や国による違いも考慮しなければならないでしょう。チベットの四部医典は一五六章ありますが、その中で三章が食物の説明や効力について詳しく説明されており、さらに三章が養生訓(なすべき生活習慣)についてことこまかに記述されています。

食生活

チベット医学では、すべての食物は六つの味から成り立っていると考えます。これらの六つの味は五大元素から成り立っています。六つの味と五大元素をしっかり把握すれば、それぞれの食べ物が一体どういう効力を持っているかを知ることができます。五大元素によって六つの味がどのように作り出されるかは後から説明することにして、三大体液が引き起こす病気に効く食物について述べましょう。

まず、ルンが引き起こす病気(ルン病)には、一年以上熟成させた馬肉や羊肉、熟成バター、玉葱、ニンニク、ヨーグルトが効果的です。「重い」「油性」の性質を持った食物は、ルン病に効力があります。

次にティーパですが、ティーパは五大元素の「火」から成り立っていることから、熱性の元素を持っており、ティーパ病にはティーパの性質を軽減するために「冷たい(寒性)」性質を持っている食物を摂ることが大切です。

最後にペーケンは、五大元素の「地」と「水」から成り立っており、ペーケン病には冷たい症状があります、この場合、それを緩和させるために「温かい(熱性)」性質の食物を摂らなければなりません。

さてここで日本の食材を例に「熱性」「寒性」の食物について述べましょう。牛肉、羊肉、鶏肉、魚などは「熱性」のものです。豚肉は「寒性」です。野菜類はほとんど「寒性」ですが、ニンニク、ショウガは「熱性」です。「熱性」にも「寒性」にも属さない「中性」の野菜は、ニンジン、大根、キャベツ、竹の子などです。ジャガイモは「寒性」で、腎臓の悪い人、消化不良の人は食べてはいけません。生野菜など生ものもいけません。もし、「寒性」の体質の人がどうしても「寒性」の食物を食べたい場合、例えば夏の暑い季節に摂取すればよいでしょう。

さて、「寒性」「熱性」とは、触感で言うのではなく、本質において「寒性」と「熱性」という意味です。野菜にも生野菜と煮野菜には違いが生じます。さらに調理において「寒性」もしくは「熱性」の香辛料を加えればさらに変化がおきます。調理は、薬の調合とまさに同じなのです。調理で薬にもなれば毒にもなり、そういう意味において、食物を上手に扱う方法を知ることが大切です。

生活習慣

それぞれの体質に適切な生活習慣について少し述べましょう。例えば、ルンの体質の人にとって適しているのは、暖かくて静かな場所です。また気持ちが不安定で怒りっぽいので、親しい人たちとリラックスして語り合うのもよいでしょう。ティーパの体質の人は、川などの水のほとりや涼しい場所でゆったり過ごすことが大切です。ペーケンの体質の人は、適度な運動や日光浴を心がけたほうがよいでしょう。しかし、ティーパの体質の人は逆に日光浴は控えたほうがよいでしょう。具合が悪くなる一方です。

外的治療

次に、実際の外的治療ではどのようなものが適切かを説明しましょう。ルンの症状の人にはマッサージが効きます。ルンの症状のある人には体に病気のツボのようなものがあり、そこを指圧するとかなり痛みます。例えば、みぞおちや頚椎のあたりです。脊髄の6番7番の箇所、手足の平などにもツボがあり、そこにお灸をすると大変効きます。

ティーパの症状の人には、発汗療法、冷水浴、瀉血(しゃけつ)療法(針を刺して体内の滞った血を出す)などがあります。瀉血療法は、チベット占星術によって季節や時を認識して行います。瀉血は全ての患者に適切な治療ではなく、例えば妊娠中の女性などには決して行われません。瀉血の前に、患者に特別な煎じ薬(タン)を飲ませ、「濃い血と薄い血を分離」させます。

ペーケンの症状の人には、腹部のお灸が特に効果的です。その他症状に合わせて、塩、砂、薬草などを温めてそれを布に包んで置いたりもします。お灸はペーケンの症状の人には大変効果的ですが、ティーパや微熱のある患者に行ってはいけません。

薬方

ルン、ティーパ、ペーケンそれぞれの体質の人に合った薬の処方があります。チベットの薬には、丸薬、粉薬、液薬、薬用バター、薬用酒などがあります。

チベット医学の薬の成分には、伝統的には大きく分けると、薬草、鉱物、動物性の生薬の三つに分類されます。仏教がチベットに浸透するにつれ、動物性の生薬の使用頻度はかなり少なくなってきています。現在チベット医学で使われる薬の成分の98%は薬草類で、そのほとんどがチベットで採取した高山植物です。その他インドやネパールの薬草も使用します。鉱物は一%から二%で稀少です。

チベット医学では、特定の病気を除いて、単独で薬草を使用することはほとんどありません。患者の三大体液の体質や体力を考慮して処方します。薬草を単独に長く使用した場合、ティーパやペーケンに転換して副作用が生じる可能性が高いです。普通は少なくて三種類、多くて一四〇種類の植物から調合します。

ルンに効く薬に「アカル・ソガ」、日本ではジンコウ(沈香)と呼ばれているものがあります。「アカル・ソガ」は三五種類の薬草がルン、ティーパ、ペーケンのバランスを保ちながら調合されています。ルンの一般的な症状に効くほか、ルンの病気が発症しやすい心臓、胃、腎臓などにも作用します。欧米ではかなり知られている生薬です。

「タン」という煎じ薬は、風邪のひき始めに効力を発揮します。風邪のひき始めに悪寒が走ったりする時期をチベット医学では「熟していない風邪」と呼びます。つまりまだ風邪が完全に「熟していない」というわけです。ですから、この時期に一般の風邪薬を飲んでも効果はさほどありません。なぜなら風邪薬は「涼しい」性質を持っており、「熟していない風邪」をさらに熟させなくさせ、風邪を長引かせることになるからです。「タン」は、また熟していない風邪を熟させるという力を持っています。つまり風邪の症状を明らかにし、発症させるのです。そこではじめて風邪薬を正しく服用すれば、症状は体に残ることなく治ります。

チベット医学の薬の大きさにはいろいろあります。一回の服用が一錠か数錠かなどまちまちです。医者はこの薬に何が含まれているかをしっかり把握し、患者の体の状態を知ったうえで量を決めます。つまり、患者の体質に合わせて薬の量を増やしたり減らしたりします。

「高貴薬(リンチェン・リルプ)」についてご説明しましょう。「高貴薬」は八種類あり、何種類かの鉱物が調合されています。「高貴薬」の中の一番有名なものに「リンチェン・タンジョル」と呼ばれるものがあります。「リンチェン・タンジョル」とは寒性の病気に効く「高貴薬」という意味で、チベット薬の中でも一番数が多く、百四〇種類もの生薬が調合されています。鉱物には非常に強い毒性があり、調合前にその毒を消すという大切な作業があります。「高貴薬」は中国でも非常に広まっており、体質改善にも効能があります。高血圧にも低血圧、半身不随の病気などにも作用を及ぼします。また最近では一部の癌にも成果があったとの報告があります。


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