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人権侵害の現状(2018年10月版):①チベットの事例



宗教的抑圧と文化浄化

チベット仏教は、チベット人の生活の核をなすものであると同時に、文化的アイデンティティの基盤となるものである。しかし、中国政府はチベット仏教の僧院に制限を課す政策を打ち立てた。国家が宗教活動に介入することで、チベット人の宗教生活にも政府が干渉するようになり、チベット仏教の活動場所が制限されるようになった。僧院では伝統的な僧院教育が禁じられると、「愛国教育」がそれにとって代わり、僧侶や尼僧らに強要されている。

今年7月中旬、カム地方セルシュの中国当局は、僧院で暮らす16歳未満のチベット人僧侶を僧院から退去させ、政府が運営する学校への入学を命じた。ニュース報道によると、2018年7月10日、ザチュカのツェ・セルシュ僧院から200人もの幼い僧侶たちが退去されられた。もしも僧侶がこれに従わない場合は、僧院の運営者、僧侶の師僧、僧侶の親を罰すると当局が警告したとされる。当局はさらに、子どもの僧侶が僧院からの退去を拒んだ場合は僧院を閉鎖すると親たちを脅迫したと伝えられている。


ラルン・ガルの事例:世界最大の仏教僧院の解体と強制退去

世界最大の仏教僧院のひとつであるラルン・ガルでは、中国政府の指示の下、大規模な解体が行われている。2001年以降、同僧院はたびたび僧院の解体や僧侶、尼僧、在家信者を退去させるよう強く求められてきた。2016年6月、中国政府は同僧院に対し、推定1万人の住民を半数までに減少させるよう命じた。これにより、少なくとも4千8百人の住民が退去を余儀なくされ、住宅が解体された。住民たちは政府の命令を突然受け、事前に解体計画を知らされていなかったばかりか、法的な補償も与えられなかった。退去した僧侶や尼僧たちは、退去後には二度とラルン・ガルに戻らないこと、また故郷に戻った後にも地元の僧院に入らないことを記した誓約書に署名を強要された。

ビデオ映像によると、通信状態が悪いため、ところどころで途切れてはいるが、仲間の尼僧たちが強制的にバスに乗せられ故郷に送還される様子を見ながら、なすすべもなく嘆く尼僧たちを映し出している。中国政府が支援する軍隊のトラックが、僧院から僧侶や尼僧たちを次々と運び出していくなか、友人たちとの別れを強いられた僧侶や尼僧たちは、悲嘆の涙を流し、失神する者までいた。

一方、退去者たちは、愛国教育運動を強要された。チベット人尼僧たちは軍服を着せられ、「中国人とチベット人は同じ母の子どもたち」という歌を唄わされる様子をビデオ映像が伝える。別の映像では、ラルン・ガルを退去されられたチベット人尼僧たちが、ステージ上でポップソングに併せて踊っている。これは僧院の戒律に違反するものであるが、それだけでなく、尼僧たちにとってはこの上ない屈辱である。チベット本土から入手された画像からは、強制収容所に身を置く退去者たちの様子がうかがえる。これもチベットにおける文化大革命の復活といえる。

三人のチベット人尼僧たち(リグジン・ドルマさん、ツェリン・ドルマさん、センガさん)は、僧院が破壊されたことにショックを受け、自死を遂げた。その遺書には、僧院の解体や中国政府によるハラスメントなどが綴られている。


僧院の運営管理

共産党政権の民主化管理委員会(DMC)は、各僧院の僧院長らから、伝統的な僧院管理者としての役割を奪った。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2011年11月以降、中国当局が1787カ所の僧院で僧院管理委員会を設置したと報じた。この委員会は、国家が認める「愛国者」である僧侶や尼僧、政党幹部、政府関係者から成り、「信頼のおける」チベット人の当局者が含まれる場合もある。委員会は、僧院の管理や、「愛国教育」に基づく規則や規制を僧院に課す任務を担い、中国政府とチベット仏教僧院の連携役となり、僧院の活動や、僧侶や尼僧たちの活動を監視するものである。

2015年に亡命チベット人が入手した漏洩文書から、僧院での抑圧のレベルがこれまでに類を見ない新しいレベルに達していることがわかる。「宗教施設の整理改革を集中・強化する必要性に関するドリル郡人民政府の通知文(一時的実施について)」と題する文書によると、チベット仏教僧院を中国政府事務所に改変し、僧院所属者たちを中国共産党員にする体系的な取り組みが読み取れる。また、宗教施設を改革する活動に関する規則が記載されており、より良い転生のためや高僧たちのために捧げられた寄付金収入などをはじめとする宗教施設における金銭的活動のすべてを中国人当局者が管理することになる。ドリル郡のすべての僧院において、毎週木曜日に僧侶や尼僧たちは政治教育の講習に出席することが義務付けられている。中国人当局者らは僧院の財産をすべて記録し、物品の在庫管理や修繕についての決定権を一手に担うことになる。


愛国教育

愛国再教育(または単に愛国教育ともいう)は、当初、犯罪や汚職を撲滅するための中国政府の「強硬」運動の一環として、1996年にチベットで開始された。それ以降、現在まで、この運動はチベットの最端地にいたるまで、チベット全土に拡大を続けている。この運動の核となるメッセージは「国家への忠誠心は良き僧侶や尼僧になるための基本的な条件である」というものだった。この運動のもと、中国人と「信頼のおける」チベット人当局者たちから成る作業チームは、僧院や尼僧院を訪れては僧侶や尼僧たちにダライ・ラマを非難させ、審査を行い誓約書に署名させ、共産党政権への忠誠を宣言させている。さらに、愛国再教育運動の「所持義務9種」制度のもと、すべての僧院や尼僧院で中国共産党指導者の肖像画の掲示や中国国旗の掲揚を義務付けられている。これに反する場合や作業チームの要求に従わない場合は、退去、逮捕、拷問などが待っている。


国家宗教事務局令第5号

2007年1月、国家宗教事務局は、新たな規則として、国家宗教事務局令第5号「チベット仏教活仏転生管理弁法」を発表した。チベット仏教高僧の全ての転生に対して、政府の承認を得なければ違法または無効であるとするものである。この法の第2条は「活仏の転生については、国外の一切の組織および個人はこれに介入しないものとする」とし、第7条は「宗教儀式および歴史的に確立された制度に従い、地方政府または自治政府の仏教協会または中国仏教協会の承認を得なければならない」としている。




(翻訳:植林秀美)

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