3日目 大阪・高野山における法話/日本には勇気と復興力がある

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2011年10月31日

今回のダライ・ラマ法王の来日目的は、大震災に見舞われた日本人とその苦しみを分つことにある。法王は、第二次世界大戦後に灰の町から見事に国を復興させた時のように大震災に立ち向かう日本人を讃えた。

この日、高野山大学の創立125周年記念の催しに参加されたダライ・ラマ法王は、講堂を埋め尽くした若い僧侶との対話に臨まれた。「友として、そして仏陀を信奉する同胞として、大震災による苦しみを共有することができてよかった」と法王は語った。

日本がこのような自然の猛威に苦しむことになった理由について問われ、法王は、継続する地球の進化、地球の温暖化、そして前世の悪行などいくつかの理由があるとお答えになった。しかし、社会が一つになって功徳を積むことで前世の悪行は浄化される。他者の幸福を願うよう心がけることが大切だと、法王は付け加えられた。「しかしこれだけははっきりしている。現世の苦しみや争いは人類が生み出したものだ。」

平和な心や真の幸福を得るにはどうしたらよいか、との問いについて法王は次のようにお答えになられた。「感覚的に得られる満足や、自分だけの利益を追求して得られる満足は刹那的なものだ。真の心の平静や幸福は人類の知恵や愛、慈悲の心や他人の幸福を願う心を積極的に活用してこそ得られるのだ。」人類は知恵を使うのに長けた生き物であり、疑念や失望といったネガティブな感情を生じやすいのもそのためだ。しかし反対にそれを他者の幸福のために用いれば、自分だけでなく他者をも幸福にする自信を生み出す、と法王は説明された。

法王は20世紀後半から関心が高まってきた心の研究についても言及された。平穏な心の持ち主は、個人、家庭、社会、世界といったあらゆるレベルにおいて健全な状態にある。科学者らによって科学の一分野として捉えられてきた仏教は、心の平静を得るために重要な役割を果たせるのだ。ダライ・ラマ法王は、次世代のためにも日本の教育機関が心と世俗倫理に関する研究を始めるべきだと繰り返し述べられた。「必ず何かポジティブな結論にたどり着くはずだ。」

法王はこのイベントに先立ち、深い緑がうっそうと茂る高野山の高台にある金剛峰寺を訪れた。日本人のグループが法王に挨拶をするために先を争うように駆け寄った。感極まった年輩の方たちが数名法王の前に跪いた。寺では法王のために茶の湯の会も催された。法王は明日から2日間の日程で金剛界マンダラ灌頂に臨まれる。


 (翻訳:中村高子)

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