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2期目のセンゲ主席大臣、5/50戦略を発表

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2016年5月27日
ダラムサラ

 

ロブサン・センゲ主席大臣は本日、ダラムサラのツクラカンで行なわれた2期目の主席大臣宣誓式の演説で5/50戦略の提案を行なった。

5/50戦略とは、今後5年間でチベットの真の自治に向けた取り組みのかたわら、今後50年にわたり運動を続け、強化するための戦略も練っていくというものである。

「最上の結果に希望を抱きつつ、最悪の事態にも備えるようにとの助言をダライ・ラマ法王から私たちは再三にわたり頂いて参りました。この助言に基づき、この5/50戦略を提案しています」と、センゲ主席大臣は2,000人を超える賓客と観衆を前にした演説の中で述べた。

「中道アプローチに基づき、真の自治の実現に向けて今後5年間、最大限の努力をするべきであることは言うまでもありません。ですが同時に、亡命の状態が続き、長期的に闘争を続けなければならない場合に備え、今後50年にわたりチベットの主張を維持、強化していく戦略を練る必要があります。

チベット人は独自のアイデンティティと伝統を守っていかなければなりません。そのためには教育、経済双方の分野でチベット人社会への自己信頼を構築していく必要があります。

5/50は成功が約束された戦略です。5年以内に真の自治が実現されるか、されない場合でも50年のあいだに中国は徐々に変わっていくからです。もしチベット人が今後50年にわたり亡命政権を存続させ、組織を保持、強化していけるなら、今後、中国で起きる必然的な変化により、チベット人は基本的自由を回復できるでしょう」、とセンゲ主席大臣は説明した。

この戦略を成功に導くべく、国際社会、インド、チベット人社会で中道アプローチへの認識を高めていくことに第15代カシャクは取り組んでいく所存だとセンゲ主席大臣は述べた。

また、チベット本土の焼身行為者をはじめとするチベット人が払ってきた犠牲に敬意を表しつつ、センゲ主席大臣は次のように述べた——「犠牲は無駄にはなりません。彼らに連帯の意を示すとともに、チベット本土で僧侶、学者、作家、教師、学生、歌手、農民、遊牧民など全てのチベット人の心に今も燃え続ける愛国の熱情に深い感謝の念を捧げたいと思います」。

また、センゲ主席大臣は、中道アプローチがチベット問題の解決に向けた第15代カシャクの公式政策であることを改めて確認した。「ダライ・ラマ法王が構想され、亡命チベット代表者議会において全会一致で採択された中道政策は、今後もチベット亡命政権の公式の政策です。ダライ・ラマ法王使節団と中国政府代表団の交渉再開に向けて取り組み、ダライ・ラマ法王がご存命中にチベット問題を平和的に解決したい所存です」、とセンゲ主席大臣は述べた。

シキョン(政治的指導者)であるロブサン・センゲ博士は、ダライ・ラマ法王の政治指導者の地位からの引退を機に、2011年の選挙でカロン・ティパ(主席大臣)に選出されて以来、チベット亡命政権の政治機構のトップを務めてきた。最近実施されたチベット亡命政権の総選挙で、センゲ博士は有効投票数の33,876票(57.08%)を得票して再選された。

略歴


ロブサン・センゲ博士はダージリン近郊のチベット人居住区に生まれ、ダージリンのチベット人中央学校に通った。デリー大学で法学士号を取得後、1992年、チベタン・ユース・コングレス(TYC)の最年少の幹部(CENTREX)に選出された。1996年フルブライト奨学生としてハーバード・ロー・スクールで修士号を取得、2004年、チベット人として初の法学博士号を取得。その論文「苦難の民主主義:亡命政体は救済となるか?チベットの亡命政府に関するケーススタディ( Democracy in Distress: Is Exile Polity a Remedy? A Case Study of Tibet’s Government-in-exile)」は1995年ヨン・K・キム賞を受賞した。2005年にハーバード大学のリサーチフェローに就任。その後昇格し、2011年初頭まで同学のシニアフェローを務めた。

センゲ博士は国際人権法、民主的立憲主義、紛争解決の専門家。世界中の数百のセミナーでスピーカーを務めた実績のほか、中国人、チベット人、インド人、欧米各国の学者が参加する7本の主要なカンファレンスを主催した(そのうち2本はダライ・ラマ法王と中国人学者が一堂に会するという未曾有の機会を提供した2003年と2009年のハーバード大学でのカンファレンス)。2007年、アジア・ソサエティから「アジアの若きリーダー24人」に選出され、オーストリア、ウィーンで開催された、世界トップクラスの法務専門家と判事が集う「ワールド・ジャスティス・フォーラム」に代表として派遣された。

2011年、亡命チベット人社会で実施された初の民主的な競争選挙でカロン・ティパに選出される。2011年8月8日のカロン・ティパ宣誓式にて、「若いとき、年長の摂政タクタ・リンポチェから私にシキョン(政治指導者)の地位が譲られました。そして今日、私はその地位を年若いロブサン・センゲに譲ります…これで、念願の目標が達成できました」とダライ・ラマ法王は述べられた。2016年3月20日に行なわれた選挙の決戦投票にて、センゲ博士はシキョンとして2期目の再選を果たした。


(翻訳:吉田明子)