「BEHIND BARS – Prison condition in Tibet -」TCHRD発行

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1997年3月 ダプチの政治囚からの手紙

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以下は英語訳の手紙からの抜粋である。

人権という主題は国連人権宣言以降、世界の知識人に広く認知されてきた。国々は人権保護や促進の約款を作ってきたが、未だにこれら基本的人間の価値を軽視し続けている国もある。

中国は国際会議より以前から中国とチベットにおいて人権を尊重するふりをしてきたという事実を我々はここで取り上げたい。この宣言に調印したにもかかわらず、中国はチベット人の基本的かつ根本的な自由を侵害し続けている。1949年、彼らは貪欲にも我々の東部国境を経て進入し、1959年には遂に無理矢理チベットを占拠した。

国連人権宣言によると、ダライ・ラマ法王は600万人のチベット人の代表として国連において、またアメリカ合衆国を含む諸外国に向けてチベット人の危機的な状況を述べ、緊急に行動を起こすよう要請した。とりわけ1987年に彼は中国と平和的な交渉をしたいと願い、五項目和平プランを提案した。中国政府はこの提案を拒否し彼を責めた。この事は我々にとって耐え難く、黙ってはいられないことである。

1959年から続く中国政府の残酷な占領と植民化以来、チベット人は残酷な中国の弾圧に対して奮起し自由を要求する抗議デモを行ってきた。この抗議デモの結果、12万人のチベット人が亡くなり現在でも絶えず投獄が続いている。しかしながら、こういう事実は永遠に続くであろう。

1987年9月27日からチベット人は再び中国に対して平和的な抗議デモを行った。僧侶や尼僧に導かれ、何百人ものチベット人がチベットでの中国支配に反対し抗議デモの暴動に参加した。引き続き起る抗議デモを弾圧する際、中国軍は発砲して、窮地に陥っている多くの人々を殺し、重傷を負わせ、また何千人もの非武装のデモ参加者を投獄した。中国当局は残酷な尋問をし抑留者たちに自白を強制した。

チベットでは、拷問はほんの尋問の手段にすぎない。刑務所では自白を引き出す為に残酷で惨めな拷問の手段がとられている。これらの拷問には、食料、水、空気の剥奪、凍りつくように寒い独房への監禁、番犬に囚人を攻撃させる、牛追い棒の電気ショックが含まれる。

囚人は“犯罪者”として罪を負わされ、独立した裁判官が審査せずに、行政的な拘留が地方当局によって課せられている場合がある。中国当局による合法な手続きが最高の権限と見なされているが、このようにチベット人は法廷の前に控訴する権利もない。

投獄の後、政治囚は外部との連絡を絶たれたまま拘留される。彼らは中国当局によって派遣された特別な看守によって厳重に警戒され、外部からの接触は制限されている。政治囚の家族のうち1人だけが1ヶ月に1度、訪問を許されているが、一方ではその権利が制限されていない囚人もいる。彼らははしばしば身内からの差し入れの受け取りを禁じられているが、一方ではそのような差し入れを制限されていない者もいる。

政治囚はベットがなく、その代りにぼろぼろの布切れをベットとして使わなければならない。彼らは腐敗し汚染された物を食べるよう強制され、誰も健康状態について訴える権利を持っていない。

政治的立場において囚人は心からダライラマ法王とチベットの自由を公然と非難し、共産党への忠誠心を誓うよう要求される。同時に、囚人は自らに誓って中国の法律と規則を受諾し、過去に彼らがしてきた事を放棄し、将来、法律を受諾する事を認めなければならない。

もし囚人がこれらの原則の受諾を拒否するなら、あらゆる拷問の道具を使った悲惨で冷酷な扱いから免れる事はできない。その拷問というのは、鉄の鞭、棒、南京錠、平手打ち、飢餓状態にする事などである。このようにして、サンゲ・テンフェルは亡くなった。

中国当局は病気の囚人達に対してどんな責任もとらない。たとえ病気の囚人から相談をもちかけられても期限切れの薬や備品が使われるだけである。このようにして、ラクパ・ツェリンとカルサン・トゥトップは刑務所で亡くなった。

政治囚は定期的に血を抜かれ強制労働を強要されている。彼らはまた看守達がどんな事を言おうと、無理に賞賛させられる。たとえ看守が間違った事を述べても、共産主義の有用性やイデオロギーを賞賛するよう強いられる。それにもかかわらず、我々は団結し、決してこれらの強要に耳を貸さない。こういう理由で我々はひどく痛めつけられ、食料や水、睡眠を奪われたりしている。

全ての事実を細かく書くのはとても難しい。もし我々が妥当な役所へ刑務所での虐待について抗議を申し立てるなら彼らは申し立てを無視するだけでなく、我々囚人の刑を大いに延ばすだろう。我々は厳しい監視と残酷な抑圧のもとに置かれたままである。このような方法で看守は昇進し、上級の当局によって報酬が与えられる。

“チベットデイリー”によると政府の会議でチベット自治区の公安局と司法局は政治囚に対して特別に便宜をはかって懲罰をし、熱心に仕事に従事した看守には報奨を与えると決定したということだ。

現在、ダプチ刑務所には253人の15歳〜70歳までの政治囚がいて、刑期は1年〜19年にまで及んでいる。現在のチベットの状況は危機的でより厳しい抑圧が行われている。我々はこれまでに述べたような残虐行為に特に敏感であり、そのような行為は直接、我々に及んでいる。それゆえ、我々は真実、平和、民主主義、人権を愛し支援する世界中の人々に訴える。

1997年3月10日
ダプチ刑務所の全ての政治囚より