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1950年11月 チベット政府「共産中国による侵略」を国連に提訴

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「チベット政治史」(亜細亜大学アジア研究所)より抜粋

1950年10月26日、インド政府は中華人民共和国がチベットにおいて軍事力を行使したことに抗議し、この侵略は中国の益にならず、平和にも貢献しないと述べた。2日後、チベット政府からの援助を求める訴えがインド政府のもとに届いた。同年英国政府の外務次官アーネスト・デイヴィスが下院で声明文を出し、英国は中国のチベット侵略と武力行使に遺憾の意を表わし、“インド政府がとった立場を完全に支持する”と述べた。

11月7日、庚寅年のチベット暦9月27日付でチベット内閣及び国民議会は、彼らの言うところの極悪なる侵略的行為に抗議を行い、通商代表団団長W・D・シャカッパはそれを1950年11月11日、カリンポンから国連へ打電した。国連への打電の1部をここにあげる。

「 チベットを共産中国に編入するために、強大な武力を用いてチベットに軍事侵攻したことは、明らかな侵略事件である。チベット人民が自らの意志と希望に反し、無理矢理中国の1部に組みこまれるというこの事態がこのまま進行するならば、この侵略行為は強者による弱者征服の最悪の実例となるであろう。それゆえ、我々はチベットのために介入し、中国の武力侵略を阻止するよう、国連を通して世界各国に訴えるものである 。」

エルサルヴァドルが国連の事務総長の前で正式にチベット問題を提起した。しかし続いてインド代表が、国連総会での討論抜きでチベット・中国・インド3方に有利な解決をもたらすことができると主張し、チベットの提訴をいったん延期するよう、国連総会の委員会を説得した。しかも、これまでチベットと友好関係を保ち、また主権を有する国としてチベットと条約を締結していた−これはチベット独立の承認を意味する−英国の代表までがチベットの法的地位は不明瞭であると述べたのであった。これはチベット人にとって手痛い失望であった。なぜなら英国はチベットの状況を明確に知っていたはずであったからである。

英国外務次官が下院で声明文を発表した3日後、インドの副首相兼国務大臣サルダル・ヴァツラバーイ・パティルはニューデリーにおいて

「伝統的に平和を愛するチベットの民に対して武力を行使するのは遺憾な行為である。世界にはチベットほど平和を愛する国はない。中国政府はチベット問題を平和的に解決すべきだというインド政府の忠告に従おうとしない。中国人たちは軍をチベットに進軍させ、外国勢力がチベットにおいて中国への陰謀をたくらんでいるという理由でこの行為を説明している。しかし、そのような恐怖はなんら根拠のないものである」

と述べた。

また11月14日、インド議会でインド大統領ラジェンドラ・プラサードは以下のように述べた。

わが政府は偉大なる隣国、中国との間に友好関係を保ちつづけてきた。それゆえ中国政府が、平和的交渉手段がひらけているにもかかわらず、チベットに対し軍事作戦をとらざるを得なかったことを我々は非常に遺憾に思う。チベットはインドの隣国であるだけでなく、何世紀もの昔より文化その他の深い絆を維持してきた。それゆえインドはチベットで発生している出来事に関心を抱く必要があり、またこの平和の国の独立が保たれることを希望するものである。