これから開催するイベント

大阪・講演、世界学生平和会議(PCY)にてトークセッション

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法王の秋の日本ツアー第一日目は、滞在先の大阪のホテルでの個人的な謁見から始まった。その後あいにくの雨の中、法王はその日のイベント会場、インテックス大阪に向かわれた。29カ国から集まった若者を含む5000人の聴衆が法王の講演(『恒久的世界平和の実現に向けて』)に集まった。

風邪のため喉を痛めていらしたのにもかかわらず、ダライ・ラマ法王は力強く平和について語られた。「より平和で暴力の少ない世界が構築できるかどうかはあなた方若者の肩に掛かっている。それを実現するにはまず将来の展望をもたなければいけない。平和を願うだけではだめだ。現実的で理にかなった具体的ヴィジョンをもつ必要がある。平和とは意見の食い違いをなくすことではない。意見の違いは決してなくならない。様々な意見や考え方がある中での平和、つまり内なる平和を目指すということだ。」法王の語りかけに会場の若者は熱心に耳を傾けた。

「暴力は結局私たち自身が引き起こすものであるから、それを無くすことができるのも私たち自身だ。アメリカではウィスコンシン、スタンフォード、そしてエモリーといった大学で、科学者たちが心の平和を実現するためのリサーチに真剣に取り組んでいる。今では科学者の研究は実体のあるものだけでなく心にまで及ぶようになってきているのだ。」

「快楽だけが深い喜びをもたらすわけではない。痛みを伴う喜びもある。感覚的な快楽ではなく、心の本質に働きかけて人間に平静や喜びをもたらす究極の要因を探らなければ。それは信仰の有無や環境条件にかかわらず誰にも共通のものであるはずだ」と法王は指摘された。

法王はかすれた、しかし説得力のある声でおよそ2時間半の講演を次のように締めくくられた。「変化は訪れる。武力や武器によってではない。決意や言葉によってでもない。行動によってだ。しっかりした動機をもって行動する。一人一人が全世界を『私たち』と捉えるようになった時、私たちはこの世界をよりよいものへと変えることができるのだ。」

短い昼休みを挟んで平和に関する討論が2時間に渡って行われた。世界学生平和会議(PCY)に参加する学生が会場を埋めた。

PCY2010に参加した学生らがその体験について発表した。彼らはPCYのプログラムを通じて世界のことを学び、暴力と貧困の悪循環を断たなければいけないと感じたという。若者の発言を真剣に聴いていた法王は、彼らが参加したプログラムを意義あるものだと讃えたうえで次のように述べられた。「インターネット世代になっても顔を突き合わせて対話をすることは重要だ。言葉だけでは人の表情までは伝わらない。」

法王はアルゼンチンで出会ったチリ人物理学者との想い出にも言及された。「彼は私に『自分の専門分野ばかりに囚われていてはいけないと思っている』と言った。私もまた仏教ばかりに囚われてはいけないと思う。」「自分の国や国民を愛し、文化を愛する。それは素晴らしいことだ!しかしもっと普遍的、全体的な社会観をもち、それに対して責任をもつことも必要だ。」

トークセッションを締めくくって法王は会場の若者たちに次のような言葉を残された。「私たちは時として自分の無力さを嘆き、自分では何一つ変えられないと思う。しかしそうではない。私だって節水や節電を心がけてシャワーに入る時に水を使いすぎないようにしたり、部屋を出る時には電気を消したりしている。小さなことだがそれでも必ず違いを生む。」「あなた方の情熱は素晴らしい。情熱とホリスティック(全体的)な考え方−とても重要だ。立派なことをしようと思ったら必ずと言っていい程困難に直面するということも分かっただろう。しかしチベットにはこういう諺がある。『九度失敗して九度頑張る』−決して諦めるな、ということだ。」

講演を終えた法王に会場の人々が喝采をおくった。法王はその後大阪を後にされ車で1時間程の奈良に向かわれた。奇しくもその日、仏教伝来の地、古都奈良では平城遷都1300年祭が閉幕しようとしていた。

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