チベットの野生動物

「チベット政治史」(亜細亜大学アジア研究所)より抜粋

野生の動物も実に種類に富んでいる。チベットの各地で、虎、豹、ヒマラヤ黒熊、猿、狼、狐、マーモット、兎、山犬、野猪、野生の山羊、野生のヤク、カモシカ、鹿、麝香鹿、チベットノロバ、山猫、カワウソ、ヤマアラシ、ニシキヘビなどの動物をみかけることができる。
マーモットはその川が高価な輸出品になるために狩りの対象となる。しかし、白いマーモットは迷信深いチベット人からは神聖視されており、殺せば祟りがあると信じられている。

麝香鹿は常に決まった場所で水を飲み、背中を気にこすりつけるという習性がある。猟師はその足跡から麝香鹿がふんだんに麝香を持っているか否か言いあてることができるという。麝香が採れる見込みがあるならば、その鹿のお気に入りの木の近くに罠が仕掛けられる。

野生のヤクの群れは通常、一頭の雄と百頭の雌から構成されている。それは雄の出生率が低いからではなく、母ヤクがその歯を用いて大半の雄の仔を去勢して、最も強健な雄だけを残すからであるとチベットの遊牧民は言う。去勢されなかった雄は群より離れ、つがいの季節になると一頭の雌を選ぶ。野生のヤクは性格が獰猛で嫉妬深く、気が短い。そこで群れの平和を保つために数頭の雄しか残さないようにしているのであろう。チベットノロバも同じ習性をもっていると言われている。

熱心な野鳥観察家ならば、カラス、ワタリガラス、カササギ、鷹、鷲、野生の赤鴨、梟、鶉、雷鳥、キツツキ、クロドリ、雲雀、サンドバイパー、カッコウ、コウノトリ、鳩の各種、水鳥をみいだすことができるであろう。カッコウや燕、小型の鷲は夏の間、北方地方に住み、冬になると南に渡っていく。夜に梟が家の中に入ってくるのは不吉な兆しと考えられている。禿鷲はどこででも見うけられる。鳥葬、すなわち人の屍体を切りきざんで禿鷲に投げ与える葬式儀式はごく普通に行われている。

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