ダライ・ラマ法王2009年来日レポート:1日目

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2009年11月 チベットハウスジャパン

2009年10月31日:東京


2009年のダライ・ラマ法王来日第一日目は、35名の中国人との面会から始まった。彼らのほとんどは仏教徒である。靴を脱ぎ、座った彼らは「オム マニ ペメ フム」とマントラを唱えながら小さな部屋でダライ・ラマ法王を待った。法王が姿を現すと彼らは目に涙を浮かべた。
「これはチベット人にも中国人にも言うことですが、あなた方は21世紀の仏教徒として、世界で、そして仏教界で何が起きているかを把握していなければなりません。仏教徒は生まれながらに仏教徒なのだと思っている人が大勢いますが、お釈迦様やナーガルジュナのお言葉を含めサンスクリット語やパーリ語から訳された300年分の膨大な仏典が存在するのです。仏教を学ぶ必要がなければそれら仏典も無用の長物ということになってしまいます!」と、法王は話され、学ぶことの大切さを強調された。

法王を囲み、祝福を受け涙を流す彼らにむかってダライ・ラマ法王は中国とチベットの状況についても少し話をされた。その後法王は、多くの報道関係者とカメラマンの待つ外国人記者クラブへ車で向かわれた。明るく穏やかな中秋の朝であった。

報道関係者に対しダライ・ラマ法王は、ご自身は世俗倫理や宗教間の調和促進のために尽力されている、と述べられた。さらに昨今の世界的金融危機についても言及され、それは「貪欲に投機した」結果だと指摘された。
「そのようなところにも私たちの感情や道徳的弱さが関わってくるのです。誰もが平和を語るのに、現実には平和を語る人たちでさえ必要とあれば暴力に訴えるのです。解決の方法はただ一つ、教育しかありません。しかもその教育は、私たちの内なる強さ、道徳心を育てるために、温かい思いやりの心を持ってなされなければなりません。」

「一般的な経験、常識そして最新の科学的研究成果をもってすれば、かなり幼い頃から子どもたちを教育することができます」と法王は語った。さらに法王は世俗主義の大切さを強調された。
「それはあらゆる宗教を否定するということではなく、どの宗教に対しても、また信仰を持たない人に対しても真の意味で敬意を払うということです。」

質問に回答するかたちでチベット亡命政権について、また相互依存についても考えを述べられた。
「平和は祈りで成就されるものではありません。そこには行動が必要なのです。平和を実現するにはまず内なる平和が確立されなくてはなりません」と、法王は力強く語られた。

東京のインド大使館で昼食をとられた後、ダライ・ラマ法王は講演のために両国国技館に向かわれた。「さとりへと導く三つの心と発菩提心」というタイトルで行われた講演で、ダライ・ラマ法王は三つの心とは「出離の心(輪廻からの解脱を求める心)、菩提心そして正しい見解」であると説明された。

「さとりへの道は緩やかです。人はいきなり仏陀になれるわけではありません」と、法王は語った。さらに法王は「自我」について説かれた後、ジェ・ツォンカパ尊師の教えについて説明された。
「ダルマ(仏陀の教え)を実践する時、宗派にこだわらないことがとても重要です。教えに耳を傾ける時、こだわりから解放されていることが大切です。それからその教えについて調べ分析するのです。」


(訳者:中村貴子)

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