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ダライ・ラマ法王、超党派の「日本チベット国会議員連盟」へのご講演

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2018年11月20日
日本、東京

ダライ・ラマ法王がご滞在先のホテルからほど近い衆議院議員会館に到着されると、超党派の「日本チベット国会議員連盟」のメンバーが法王を温かく歓迎し、中へと案内した。

衆議院議員会館に到着され、超党派の「日本チベット議員連盟」の出迎えを受けられるダライ・ラマ法王。2018年11月20日、東京(撮影:テンジン・ジグメ / 法王庁)

法王は議員会館の応接室に通されると、次のように話された。
「短期間の来日ですが、国会議員の皆さんとお会いできる機会に恵まれてとてもうれしく思います。チベットと日本の関係は遠くダライ・ラマ13世の時代までさかのぼれますが、第二次世界大戦後にその関係は途切れてしまいました。しかし、日本はアジアの重要な国家であり、仏教を通しての強い結びつきもあります」

議員連盟に所属する国会議員団からは、チベット問題に関する彼らの計画やこれまでの議論、到達した解決策について説明させていただきたいという発言があった。議員団はチベットの独自性を保つ基盤となるチベット文化、言語、宗教的伝統がチベット内で中国に抑圧されており、それらを保持するために貢献したいと切実に願っていること、重ねてチベット内部における経済と教育の発展支援に対する関心を表明した。議員団は、自分たちの独自性や文化を守ろうとしただけで刑罰を受けているチベットの良心の囚人たちの釈放を求めるアピールを出したことも発表した。

それに対し、法王は以下のようにお答えになった。
「日本は高度に発展した国であり、民主主義と自由に対する意識も強い国です。現況を鑑みて、皆さまのチベット問題に対する支援に感謝しています。以前、私がチベットを平和地帯として承認しようと提案したことを覚えておられるかと思います。歴史的に見て、7世紀、8世紀、9世紀におけるチベット、モンゴル、中国はそれぞれ独立した国家でした。中国の歴史書にもそのように記されています。しかし、過去は過去であり、今の現実を見なければなりません。私たちはチベットの独立を求めてはいません。もし互いに利益があるならば、中華人民共和国の枠組みの中にとどまる準備はできています。私は自国の利益よりも各国共通の利益を重んじた欧州連合(EU)の精神を高く称賛しています」

衆議院議員会館の応接室で、超党派の「日本チベット国会議員連盟」のメンバーと歓談されるダライ・ラマ法王。 2018年11月20日、東京(撮影:テンジン・ジグメ / 法王庁)

和やかに歓談された後、法王は超党派の「日本チベット国会議員連盟」が主催する講演会に臨まれるため、衆議院第一議員会館の多目的ホールに移られた。議員連盟の会長、下村博文自由民主党衆議院議員が最初に挨拶に立ち、以下のように述べた。

「世界は法王猊下のリーダーシップを尊敬しています。私たちは猊下を深く称賛しており、猊下のアドバイスは陽の光のごとく闇を祓って下さいます。私たちはチベット問題を支援する多くのNGOと緊密に協力していることをご報告しますとともに、議員連盟を代表して、猊下の国会訪問に感謝申し上げます」

続いて同連盟の副会長、渡辺周国民民主党衆議院議員が次のように挨拶の言葉を述べた。「ダライ・ラマ法王を国会にお招きするのは今回で4回目となります。ダライ・ラマ制度が設立して400年以上になりますが、法王は依然としてチベット人のリーダーであり、また70億人の人類全体の幸福をお考えになり、その重要性を強調されています。法王はより大きな慈悲が必要であると訴えておられますが、その法王から、日本は高度な技術的発展を遂げながら伝統的文化とその価値観を維持していると、特別なお褒めの言葉も頂戴しました」

続いて、同連盟事務局長、馬場伸幸日本維新の会衆議院議員は法王に向かって、「デジタル社会においては、人間は膨大な情報にアクセスできますから、チベット問題を他者と共有していくのが最も重要と考えています」と発言した。

超党派の「日本チベット国会議員連盟」との公式会見に臨まれるダライ・ラマ法王。 2018年11月20日、東京(撮影:テンジン・チョンジョル / 法王庁)

続いて中山恭子希望の党参議院議員は、次のように挨拶をした。
「チベット問題は全世界が注目すべき問題でしたが、長期間に渡って無視されてきました。60年間の亡命生活を通して困難に直面してこられたにもかかわらず、法王は大きな成果も果たされました。ここにこうして再会の機会をいただいたことを嬉しく思います」

最後に、櫻井よしこ国家基本問題研究所理事長が、法王に向かって次のように報告した。
「私は国会議員の方々とともにダラムサラを訪問したことがあります。私はチベット問題のために力を尽くすことを決意しており、助けが必要な人々に手を差し伸べねばなりません。国会議員の方々と議論を重ねてきた結果、ここにこうして超党派の日本チベット国会議員連盟が設立され、世界最大のチベット支援国会議員連盟となりました」

議員団のスピーチを受けて、法王は次のように答えられた。
「今私たちは、アジアの国日本にいます。高度な物質的、技術的発展を遂げ、国民は仏教の本質を維持しておられます。日本の国会議員の皆さまにお会いできて光栄です。私は子供の時分から民主主義に憧れていました。1951年にチベットの元首となってから、私は改革委員会を発足させましたが、成功には到りませんでした。中国当局は、チベット人が自ら改革を導入すれば、チベットに適した改革になるという事実を無視して、彼らの考える改革以外の方法は何一つ容赦しませんでした」

「その後、私は1954年には北京を、1956年にはインドを訪問しました。1957年と1958年にチベットで勃発した危機は1959年に沸騰し、私たちにはもはや亡命の決断しか残されていませんでした。私はインド到着直後からチベット亡命政権の民主化に取り組み始めました。その結果、2001年には民主的な選挙による指導者選出を実現し、私は政治的指導者の立場から半ば引退することができました。その後2011年には、新しい指導者が選出されたのを機に、私は政治的立場からの完全な引退を実現することができたのです。これは、ただ私が引退したということだけでなく、ダライ・ラマがチベットの政教双方の指導者を兼ねるという何世紀にも渡る古い伝統に、自ら喜びと誇りを持って終止符を打ったのです」

「日本チベット国会議員連盟」の議員団に向かって挨拶をされるダライ・ラマ法王。 2018年11月20日、東京(撮影:テンジン・ジグメ / 法王庁)

「皆さんの決議案を聞かせていただき、大変ありがたく思います。中国に祖国を占領されて以来、70年間ずっと、中国人民解放軍の強硬派は武力行使、洗脳、贈賄行為など様々な手段によってチベット人の精神を破壊しようと図ってきました。しかし抑圧が強まるにつれ、チベット人の精神もより強く育まれてきました」

「1959年以前のチベットにはあらゆる問題があふれていましたが、チベット人と中国人の間には本質的な摩擦はありませんでした。しかし中国人の振る舞いが、両者の間の不和を作り出してしまいました。役所や学校、刑務所にいたるまで人種差別があります。中国政府は調和と安定というスローガンを謳いながら、実際の政策はその目標をはるかに下回っています。もっと現実的になってもらいたいと思います」

「私たちの側からは1974年以降独立を求めてはいません。私たちは中華人民共和国の中に留まる準備がありますが、それは、私たちに保障されているすべての権利が認められるならの話です。数年前、私たちの中道政策を支持し、中国政府の政策を批判する千件ほどの中国語文書の存在に気づきました。現在、少なくとも三億人の中国人仏教徒がおり、その多くは教養もあって、ナーランダー僧院から伝わる仏教の伝統を重んじています」

「私はヨーロッパのチベット支援国会議員団に対して、このようにお伝えしています。もし、彼ら自身の立場からチベット問題に対する関心をより多く表明できるなら、それだけ多くのチベット人を助け、精神の高揚をもたらすことができる、と。世界のどこかで自分たちを支援してくれる人々がいると知れば、心強い助けとなります。もし、あなた方が環境問題事実調査団を組み、環境学者を伴ってチベット入りできるなら、それはとても大きな助けになります。そうすれば自分の目で、そこで何が行われているかを見ることができるでしょう。ご存知のように、アジアを流れる主要な大河の源流があるチベット高原の環境は、アジア全体に福利をもたらす決定的要因となっています」

衆議院議員会館で、「日本チベット国会議員連盟」のメンバーに向けてスピーチをされるダライ・ラマ法王。 2018年11月20日、東京(撮影:テンジン・チョンジョル / 法王庁)

「私は最近、インドの特に若い人々に、心と感情の働きに関する古代インドの智慧を復活させるように勧めています。古い知識かもしれませんが、その学識は今日でも適用できる重要な智慧を保持していると思います。日本は仏教国ですから、このような精神的知識により多くの関心が寄せられるなら、日本の方々も堅固な精神的平安を醸成することができると確信しています」

ここで、超党派の「日本チベット国会議員連盟」の決議案が日本語で読み上げられ、決議書が採択されて拍手が湧いた。

閉会の辞として、自由民主党の山谷えり子参議院議員が法王の国会訪問を感謝し、次のように述べて講演会を締めくくった。
「もしダライ・ラマ法王のアドバイスに耳を傾ければ、私たちは世界平和を実現することができるかもしれません。 気候変動を後戻りさせる方策をさらに調査するべきこと、地球の第三極としてのチベット高原の重要性に注意すべきであるという考えを私も表明したいと思います。ありがとうございました」

会場となった衆議院議員会館の多目的ホールを退出される前に、目の前に掲げられた日本とチベット両国の国旗をご覧になった法王は、主催者に次のようにお話になった。1954年に北京を訪問された時、毛沢東主席からチベットの国旗はあるのかと尋ねられ、法王がおずおずと「あります」と答えると、毛主席は「よろしい。国旗は持つべきである。紅旗の横に立てるがよい」と返答したとのことである。そこで法王は、毛主席がその言葉をもってチベット国旗掲揚の許可を与えてくれたのだから、今後この件に関しては何人も非難の余地はない、と会合に告げられた。

その後法王はご滞在先のホテルに戻られた。明日、法王は空路で九州の福岡に向かわれる。

 

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