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「思いやりといたわりと」ダライ・ラマ14世が京都で講演

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2000/04/17 京都新聞より抜粋

チベット仏教の最高指導者で、ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世が16日、京都市左京区の京都精華大で講演した。チベット独立運動の精神的象徴とされ、中国政府が来日に反発する緊迫した中での講演会となったが、ダライ・ラマ14世は市民らとの触れ合いを楽しみ、「思いやりの心をもってほしい」と訴えかけた。

京都精華大が環境社会学科の新設を記念して招待した。ダライ・ラマ14世の来日は、2年ぶり7回目。講演会と、17日開催の国立京都国際会館でのシンポジウムに一般参加者を募集したところ、総定員2,900人に対して22,000人の応募があった。

ダライ・ラマ14世は、中国のチベット侵攻後の1959年にインドに亡命。中国政府はその言動に神経をとがらせている。日本政府は「政治的活動を行わない」との条件で今回のビザを発給した。

京都精華大は講演を前に、職員とボランティア学生ら約110人を会場の体育館内外に配置する一方、一般参加者の身分証明書や手荷物をチェックするなど、万全の態勢で臨んだ。

会場は、学生や市民ら約1,800人で満席。大きな拍手で迎えられ、ダライ・ラマ14世は赤い僧衣に身を包んで登壇。「自然との共生を求めて」のテーマで、人の心の平安や科学技術偏重など現代が抱える問題を平易な言葉で語りかけた。その上で、「すべての人が心の平安を得るため、1人ひとりが身近な人への思いやりと、いたわりの心をもってほしい」と、メッセージを送った。

会場からの質疑では「コミュニケーションが苦手で、どう克服したらいいか」と質問した女子学生を壇上に招き、「人間には、だれもがやさしい心がそなわっている」と諭し、軽く抱擁した。平和について問われた時には「破壊と暴力はもうたくさんだと、人類は切実に感じている」と、言葉を選ぶように答えた。

ダライ・ラマ14世は、花を贈ってくれた女子学生たちと壇上で肩を組み、記念撮影におさまる場面も。会場を出た後、乗用車から降りて学生たちの輪の中に入り、質問にていねいに答えていた。参加者からは「チベットの置かれている政治状況について聞きたかった」との声も聞かれたが、ダライ・ラマ14世に親しみを感じた様子だった。

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