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ダライ・ラマ法王2009年来日レポート:2日目

2009年11月 チベットハウスジャパン

2009年11月1日:東京

Photoダライ・ラマ法王の日本滞在二日目の目玉は、日本人科学者4人との革新的ともいえる討論だ。宇宙論、環境、哲学そして心理学という広範囲にわたる問題について、3時間半におよぶ意見交換が行われた。(→講演概要はこちら)会場に集まった3000人の聴衆は、ダライ・ラマ法王が科学者(エンジニア、文化人類学者、フューチャリストそして哲学者)の言葉に熱心に耳を傾け、彼らの考えをご自身のバックグラウンドに照らし、深め、磨き上げるのを目の当たりにし、その様子に釘付けになった。4人の科学者とダライ・ラマ法王の声はあたかも室内楽五重奏のように調和し一つになった。そこにいた誰もがとても明るい表情で会場を後にした。
この日、ダライ・ラマ法王の一日は法王に謁見を許された人々との面会から始まった。20名ほどの中国人仏教徒、韓国人の家族、日本人代表者、そして日本テレビのチームが続いた。法王は信者らに対して次のように語られた。
「昔の仏教徒であればただ信仰心を持ってさえいればよかったかもしれません。しかし今は21世紀。膨大な量の物資と近代化に特徴づけられる時代です。私たちは伝統的な教えや価値観を守りつつも、現代の世の中について知っていなければなりません。瞑想はもちろん大変重要です。しかし瞑想を実践する以前にその目的や方法について学ぶ必要があります。神を崇める宗教であれば、すべては神、あるいは創造主から生じたわけですからそれを信ずるというのは道理にかなっていると言えるでしょう。しかし仏教には創造主は存在しません。仏教における創造主とは誰でしょう?それは自分自身なのです。」

ダライ・ラマ法王はテレビ関係者を前に、ご自身が、2008年のオリンピック開催地が決定する以前から北京オリンピックを応援していたことを話された。さらに、意義のある自治についてのご自身のお考えを概説された。
「私たちが主に心配しているのはチベット内部のことです。不安と恐怖が溢れている。まるで恐怖政治が行われているように。とても悲しいことです。チベットは遅れた国であり、私たちはチベットが近代化されることを望んでいます。私たちは中華人民共和国の一部でありたいのです。私たち自身のために。同時にチベットには特有の文化、言語、文字そして豊かな仏教の伝統があるのですが、チベット人は中国人よりもそれらについてよく理解しているので、私たちの環境や言語、文化といったものは私たち自身が守り面倒みていくのが一番いいのです。」
世界の状況についてアドバイスを求められると、
「もっと楽観的になるべきです!概して世界はより健やかによりよい場所になっているのですから。武器が戦争や暴力を起こすのではありません。それはここ(ご自身の頭を指差して)から来る。そしてここから(ご自身の胸を指される)。だから平和もまたここから来るはずです(再度頭を指差す)。」
日本で鬱病を患う人が増え、自殺者が増加していることについては、
「日本の特に若い人たちによく言うことですが、日本を離れアジアやアフリカ、ラテンアメリカの国々を訪ね、教育や科学技術など自分たちの持っている物をシェアしてごらんなさい。もっと自信がわいてくる。自分にもできるのだ、と思うはずです。そうすれば自分を役立たずだと思ったり落ち込んだりする気持ちもおさまります。」とお答えになられた。

Photoしかし何といってもこの日のハイライトは午後のイベントだった。ホテルで昼食をとられたダライ・ラマ法王は科学者4人との討論「『地球の未来』への対話」のために再び両国国技館へと向かわれた。会の冒頭法王がおっしゃった通り、日本でこのような機会が持たれるのは2度目のことで、知恵と活気に溢れる意見交換が、予定の時間を過ぎても続けられ、ステージの熱い熱気が会場に広がった。登壇者の一人田坂宏志氏は今回のイベントは「ミラクル(奇跡)」だと表現した。ダライ・ラマ法王もまた、仏教と科学についての研究が、日本のように仏教徒の国で進められれば大変うれしい、と述べられた。
「西洋で科学について仏教徒としての視点を述べようとすると、私が仏教を説いているのではないかと思われる危険性があります。それでは困るのです。しかし日本ではそのようなことは起きません。日本では仏教と科学は生まれつきの仲間のように長い間共存してきたからです。」

登壇した科学者はそれぞれ、およそ30分にわたってダライ・ラマ法王と意見交換をした。法王はそれぞれの発言に対して、ただ単に同意をするのではなく、互いに学びあえるよう、科学者の意見をどのようにふくらませられるかをさぐりながら丁寧に応答された。

「今日本が重視すべきなのは内面的(精神的)価値に目を向けること、そして環境への配慮をすることです。」ダライ・ラマ法王は、「私たちは誰もが自然界の一部」であり、相互依存という考え方によれば自然界と私たちは一方が健全であれば他方もまた健全であるということになるようだと指摘された。そして熱意をもって次のように語られた。
「この青い惑星だけが私たちの住処なのです。私たち人間は知性を身につけた唯一のほ乳類ですが、最も有害な種でもあります。最近の環境問題は私たちが作り出したものです。ということは私たちにはそれらの問題を解決することもできるかもしれないわけです。」
  

ダライ・ラマ法王は、人々が宗教よりも渇望し必要としているのは充足感であると指摘された。ストレスから解放されたシンプルな日常こそ人々がのどから手が出るほど欲しているものだ、と。そして現代科学がより多くの時間を物質世界にではなく精神世界の研究に費やすようになってきていることは喜ばしいことだと述べられた。
「宇宙空間は無限です。それに比べて私たちの頭はたいそう小さく見えます。しかし内なる世界にはまだまだ未知の部分がたくさんあるのです。」あるヨーロッパの神経科学者は法王に、「脳には脳の全ての機能を一手に司るような中枢部分が存在しない」と説明した。そこには仏教の「無我」という概念とよく似た部分があるように感じると、法王は付け加えられた。

イベントも終わりに近づき、知的好奇心はますます高まっていった。最高の大学で非公開のハイレベルな討論に参加しているようでもあった。ダライ・ラマ法王は未来に希望があることを裏付ける理由を次々に挙げられた。自然を意識し、問題解決の方法としての戦争を疑問視するようになったという点において、人類は20世紀初頭に較べ進歩していると述べられた。
「私は基本的に、未来は明るいと大いに期待しているのです。」

「仏陀はいるのかいないのか、神はいるのかいないのか、そのようなことにとらわれるのはお止めなさい」と、ダライ・ラマ法王は若い世代の人々に語りかけた。
「それよりもハッピーな生活を送り、ハッピーなコミュニティーを作っていくことを心がけてください。きっとできるはずです!」


(訳者:中村貴子)

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