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ガール・ゴパール・ダス氏との対談

2020年7月14日
インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ダライ・ラマ法王は、元ヒューレット・パッカード社の技術者で、現在はクリシュナ意識国際協会(ISKCON:International Society for Krishna Consciousness)の僧侶であるガール・ゴパール・ダス氏とインターネットを介して対談された。オンラインで映像がつながると、ダス氏は法王に「ナマステ(こんにちは)」と挨拶し、法王は「では始めましょう」と答えられた。

ダス氏は、法王との対談に臨む機会を得たことをどれほど光栄に思っているのかを述べた後、対談の内容について短く紹介し、最後に、自分たちは何よりも導師や教育によって形づくられており、法王がこれまでどのような教育を受けてこられたのかについて伺いたいと語った。

オンライン対談のはじめに、法王公邸よりガール・ゴパール・ダス氏に挨拶されるダライ・ラマ法王。2020年7月14日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャルペル / 法王庁)

法王は、次のように話を始められた。
「あなたに会えてとても嬉しく思います。私もあなたのような “典型的なインド人の方” と対談できることを光栄に感じています。現代のインドは物質的な向上を図ることに重きを置いているようですが、三千年以上もの間、インドは “アヒンサー(非暴力)” と “カルーナ(慈悲)” の実践を大事にしてきました。しかし現在、それらの価値は幾分おざなりにされているように思います」

「私はナーランダ僧院の伝統に従う者です。現在私たちが知っている限り、ナーランダー僧院の偉大な導師は全てインド人です。仏陀もインド人であり、インドの “アヒンサー(非暴力)” と “カルーナ(慈悲の心)” の実践を身につけられました。しかし、仏陀は弟子たちに対して、『比丘たちよ、賢者たちよ、金を焼いて、切って、擦って純金かどうかを調べるように、私の言葉をよく調べ、単なる信心から受け入れてはならない』とアドバイスした点で、他の導師たちとは全く違っていたのです。そこで、ナーガールジュナ(龍樹)をはじめとするナーランダー僧院の導師たちは、この伝統に従って論理的に探究するというアプローチの方法を取り入れました」

「古代インドの伝統である “慈悲の心” に基づく “非暴力” の実践は、かき乱された心を鎮める “シャマタ(止:一点集中の瞑想)” と、現実を深く洞察する “ヴィパッサナー(観:鋭い洞察力)” を養う一般的な修行から生れたものだと私は考えています。鋭い洞察力を得るには論理と分析が必要です。私たちの心は、普通は散漫な状態にありますが、それが鎮まってくると、物事がよく見えるようになります。対象物を分析することができるのは純粋な意識作用だけですから、もし鋭い洞察力(観)を得ようと思うなら、心についてのより深い体験が必要となります。インドは心が持つ可能性について、一般の人々を教育する能力を持っていると私は思います」

「すべての生き物は他者の愛と慈悲の心によって生きのびていくことができます。お母さんの愛情がなければ、私たち人間は生きていけません。私たちは他者の思いやりに依存して生きているのです。たとえ哲学的な見解が異なっていても、すべての宗教の伝統は愛と思いやりについて語っています」

インターネットを介してガール・ゴパール・ダス氏と対談されるダライ・ラマ法王。2020年7月14日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャルペル / 法王庁)

「私は自分のことを古代インド思想のメッセンジャーだと見なしています。いつでも、どこでも、私は世俗的な観点から “非暴力” と “慈悲の心” について語っていますからね」

ガール・ゴパール・ダス氏は、ダライ・ラマ法王が、万人に受け入れられるインドの普遍的倫理観について語られていることに謝辞を述べた。そして法王が、古代インドの智慧が持つ価値を現代に通用するような方法で取り入れる必要性を強調されていることについて触れた。それを足の不自由な人と目の見えない人になぞらえ、次のような話をされた。どちらの人も一人では道路を渡れない。足の不自由な人は歩けず、目の見えない人は見ることができない。しかしお互いに助け合い、足の不自由な人が目の見えない人の目の代わりをし、目の見えない人が足の不自由な人を背負えば、道路を渡ることができる。ダス氏は現代教育を「歩くことのできる足」に、古代の智恵を「見ることのできる能力」に喩えられたのである。

ダス氏は、平和とその実現のために一人一人がどのようにすればよいかについての法王のお言葉を取り上げて、人々の心がかき乱されている今日、平穏に過ごすための良き変容をどのようにして起こすことができるのかを尋ねた。法王は、その時々の状況をよく分析し、何をすれば良いかを人間のすぐれた知性を用いてよく考えることが必要だとした上で、慈悲の心の重要性を明らかにするのは論理と知性である、と答えられた。

オンライン対談で、法王のお話に耳を傾けるクリシュナ意識国際協会のガール・ゴパール・ダス氏。2020年7月14日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャルペル / 法王庁)

「健全な人間、健全な社会をどのように築いていくべきかについて私たちは学ぶ必要があると思います。今日、インドの伝統はこの点において世界に貢献できるのではないでしょうか。20世紀にマハトマ・ガンジーが非暴力の価値を明らかにしたのと同じように、21世紀を迎えた今、心の平和を築く方法について人々を教育することにより、インドが貢献できることは非常に大きいと思います」

ダス氏は、お互いに助け合っていこうということについては同じ意見だが、私たちを妨げているものは何なのかと法王に尋ねた。

それに答えて法王は、異なる宗教間の調和をはかることを自身の使命だと考えていると述べ、すべての宗教の伝統は愛と思いやり、忍耐、許し、自己規制について共通のメッセージを発していることを繰り返された。これらのメッセージは実践の要であり、異なる宗教間に存在する哲学的な見解の違いを強調しないということが大切だと述べられた。

法王公邸よりインターネットを介してガール・ゴパール・ダス氏と対談されるダライ・ラマ法王。2020年7月14日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャルペル / 法王庁)

「私は、異なる宗教を信心している者同士が互いに調和を保って共に生きていくことは可能だと信じています。インドを見てください。この世界に存在する主だったすべての宗教の伝統がこの国で栄えています。その実践の要は、思いやりと許しです」

「私はラダックのイスラム教徒の友人たちに、イランなど様々な国から各代表を招いてこのテーマで会議を開催するよう勧めています。そして、インドの宗教指導者たちには、異なる宗教間の調和が実現可能であるということを、隣国の人々にもっと積極的に示していただきたいと思っています。近年多くの人々が瞑想やヨガを実践するようになりましたが、それが宗教間の調和をもたらし、単なる愛と思いやりの重要性がこの地球で共に生きている70億の兄弟姉妹の皆さんに共有されれば素晴らしいと思います。過去は過去であり、私たちは新しい未来を築いていくことができるのです」

ダス氏は、人々は協力し合うべきであり、宗教的実践の要に注意を向けるべきだという意見にも同意を示した。そして以前、法王が開催された会議の際、法王が深遠で重々しい会議の中でいかにユーモアを交えて話をされていたかに言及し、そういうバランスをどのようにして身につけてこられたのかについて質問した。

「何年も前、ロンドンでお茶会に招かれた時、一人の英国紳士が、私がよく “私にはわかりません” とあっさり口に出すことに非常に感銘を受けている、と言ったことがありました。正直であること、真実を語ることは重要です。そして、チベット人たちは大抵陽気な性格なのだと思います」

「それ以外にも、私にとって利他と思いやり(慈悲)の実践は、すべての人間を自分の兄弟姉妹だと認識することなのです。利他の行いは幸せの源であり、自己中心的な態度は終わりのない不安と怒りの源となります」

法王公邸よりインターネットを介してガール・ゴパール・ダス氏と対談されるダライ・ラマ法王。2020年7月14日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・ジャルペル / 法王庁)

「私は朝目覚めた瞬間に利他心、つまり菩提心の瞑想をします。利他の心は私の毎日の修行の最も重要な部分なのです。あなたは “アートマン(真我)” を信じていますし、私は “アナートマン(無我)” を信じていますが、私たちはどちらも食物と睡眠を必要としますし、どちらも慈悲心を育もうと努力しています。努力を惜しまなければ、日を重ねるごとに、年月を重ねるごとに、慈悲の心を高めていくことができます。これが長年にわたるインドの伝統の一つの側面であり、私はこの実践を素晴らしいことだと考えています」

最後に、ガール・ゴパール・ダス氏が尋ねたのは、法王の長い人生において学んできた最も重要なことを三つあげて欲しいということだった。法王はまず第1に、「シャーンティデーヴァ(寂天)が、困難に直面した時は、解決法があるかどうかを分析して見極めるようにとアドバイスされています。もし解決法があるのならそれを実践すればよいし、もし解決法がないのなら心配しても何の役にも立たないので、嘆く必要は何もないと言われています。これは非常に実践的なアドバイスだと思います」と答えられた。

「次に、教育改革に関しては、デリーの大臣が音頭を取って幸福のためのカリキュラムをデリーの学校に導入し、その価値観を育てることで子ども達がより良くより幸福になるよう努めています。そして第3に、古代インドの智慧を現代教育のカリキュラムの中にどのように取り入れていくべきかを話し合うセミナーを開くのはいいことだと思います。子どもたちがより幸福になるにはどういった教育が必要なのか、またそれを広く可能にしていくにはどのようにすればいいのかを検討することは、今、本当に必要とされていることだからです」

ガール・ゴパール・ダス氏は、法王が貴重な時間を対談に費やし、お考えを聞かせてくださったことに謝辞を述べ、「今日のお話は本当に役に立ちました」と語った。

法王は最後に、科学者たちが、地球温暖化の問題はさらに進み、私たち人間がコントロールすることなどすでに不可能になっており、いずれ私たちの水源であるチベットの湖や河川が干上がってしまうだろうと警告していることについて触れられた。そして、「残された時間の中で、争うことなく、共に幸福に暮らした方がよいでしょう」と強調された。

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