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ダライ・ラマ法王、麗澤大学ご訪問

2018年11月19日
日本、千葉

今朝ダライ・ラマ法王は、再び東京から千葉県に車で向かわれ、柏市にある麗澤大学に向かわれた。広々としたキャンパスの木々は秋の色に染まり、大学の記念講堂に至る道の両脇には数百名もの学生や職員が立ち並び、笑顔でチベットの国旗を振っていた。廣池学園理事長の廣池幹堂氏と学長の中山理氏が法王を暖かくお迎えし、講堂の中へと案内した。法王がステージに立たれると、1,700人以上の聴衆から割れんばかりの大きな温かい拍手が湧き起こった。

笑顔でチベットの旗を振りながらダライ・ラマ法王を歓迎する学生や職員たち。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

廣池学長は冒頭の挨拶の中で、法王が人類の幸福という同大学と共通の目標に向けて慈悲心と内面的な価値の重要性を広める活動をされていることについて感謝の意を表し、また、近代科学と仏教科学との対話における相互理解を深めるための法王のご尽力について賛辞を述べた。

法王は、勧められるまま大学のガウンと角帽を身に付けられ、麗澤大学より名誉博士号を受け取られた。学長はステージの後ろの席に着き、高齢の大学関係者に向かってステージを降りて前列の席に座るよう声をかけた。法王は、広い椅子の上に一人で座るのは寂しいですからと、廣池学長に隣に座るよう声をかけられた。

ダライ・ラマ法王に名誉博士号を贈呈する麗澤大学の廣池幹堂学長。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・ジグメ / 法王庁)

そして法王は次のようにお話を始められた。
「私たち人間はみな同等の立場にあるということを私は常に強調してきました。仏教では、この世界に存在する無数の生きとし生けるものたちは全て、苦しみを望まず幸福を求めていると私たちに教えてくれています」

「まず私は、いつもそうしているように、尊敬する年長の兄弟姉妹の皆さん、そして若い兄弟姉妹の皆さん、と呼びかけることで話を始めたいと思います。この大学から名誉博士号をいただいて大変光栄なことと感じていますが、それに値するようなことは何もできていないように思います。そして、この場でたくさんの若い学生の皆さんに会うことができてとても新鮮な思いがしています。私と同じような年代の人たちといると、どちらが先に行くかと考えずにはおれませんが、私はここにお集まりいただいたすべての方々にお会いできたことを本当に嬉しく思っています」

聴衆に向かって挨拶をされるダライ・ラマ法王。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「悲しいことに、この世界には非常に多くの苦しみが存在し、それは私たち人間が自ら作り出したものです。自然災害をコントロールすることはできませんが、貧富の差はそれに対する人々の無関心によって生じています。それは、私たちが自分を第一に考えがちな傾向にあるからです。近代教育は物質的な向上を図るという目的によって始まりましたので、思いやりや優しさなどといった内面的な価値を高めることについてほとんど関心が払われていません。約200年前にこのような近代教育が始まった時は内面的な価値について教える役割を宗教が担っていましたが、宗教の影響力が衰えてしまった今、慈悲心や他者に対する共感などの価値観の養成も近代教育が担っていく必要があるのです」

法王は英語でスピーチをされたが、日本語通訳の合間に法王は学生たちの表情を見て笑われ、日本人の生真面目さをからかって、彼らにもう少し笑顔を見せて欲しいと伝えられると、多くの学生はそれに応えて笑顔を見せた。

ダライ・ラマ法王のお話に耳を傾ける1,700人以上の学生と職員、保護者たち。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「他の人たちに会う時はいつも、私は単なるひとりの同じ人間にすぎないということを心に留めています。重要なのは人類は一つの人間家族だということをいつも忘れずにいることであり、私たちは全員、ひとりの人間であるということにおいてまったく同じなのです。それにもかかわらず、私たちは国籍、人種、宗教などの二次的な違いばかりに注意を向けてしまいます。そのような認識が私たちの間に境界線を引き、問題を作り出しているのです。インドではすべての主要な宗教が仲良く共存し、宗教間の調和がいかに繁栄しうるかを示す良き模範となっています。インドで暮らしてきた60年間、私はそのことに非常に感銘を受けてきました」

「次に、チベット人として、私にはチベット人のために働くという使命があります。しかし2001年には民主主義に基づいた選挙によって新しい政治的リーダーが選ばれ、私は政治的責任者としての立場から引退しました 。しかし、チベットの自然環境保護のためなら私にはいつでも声を上げる用意があります。チベット高原は北極や南極と同等なくらい気候変動に対する重大な影響を及ぼしているため、第三の極とも呼ばれています。チベット高原はまた、アジアに流れる多くの大河の源でもあるのです」

  • 注:2001年の選挙で主席大臣としてサムドン・リンポチェが選ばれ、ダライ・ラマ法王は政治的責任者としての立場を半引退された。その後、2011年の選挙でロブサン・センゲ氏が選出されると、法王は政治的な立場から完全に引退された。

「しかし、私が最も注意を払っている関心事は、チベットに伝わる生きた仏教の智慧を維持するということです。チベットでは仏陀の教えが完全な形で維持され、伝えられてきました。その重要な教えである仏教哲学、仏教心理学、論理学は、今日でも実用的価値のあるものとして引き継がれてきています。さらに、チベット語は現在、それらの教えを正確に伝えるのに最も適した言語となっています。仏教に基づくこれらの古代インドの智慧は、ナーランダ僧院の偉大な導師であったシャーンタラクシタがチベットの仏教王によって招聘された8世紀からずっと保護されてきました。この40年近くの間、私はその知見のいくつかについて現代の科学者たちとの対話を行い、相互利益のために分かち合ってきました」

1,700人以上の学生、職員、保護者たちに向かってスピーチをされるダライ・ラマ法王。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「ここにいる若い世代の学生の皆さんは21世紀に属する人たちです。教授の皆さんや私は20世紀に属する人間であり、私たちの時代はすでに終わりました。過去は過去であり、変えることはできません。しかし、これからやってくる未来をどのように形作っていくかはあなた方若い人たちの手の内にあります。今世紀の人であるあなた方は、今よりもっと幸せな世界、もっと平和な世界を構築することができるのです。20世紀はとてつもない暴力の時代でした。あなた方日本人は、10万人以上の人間が一瞬で命を落とした原爆を二度も経験されました。ひどく悲しいことです。しかし、20世紀の終わりには人間はもう少し成熟し、暴力にどれほど嫌気がさしたかを表現し始めたのです」

続いて質疑応答セッションに入り、学生から日本の食べ物の中でお好きな物はと問われた法王は、うどん、そして日本米で作ったおにぎり、嫌いなものは生魚だとお答えになった。また別の質問に対しては、苦しみや問題に直面した時は、広い視野に立ってものごとを考えてみることだと法王は言われた。狭い視野から見ていると耐えられないように見える問題も、視野を広げて様々な角度から見てみると、なんとか克服できるように見えてくるものだとアドバイスされた。そして、若い人たちはやさしさや思いやりなどの内面的な価値を高め、心を穏やかにする良き資質にもっと注意を払うようにと述べられた。心の平和を達成するために役立つ一つの方法は、人類はひとつの人間家族であるということを心に留めておくことである。

ダライ・ラマ法王による講演会の中で、法王に質問する学生とそれに答えられるダライ・ラマ法王。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・ジグメ / 法王庁)

ノーベル賞を授与された時の感想を聞かれると、法王は、受賞の知らせがあった日に北アメリカでジャーナリストに語ったことをひとつずつ話された。まず法王は、世界平和と同様に、個人の心に平和をもたらそうという努力が認められたと感じられたそうである。さらに、受賞後インドに戻った際に、法王はジャーナリストたちに「ノーベル平和賞の賞金は何にお使いになりますか?」と聞かれ、ババ・アムテのハンセン病療養所に満ちた明るい雰囲気に深い感銘を受けていたので、半分をそこに寄付し、残りの半分はデリーにある普遍的責任財団(Foundation for Universal Responsibility)を設立するために使いたいと述べられたのであった。

また、別の学生が人生の目的についてお尋ねすると、法王は次のようなお答えをされた。 「人生の目的は幸せになることです。未来がどうなるかについての保証はありません。希望を持って生きることであり、人生の目的は幸せと喜びを見つけることにあります。そのためには、穏やかな心を育むことと、現実的な考え方をすること、この二つが困難に直面した時の大きな助けになるでしょう」

次に中国との関係について問われると、「毛沢東主席が台湾とチベットを解放しようとした時、どうやらスターリンは、台湾を手に入れることは難しいだろうから、先にチベットを手に入れてはどうか、と提案したらしいのです。結局、中国当局内の強硬派は近視眼的な展望しか描いて来ませんでした。私たちは独立を求めているのではありません。利益が双方にある限り、私たちは中華人民共和国の枠組みの中に留まるでしょう」と答えられた。

講演会が終了し、聴衆に挨拶をされながら会場を退出されるダライ・ラマ法王。2018年11月19日、千葉県、柏市(撮影:テンジン・ジグメ / 法王庁)

瞑想についての質問が出ると、法王は一点集中の瞑想と分析的な瞑想について解説された。法王は毎日早朝の4時間を分析的瞑想の修行に当てておられる。煩悩は無知に根ざすものであり、慈悲の心は正しい根拠に基づいて生じるものなのだから、慈悲の心を強め、怒りを減らして心の平穏を達成することは可能なのである。

会場にいた人々の多くは、法王がステージを退場される時に手を振ってお見送りした。昼食会のため、理事長の邸宅に向かう途中で、法王は来訪記念に花の苗木を植えられた。法王は午後、車で東京のホテルに戻られた。


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