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インドと日本は協力して不幸な人たちを助けられる
―「46年来のチベットの友人」ヴィジェー・カランティ氏インタビュー

インドは過去60年にわたり、国を失ったチベット人難民に居住地を与え、その活動を支えてきた。その結果、チベット亡命社会は世界的に「難民社会の模範例」と見られている。

インド人ジャーナリストのカランティ氏は過去46年、そんなチベット難民社会を見守ってきた。カランティ氏にインドにおけるチベット、そして、インドと中国との関係について聞いた。


── チベット亡命政権がインドに樹立されて来年で60周年。目下、亡命チベット社会は「ありがとうインド(Thank You, India)」のキャンペーン中です。一方、インド人ジャーナリストのあなたは世界で「ありがとうダライ・ラマ」というトークショーを開催しています。お互いに感謝し合うのはなぜですか?

ヴィジェー・カランティ氏:

亡命チベット人はインドの歓待に感謝しています。1959年、インド政府がダライ・ラマと8万人のチベット人の亡命を認めたとき、インド自体、独立(1947年)から間もなく、まだ貧しい国でした。にもかかわらず、「来賓は神のように尊い」と考えるヒンズー教の伝統に基づき、亡命チベット人を歓待しました。実際、来賓(ダライ・ラマ)はまさに「神さま」だったわけですが(笑)。

── あなたはダライ・ラマの亡命を「仏陀がインドに帰ってきたようなもの」と表現されていますね。

ヴィジェー・カランティ氏:

ダライ・ラマが国を失ったのは気の毒なことです。ですがインド人のわたしにはとって、まるで2,500年の時を経て仏陀がふるさとに戻ってきたような気がしています。チベット本土の文化、民族アイデンティティ、宗教は中国の植民主義によって破壊されてしまいました。ですが今日、チベットの文化や仏教はインドで再生し、インド国内外にかつてなかったレベルで広まりつつあります。

ダライ・ラマは先見の明のある偉大なリーダー、オーガナイザーです。チベット人は彼の言うことならなんでも従います。その結果、亡命地でチベットの工芸、美術、僧院、音楽、宗教文学、演劇、舞踊、医学は復興し、それらはインドの多様な文化の一部となりました。本土のチベット人すら、本来の自国文化を学ぶにはインドに来なければならなくなっています。

ダライ・ラマは欧米や日本でなくインドを亡命地として選ばれました。そして、過去60年間の実績を通じて、インドに十分な恩返しをし、1959年に亡命受け入れを決めたネルー首相の判断の正しさを証明しました。

チベット文化が亡命地で花開いたことは、インドが多様な文化を持つ寛大な国であることの象徴です。インドはヒンズー教徒が多数派ですが、他のほとんどのイスラム教国を超える数のイスラム教徒を抱えています。キリスト教やユダヤ教も同様です。(イスラム教徒に迫害されている)ゾロアスター教徒が心安らかに住める国はインドしかありません。仏教の発祥地であるインドにダライ・ラマが亡命してきたことで、ヒマラヤ仏教もまた大きく活性化したのです。インドを一種の文化のブーケ(花束)と考えれば、チベットはそこに加わったもう一つの美しい花に例えられます。

── 政治面ではどうですか?

ヴィジェー・カランティ氏:

インド政府は敬意をもって難民を遇し、彼らが快適な生活を送れるよう尽力しています。ただし、チベット問題が中国との外交問題に発展することがないよう気を遣っています。チベット難民のせいで中印関係にヒビが入らないように。とはいえ、チベット人はインド国内で憲法で保障された自由な政治活動ができます。テロ行為は論外ですが、もちろん、「ありがとうインディア」のようなキャンペーンは自由ですし、反対されません。

ただし、インドの高官にはデリーのチベット人の式典に参加しなかった人もいます。チベットはインド政府にとってそれだけデリケートな問題なのです。中国が怒るので。一方、ダライ・ラマ法王や(チベット亡命政権の)ロブサン・センゲ首相が(中国が「南チベット」として領有権を主張する係争地である)アルナーチャルプラデーシュ州を訪問することをインド政府は許しました。そうすることで、「アルナーチャルプラデーシュ州はインドのものだ」と世界に示したのです。

── インドの独立や中華人民共和国の建国以前の長い歴史の中で、チベットはインドと中国の緩衝地帯でした。再びそうした状態に戻ることを望んでいますか?

ヴィジェー・カランティ氏:

在野の一市民であるわたしは個人的にチベットが自由を取り戻すことを望んでいます。チベットが好きだからですが、それ以上にインドを愛しているからです。自国のためにチベットを支援しているのです。

悠久のインドの歴史において、4000キロにわたるインド世界の北の国境の向こう側の隣人はつねにチベットでした。1インチたりとも中国と国境を接したことはありませんでした。国境のこちら側ではインドの通貨が、あちら側ではチベットの通貨が使われていました。印蔵間には郵便制度があり、チベットの切手が使われていました。ヒマラヤを往来する商人は許可証を北京に申請する必要などありませんでした。そうした状態が千年以上、続いたのです。

なのに、中印が直に国境を接するようになり、中国がチベットを完全占領した1959年からわずか3年のうちに中国とインドの間に戦争(中印国境紛争)が起きました。中国とインドが長い歴史を平和的に共存してきたのは、国境を接していなかったからで、チベットが緩衝国だったからです!わたしは再びそういう状態になることを望んでいます。中印国境は世界で最も軍事衝突のリスクの高い国境になってしまいました。この国境を保全するためだけに毎年、インドは巨額の軍事費を投じています。もしチベットが自由になれば、少なくともそうした圧力は軽減されるでしょう。

── 周恩来とネルーの時代、中印は米ソ冷戦下で「第三の道」を共に歩む友人同士にも見えましたが。

ヴィジェー・カランティ氏:

いえ、中印関係はずっと緊張が続いています。チベットがなくなり人民解放軍が中印国境に張り付くようになると牧歌的な関係は終わりました。最初、ネルーは周恩来の善意を信じていましたが、中国のチベット侵略で裏切られました。中印戦争の翌年、ネルーは死にました。

── あなたは最近、インドの週刊紙サンデイガーディアンに「ダライ・ラマのチベット帰還はハラキリ(自殺行為)」という記事を書かれていますね。どういう意味ですか?

ヴィジェー・カランティ氏:

ダライ・ラマは代表団を中国に派遣しています。亡命チベット政権が中国と交渉することになんの文句もありません。外交上、そうしたことも必要でしょう。ただ、タイミングや訪問の性質が問題です。ダライ・ラマがチベットまたは中国に完全に帰還するといったシナリオは最悪です。一時的訪問も政治的に賢明な選択ではないと考えられます。プラスよりマイナスが大きい。

まず、危険がなくなったので母国に帰るということになると、国際法上、難民の地位が失われるでしょう。第二に、現行の中国占領下のチベットに戻るということは、身の危険に晒されているという自らの亡命時の主張を否定し、「中国の下で幸福なチベット」という中国側の主張を認めることにつながります。中国は隣国に文明的に振る舞わない好戦的な共産主義独裁国家であり、基本的人権を認めない全体主義国家です。チベット以外にも多くの国々が中国に植民化されました。ダライ・ラマのような良識的な指導者でも中国政府の軍門に下れば、その信用が失われてしまうでしょう。ダライ・ラマが中国に行けば、中国に良識と正義の証明書を与えてしまうことになります。152名のチベット人が外国の占領に反対して焼身自殺を行なっている国の指導者が、どうやって占領者たちとうまくやっていけるでしょうか?

── ですが、まさに焼身自殺者たちはまさに、ダライ・ラマの帰還を願って自分の身に火を放っています。本土のチベット人はダライ・ラマに母国に戻ってもらいたいのではないですか?

ヴィジェー・カランティ氏:

彼らは中国の苛烈な政策に反対して抗議しているのです。問題はチベットの植民化です。彼らの声明を読めば、求めているのは中国の支配からの解放であることは明らかです。もろもろの願いの中で、一チベット人として「ダライ・ラマに会いたい」と言っているのです。彼らはインドまで来てダライ・ラマに会うことができない。だからといって帰還して中国の傀儡となったダライ・ラマに会いたいわけではありません。国家元首としてチベットに帰還してもらいたいのです。

── では、具体的にどんな条件なら帰還が可能になるでしょう?

ヴィジェー・カランティ氏:

チベットの伝統的な三地方(ウツァン、アムド、カム)における完全なる自治、チベット人の自由です。それ以上を望みたい人も、それさえ認められれば甘んじるでしょう。本当なら1951年以前の状態への回帰を望みたいところですが。

── あなたはインドのチベット亡命社会をフォローしているだけでなく、チベット本土各地を広く旅行しています。旅行の印象を教えてください。

ヴィジェー・カランティ氏:

インドのチベット人たちが本土の悲惨な状況について散々語るのを聞いて来たが、果たしてそれが真実なのかこの目で見てみたかった、というのが最初の訪問の動機です。そして、訪問した結果、中国はシステマチックにチベットの文化を破壊していることが確認できました。残念ながら、インドのチベット人たちが言っていたことは本当でした。本土のチベット人は恐怖の下で生きていました。物質的発展は中国人のもので、チベット人のためのものではありませんでした。

── 最後に日本に対するメッセージをお願いします。

ヴィジェー・カランティ氏:

過去数十年に「ならずもの国家」中国が台頭してきました。近隣諸国は占領された国の人々と団結して協力していく必要があります。幸運なことに日本とインドは共に力のある民主主義国家です。日本には科学技術と産業があり、インドには勃興する経済と優秀な人材があります。仏教の精神性という共通項もあり、補完性の高い関係にあります。協力することで、単に自国の国益のために中国に対抗するだけでなく、すでに中国に占領されてしまった国の人々を助けられるかもしれません。明日は我が身です。インドと日本には、文化の抹殺と同化の脅威に晒されている人々を助ける道義的責任があると思います。

ヴィジェー・カランティ氏原作の漫画「ダライ・ラマ ─ 平和の戦士」。英語、チベット語、ヒンティー語で発表されている。


ヴィジェー・カランティ氏プロフィール

カシミール地方出身のインド人ジャーナリスト。

過去48年にわたり、インド内外のめディアにチベット、中国、カシミール問題などについて記事を発表しているほか、「チベットデシュ(チベットの人々)」というヒンディー語のチベット専門誌を過去30年にわたり運営してきた。

写真家でもあり、数多くのダライ・ラマ法王やチベット本土の人々の写真を元に世界でチベット亡命社会についてのトークショーを行っている。

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