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ダライ・ラマ法王の若手専門家と学生への講演会 初日

2018年8月11日
インド、カルナータカ州バンガロール

講演会の冒頭で、開会の儀としてランプに火を灯されるダライ・ラマ法王。2018年8月11日、インド、カルナータカ州バンガロール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

今朝ダライ・ラマ法王は、「智慧の光」を意味するヴィディヤローケの招聘を受けて、若手専門家と学生に向けて講演をされた。ヴィディヤローケは、仏教も含めた古代インドの精神的伝統を現代に蘇らせようと尽力している会である。法王は会場に入られ、花や線香、音楽などによるインドの伝統的な歓迎を受けられると、開会の儀としてランプに火を灯された。同会理事のヴェール・シン氏は短い挨拶の言葉を述べて、ヴィディヤローケの支援者たちに感謝の意を表した。

聴衆がしんと静まりかえると、法王はお話を始められた。

「兄弟姉妹のみなさん、私がこの言葉を使うのは、今このとき生きている70億の人びとはみなひとつの人間家族だという感覚を私が常に維持しているからだということをまず明確にしたいと思います。もしすべての人々が穏やかな心を持ち、より平和な世界を築こうとするならば、他者に対するより大きな気遣い、つまり利他的な行いが必要です。利他的な行いは、内なる強さや自信をもたらします。その逆に、他者に対してあまり気を遣わず、自分こそ宇宙の中心であると思っている人は、他者への疑いの気持ちが生じてあれこれ苦しむことになってしまいます。たとえどれほど教育を受けていても、どれほど裕福であっても、心の平穏がなければ幸せにはなれないのです」

「現在起きている自然災害の多くは気候変動と関係していますが、自然災害の他にも、私たちは自分自身で作り出した多くの問題に直面しています。私たちは社会的な生活を営んで生きている動物として、生き延びていくために社会に依存しています。すべての宗教的伝統には、心の平穏を生み出し、愛や思いやり、自己規制を高める力があります。ですから宗教の名において、時に同じ宗教の信者であっても、人びとが対立するだけでなく互いに殺し合っているという事実は思いもよらぬ残念なことなのです」

若手専門家と学生たちに向けてお話をされるダライ・ラマ法王。2018年8月11日、インド、カルナータカ州バンガロール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私たちは精神的にも、感情的にも、肉体的にも同じひとりの人間です。だからこそ、人類はひとつであるという考えを推進することが私の第一の使命です」

そして法王は、第二の使命は異なる宗教間の調和を図ることであり、インドでは世界の主要な宗教が調和を保って共存していることに大いに感銘を受けている、と述べられた。

さらに法王は、ひとりのチベット人としてチベット人社会に対する責任を負う立場にあり、大多数のチベット人から信頼を寄せられているが、2011年以降その政治的責任を民主的に選出された指導者に委譲されている。法王は過去のチベットの制度について言及され、あまりにも多大な力があまりにも少数の人々の手にあったことから、改革が必要とされていたことはご自身が子供の頃にすでに明らかになっていた、と述べられた。そこで法王は、1952年か1953年に改革委員会を立ち上げられたものの、どんな改革も中国人流のやり方で行うことを中国側が望んだため、その成功はわずかなものでしかなかったと語られた。そのような理由から、亡命直後の1960年に、チベット人はようやく民主化への第一歩を踏み出すことができたのである。

講演会でダライ・ラマ法王のお話に聴き入る若者たち。2018年8月11日、インド、カルナータカ州バンガロール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「次に、第三の使命として、チベット語を含むチベット文化を確実に保全することが今の私の責任です。私たちが保持してきたナーランダー僧院の生きた伝統とは、論理を用いた調査と分析を重視するものです」

続いて法王は、アジアの大河川の多くがチベット高原に源を発することを鑑みるならば、チベットに対する懸念はアジア全体の自然環境にも及ぶことを付け加えられた。しかし、今の傾向が変わらない限り、山岳地帯の降雪量は着実に減少し、深刻な水不足につながることになるだろう。

ダライ・ラマ法王の講演会が行われたコンラッドホテルの会場の様子。2018年8月11日、インド、カルナータカ州バンガロール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「そして、つい最近加わった私の第四の使命は、古代インドの智慧を復活させることであり、特に私たちの心と感情の働きについて理解し、より多くの人たちに関心を持ってもらうことです。現代のインド人たちはこの智慧に対してあまり注意を払っていませんが、心の科学と呼ばれるこの智慧は、宗教に触れることなく学ぶことのできる知識と教養であり、誰もが破壊的な感情(煩悩)を克服するために活用することができます。肉体的な衛生観念を守ることで健康を維持できるのと同じように、感情面における衛生観念を育むことによって精神苦や煩悩に取り組むならば、健全な心を培い、維持することができるのです」

法王は聴衆からの一連の質問に答えられて、教師は生徒たちの生涯にわたる幸福について考えることが効果的であるとし、あたたかい心の実例を、教師自らの行動で示す必要があると勧められた。また、仏陀の智慧の顕現である文殊菩薩の真言「オーム・アラパツァナ・ディ」を自分の生徒たちに教えるために、この真言の口頭伝授をお願いした教師への助言として、インドとチベットの関係を解説するにあたり、「チベットは雪の国であるにも関わらず、インドの光が届くまでは暗闇の中にあった」という15世紀のチベットの導師の言葉を引用された。

講演会の中で聴衆からの質問にお答えになるダライ・ラマ法王。2018年8月11日、インド、カルナータカ州バンガロール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

同じ質問者が、仏教はヒンドゥー教に対する憎しみに基づいているのかどうかを尋ねると、法王は、この2つの宗教的伝統は、戒律、一点集中の瞑想である「止」(シャマタ)、分析的な瞑想である「観」(ヴィパッサナー)という3つの修行を共有していると説明された。そして、あるスワミ(ヒンドゥー教の宗教指導者)と交わしたバンガロールでの会話を引用されて、この2つの宗教的伝統が異なる点は、アートマン(永遠なる自我の存在)かアナートマン(無我)かという立場の違いであると説明された。しかし、法王はそのスワミに、あなたはアートマンを信じ私はアナートマンを信じているが、これは個人的に選択すればよいことであると話されたそうである。

次に、21世紀を生きる世代の一員として、世界の未来を象徴する一人の少年が、生態系への不安を感じていることを訴えると、法王は、今、生態系を保護する措置が取られるなら、世界は30年後、40年後にはよりよい場所になるかもしれないと話された。また、核兵器廃絶を含む非武装化については、価値ある目標ではあるが、その達成には、まず自分の心の中の内なる武装解除を広範に実践することが必要であると述べられた。

講演会でダライ・ラマ法王に質問をする少年。2018年8月11日、インド、カルナータカ州バンガロール(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、多くの人びとがIT企業に勤めている町では、このような技術は人の心にその源があり、人間が情報を制御してはじめてその技術が役に立つということを覚えておくことが重要であると力説された。

午前の最後の質問は、人生の目的に関するものであった。法王は、明らかな人生の目的は幸せと喜びを見つけることであると述べられた。たとえ何も保証されていなくとも、私たちは希望を抱いて生きており、もし希望が失われれば私たちには何も残らず、自殺願望に陥るかもしれない。そこで、結論として明らかに言えることは、人生の目的は幸せと喜びであると述べられた。ここで法王が、そろそろ昼食の時間のようだと告げられると、聴衆は一斉に拍手を送った。

法王は明日、ヴィディヤローケの要請を受けて、より一般的な内容の講演をされる予定である。


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