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高野山大学でご講演

2016年11月15日
高野山

高野山全体が濃い霧と静寂に包まれた早朝、ダライ・ラマ法王は滞在先である金剛峯寺を出られ、高野山大学松下講堂黎明館に向かわれた。

朝霧の中、講演会場に向かわれるダライ・ラマ法王。
2016年11月15日、高野山(撮影:ジグメ・チョペル)

この日、法王は「21世紀における仏教徒の使命」と題して9時から講演を行なわれることになっていたが、開始時刻より20分以上早く会場に到着され、少しでも早く登壇して聴衆の質問に応えることを望まれた。法王が、席を埋めつつある聴衆に向けて質問を呼びかけられると、たちまち質問者の列ができ、その数は19人に上った。質問者の多くは日本人女性であったが、若い僧侶に向けたメッセージや富裕層と低所得者層の格差の問題など、法王はひとつひとつの質問に丁寧に耳を傾けては意見を述べられた。

法王は質問に答えられるなかで、他者に手を差し伸べることにおいてキリスト教徒の修道士や修道女がとりわけ秀でていること、私たち仏教徒も彼らをお手本にすべきであることを強調された。そして、各個人が裕福になるか貧困になるかを決定する要素としてカルマ(業)が関わってくる場合もあるが、貧しい人々に対して手を差し伸べるのは富裕な人々がすべきことのひとつであり、恩着せがましい方法でするのではなく、人間として同じ仲間であるという精神においてすべきである、と語られた。また、貧しい人々も「やればできる!」という自信や確信を培うべきであると述べられた。苦しみを抱えている人にどのように手を差し伸べたらよいでしょうか、という質問に、法王は、精神的な苦しみは身体的な苦しみよりも重く、ひと目ではその苦悩がわからない場合もあるので、よく注意して心を配る必要があることを強調された。また、難民であることの意味にふれて、自分にできることをやっていこうと決意して進むことの大切さを強調すると、次のように述べられた。

「仏陀は有情のなした不徳を水で洗い流すことはできません。有情の苦しみをその手で取り除くこともできません。自ら得た悟りを他者に与えることもできません。ただ、真如という真理を示すことで有情を救済されているのです」

そこで法王は、高野山真言宗総本山金剛峯寺第412世座主の松長有慶師、高野山大学学長藤田光寛師、萩生寺住職斎藤友厳師に壇上の椅子を勧められた。態勢が整い、ますます活気が増すと、法王は、ここに来ることのできなかった仲間たちを代表して中華人民共和国から講演を聴きにきたと述べた青年に向かって力強いメッセージを贈られた。また、愛する人の死をいかに乗り越えるべきかという質問に、法王は次のように助言された。「死は誰もが経験しなければならないものであり、私たちの人生の一部です。それを理解していれば、死の衝撃を乗り越えることができるのではないでしょうか」

講演開始前に次々と参加者が会場に到着する中、
ダライ・ラマ法王に質問をしようと列をなす参加者たち。
2016年11月15日、高野山(撮影:ジグメ・チョペル)

「私自身、私の恩師で家庭教師であったリン・リンポチェが亡くなられたときは、深く悲しんだものです。リン・リンポチェは私にとってなくてはならない大切な支えであったからです。しかしそのうち、“悲しんでいても誰のためにもならないではないか。ならば悲しみを糧として、恩師が私に助言してくださったことをひとつでも多く実行するほうがずっとよいではないか。人間は、悲しみを利他の力に変えることができるのだ”と思うようになったのです。昨今は、“私の国、私の国家”と他者と自分の違いを強く強調する傾向がありますが、そのような考えかたは時代遅れです。地球温暖化の問題においても、“この国、あの国”という区別はありません。地球温暖化は人類全体の問題であり、私たちのだれもがこの問題の渦中にあるからです」

「非現実的な考え方に基づいていくら努力をしたところで、思い通りの結果は得られません。思い通りの結果を得たいなら、現実に即した行動を取らなければなりません。そして現実を正しく知るためには、偏見にとらわれず、開かれた心で、広い視野に立って物事を考えることです」

法王は1時間以上かけて丁寧に聴衆の質問に答えられ、本日の講演の主題である「21世紀における仏教徒の使命」について語り始められた。法王ははじめに、仏教がナーランダー僧院の伝統に基づいて育まれてきたこと、それは信仰というよりもむしろ自分の心でよく考え、分析し、検証することに重きが置かれてきたことを強調された。実際、ナーランダー僧院の学匠たちのなかには、論拠を示すことによって仏陀の教えを否定した者たちさえいたのである。

「大切なのは、論理的に考え、検証することです。このようなナーランダー僧院の伝統に基づいて育まれてきた仏教は、実証に基づいて進歩を遂げてきた科学的な方法と非常によく似ています。お経を唱えているだけが仏教ではないのです」

法王は、過去30年間にわたって科学者たちと対話を行ない、仏教の思想を科学的な論拠に基づいて検証されてきたことを説明された。そして、ビッグバンをはじめとする宇宙論が仏典にも記載されていること、神経生物学の見解が仏教の心と脳に関する見解と一致すること、量子物理学の見解が仏教の古典であるナーガールジュナ(龍樹)の著作の見解と一致することを説明されて、古代インドの心理学が遠い昔からきわめて発達していたことを強調された。

高野山大学松下講堂黎明館で講演をされるダライ・ラマ法王。
2016年11月15日、高野山(撮影:ジグメ・チョペル)

「自分に何ができるのか、これをよく考えなければなりません。私たちはからだの健康についてはよく論議し、十分気をつけていますが、心を健全に保つためにも同じような努力をしているでしょうか。どうすれば、 怒りや憎しみ、恐れといった悪しき感情をなくし、健全な心を育むことができるのでしょうか」と法王は述べられた。これは、法王が南インドの僧院で学ぶ約1万人の僧侶や尼僧たちの教育課程に現代科学を取り入れられた理由でもある。

講演の結びに、法王は次のように述べられた。

「私たち仏教徒がすべきことは、人類全体の幸せのために何ができるのかを考え、行動することです。そこで今後は、日本の研究機関や大学、僧院と対話の場を持ちたいと願っています。ナーランダー僧院の伝統に基づいた教えについて話し合うことは、現代科学に寄与することにもなるからです。さらに学び、さらに協力を深めること、これが私の願いです」

法王は、茶目っ気に富んだ身振りで飛行機の出発時間が迫っていることを示され、別れの挨拶をされた。そして車に乗り込まれると、真昼の日射しに照らされた道を一路大阪へと向かわれ、次の予定が待つ東京へ飛び立たれた。


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