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第56回チベット民主記念日における亡命政権内閣(カシャック)声明

2016年9月2日

第56回目のチベット民主記念日を迎え、第15期内閣ならびに世界各地のチベット人の同胞を代表し、チベット亡命政権の民主制度を確立し、導いてくださった偉大なるダライ・ラマ法王に敬意と感謝の念を捧げます。また、チベット本土および亡命中のチベット人の同胞、チベットを支援して下さる政府機関ならびにNGOの皆様、そして本日ここにお集まりくださった皆様に、心よりご挨拶申し上げます。

チベットが中国に占領される以前、ダライ・ラマ法王は、チベットにおける政治と政府の体制を、現代という時代に即したものに整えるための改革委員会を設置されました。しかしながら、様々な障害があり、実行には至りませんでした。それでも、インドにご到着後、法王はご自身の展望に基づき、亡命チベット人の政治制度を民主的なものに形作られました。

1960年のこの日、チベット亡命政権が設立され、チベット人が居住する3地域、チベット内外の各宗派から選ばれた議員がその責務を担うこととなりました。それ以降、チベットの民主制度は成長を続け、成熟した形となりました。すべてはダライ・ラマ法王の56年間にわたるご指導やご尽力の賜物です。ここに、全チベット人を代表し、ダライ・ラマ法王に心よりの感謝の念を捧げます。

1960年7月1日、インドのダルハウジーにて、ダライ・ラマ法王はご自身の民主主義のお考えを示されました。法王は、「行政区、地方、異宗派間に偏見が存在するのは非常に危険であり誤りです。相互の調和を推し進め、鉄の玉のようにしっかりと連合し続けなければなりません」と述べられました。1961年に、未来のチベットのための民主憲法の草案が書かれ、1963年にダライ・ラマ法王がこれを公布されました。主に普遍の価値観と民主主義の理想に基づく憲法です。法王のお考えで、ダライ・ラマの権力をはく奪することができると加えられました。1964年に女性の国会議員が選出され、これは女性が選挙権を持たない世界のほかの民主国家に比べると大きな政治的な進歩となりました。1976年にボン教から国会議員が選出されました。

1991年に、法王は亡命チベット人憲章を定められ、更なる民主化を宣言されました。亡命チベット人憲章は、チベット議会によって採択され、ダライ・ラマ法王により施行されました。この憲章により、チベット議会はダライ・ラマ法王による候補者のご指名ののち、内閣を選出することができました。1992年、チベット最高司法委員会が結成され、民主主義の3本柱が確立されました。

2001年に、法王は半引退を表明され、内閣の最上級閣僚である主席大臣(カロン・ティパ)の初めての直接選挙を求められました。その10年後にはご自身の政治的責任をすべて選挙により選ばれた政治的指導者に移譲するという歴史的な宣言をされました。2011年8月8日、法王はチベットの政治的指導者の就任式において、ご自身が長年求めてこられたチベット人に民主主義をもたらすという目標を達することができたと述べられました。チベットの有権者たちは積極的に選挙に参加し、総選挙の投票率は飛躍的に伸びました。2001年には35,184人だった投票数も2011年には49,184票、2016年には58,742票となりました。しかしながら、最近行われた選挙では、内輪のもめごとや地域間の不和などがあり、チベット人同士の結束に負の影響を与え、法王を失望させてしまいました。法王の81歳のお誕生日に内閣が打ち出した声明を思い出し、チベット人同士の結束を強化し、我々の独特の民主主義の理想の姿を実現するために選挙の改革を行ってまいります。

亡命先での自由化運動は民主制度に従ったもので、これは我々独自のものです。世界中からも我々の民主主義の成果が認められています。最近では国家民主主義基金(NED)がロブサン・センゲ主席大臣を表彰し、ダライ・ラマ法王が提唱されたチベット亡命政権の民主主義の成果を認めています。この表彰は米国首都のワシントンDCで、ダライ・ラマ法王14世もご出席のもと、行われました。NED理事のマーティン・フロスト氏はダライ・ラマ法王のチベットの人々に対する指導力を次のように称賛しています。

「ダライ・ラマ法王とチベット亡命政権の指導のもと、チベット人社会は繁栄してきました。亡命チベット人はかつて、インドやネパールなどの避難所で暮らしていましたが、今は世界中で生活しています。亡命から60年近くを経て、同化の圧力を受けても、チベット人はその民族意識と社会を維持してきました。
チベット亡命政権はこの60年以上にわたって大きく成長しました。亡命政権の核となったのは1960年からの選挙による議員選出と、2001年以降シキョンと呼ばれる主席大臣の直接選挙という民主的価値観を主眼においたことです」

同様に、民主主義の市民として、我々は民主主義により権利が与えられている一方で、責任を負うことも求められているという事実を理解しておく必要があります。1枚の硬貨の表と裏のように、権利と責任は密接に関係しあっています。民主主義により、言論や表現の自由を与えられ、意見の多様性も尊重されなければなりません。しかしこれらの権利や特権は濫用されるべきものではありません。民主主義により権利や自由を与えられますが、その運用における責任も求められます。ダライ・ラマ法王への中傷や亡命政権への根拠のない批判はチベット人の民主主義に与えられた特権や信条を貶めるものです。

シュクデンの名のもとに活動し、ダライ・ラマ法王の偉業を中傷する過激派のグループを我々は徹底的に非難してきました。中国政府による法王を批判するデモも遺憾に思いますが、こうした問題にも対処していくことを誓います。

中国によるチベット占領以降、人権が侵害され、宗教の自由が奪われ、また中国政府の方針によるチベット人の中国化で、チベット人の民族意識が失われています。今日までに144人にものぼるチベット人が中国の政策に対して焼身抗議を行いました。チベット本土でチベット人のために働く活動するチベット人たちは虚偽の訴えにより逮捕、投獄されています。2015年にはチベット仏教の指導者テンジン・デレック・リンポチェが13年の虚偽の訴えによる獄中生活の末、亡くなりました。

中国の政策によるインフラ整備、鉱業、急速な都市化はチベット全域における水資源の質、量ともに影響を与え、その下流域の国々の環境も悪化させました。チベット高原での中国の大規模な水力発電所や水資源プロジェクトにより、チベットでも水質に影響が見られるようになりました。ダムが今後も現状のペースで作動を続ければ、14億人近い下流域の人々の水資源が大きく脅かされます。

中国では、市民の社会グループ、弁護士と民主主義活動家の取り締まりや任意逮捕、失踪が頻繁に発生しています。米国や連邦議会議員などを含む独立人権保護団体や多くの政府が、中国ならびに中国政府に管理された地域の状況に関して遺憾の念を表明しています。チベット自治区共産党書記として呉英傑氏が就任しましたが、チベット本土での中国政策が失敗であったことを表すもので、チベット人の真の目的を妨げるものと思われます。

世界で相次いで様々なことが発生していますが、中国は世界のステークホルダーとしてその責任を負っていないことが明らかになってきています。中国が国際法を無視することで、その近隣諸国に紛争や妨害を引き起こしており、アジアにおいて中国が傲慢な存在になりつつあります。中国は今日の世界で最も尊ばれる仏教指導者であるダライ・ラマ法王を招請させないよう、世界のリーダーや宗教指導者たちに圧力をかけています。我々はそうした中国政府の独裁主義的な行為や嫌がらせに対して真っ向から反対し、世界情勢の中で責任のあるステークホルダーになるよう呼び掛けていきます。

パンチェン・ラマのゲンドゥン・チューキ・ニマが1995年に誘拐されてから、中国政府が指名したギェンツェン・ノルブがチベットのシガツェでカーラチャクラ灌頂を授けました。地元のチベット人たちはその灌頂に参加することを命じられました。チベットの宗教の自由が奪われている実例です。

中国も含めた世界中からの信者により自発的に建設された世界一大規模な仏教都市であるラルン・ガルは今、中国当局の手で解体されようとしています。この施設には1万人を超える信者が暮らしていますが、当局は解体後には5000人に制限しています。施設の解体に胸を痛め、政府の命令による解体工事を目の当たりにすることに耐えられず、リンジン・ドルマ、ツェリン・ドルマ、セムガの3名の尼僧が今年7月以降に自殺を図りました。ラルン・ガルの解体はチベット文化と宗教的な生活を抑制しようとしたもので、チベットの人々の基本的な宗教の自由と民主的な権利を踏みにじるものです。

最近の報告によると、中国政府は焼身抗議を分離主義者による犯罪として扱っています。チベットの僧侶たちはそうした犯罪を法律の教科書で学ぶよう強要されています。過去には政府は焼身抗議者の家族を有罪としていました。そうした専制的な措置はチベット本土の状況を悪化させ、中国政府の抑圧的な政策を証明するものにしかなりません。それよりも、チベット本土のチベット人の正当な不満に耳を傾け、その人権を擁護することでチベット人の良心に訴えることができるでしょう。

チベットの問題は政治的な解決策が必要ですが、それには中道政策は相互に有益です。チベット亡命政権は中道政策を固く維持し、チベットの長年の問題を平和的に解決できるのは対話のみであると確信しています。今年7月に行われたチベットの交渉のタスクフォース後のプレスリリースで示したように、ダライ・ラマ法王の代理人団と中国政府との対話は必ず実現すべきものであると考えます。カシャックはダライ・ラマ法王のお考えを推し進めるために民主制度を強化し、亡命政権の機能の効率化を図り続ける所存です。

この特別な機会に、国際社会、特にチベットをご支援くださる団体、個人の方々に、チベット人民の正当で非暴力的な戦いをご支援いただいておりますことに深く感謝の意を表します。独立70周年を迎えたインド政府とインドの国民の皆様に対し、お祝いを申し上げるとともに、ダライ・ラマ法王に最高の敬意を払われ、チベット人を温かく迎えてくださっていることに感謝申し上げます。最後に、ダライ・ラマ法王のご長寿と、チベット問題の早期解決をお祈りいたします。


2016年9月2日

チベット亡命政権内閣

(翻訳:植林秀美)

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