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チベット民族に残された最後の手段

(2012年7月13日 ロブサン・センゲ ワシントン・ポスト

2009年以降、43名のチベット人がダライ・ラマ法王帰還の願いを叫びながら、そしてチベットの自由を求めながら焼身抗議を行ってきた。その中には僧や尼僧、遊牧民や学生、そして二人の母親も含まれている。そのうち11名を除き、みな亡くなってしまった。それでも彼らの行動とチベット問題が相応の注目を集めているとは言えないのが現実だ。それどころか中国政府は彼らを非難し、焼身抗議の根本原因の究明を回避し続けているのである。

極端な抗議行動は止めるようにという、インドを拠点にする中央チベット政権の度々の訴えにも拘わらず、チベット人による焼身抗議は後を絶たない。私たちチベット政権もまた、正義を信じる世界中の人々に彼らの叫びを届ける使命を感じている。世界各地のチベット人が犠牲者を悼んでいる。

中国共産党は彼らの焼身抗議にテロ行為のレッテルを貼りつけた。滑稽な話しである。自傷行為が暴力に該当するのか、あるいは行動自体ではなく動機がその本質を決定するのかというのは仏教哲学においても複雑な問題だ。しかし明らかなのは、彼らの目的が自分以外の誰かを傷つけることではないということだ。

彼らの焼身抗議を理解するためには、中国では表現の自由や一般的な抗議運動の自由が認められていないという事実を知ることが極めて重要だ。一般的なデモに参加するだけでも拘束、拷問、果ては死につながる危険をはらんでいる。2月に中国旧正月の祝賀中、ドラゴ、セルタ、ンガバ(伝統的にアムド地方として知られている地域、現青海省)で数百名のチベット人がデモを行った。それに対して中国政府は無差別発砲し、6名が犠牲となっている。

過激とは言えないデモも阻止されてしまったチベット人は、反政府抗議行動として自らに火を放つようになった。そのほとんどは50歳未満のチベット人である。1959年、中華人民共和国政府は『社会主義の楽園』を約束してチベットを占領した。その占領下で生まれ育った彼らは、中国の政治制度、教育、経済そして文化の恩恵の『第一次受取人』になるはずだった。その代わりに彼らは失敗した中国政府の対チベット政策の攻撃対象にさせられた。同政策の基盤になっているのは、政治的弾圧、社会的周辺化、文化の同化そして環境破壊である。それらこそが抗議行動とそれに因る死の根本原因なのだ。中国政府が対話を通じてチベット問題の平和的解決を目指すというのなら、焼身抗議は直ちに止むだろう。

中国政府は外国人観光客とジャーナリストをチベットから完全に閉め出してしまった。チベット自治区外に居住するチベット人も追放されている。ある中国人の学者が年頭に同地域の首都について次のように記している。「そこにはチベット人よりも多くの漢民族が、僧よりも多くの兵士が、そして窓よりも多くの監視カメラが存在していると言われている。」残念なことだが、今チベットでは死者を悼む昔ながらのバターランプより銃の方が数の上で圧倒的に勝っているのである。

チベット人による焼身抗議は世界的かつ歴史的事象の一つである。ベトナムの僧侶たちがベトナム戦争に反対して焼身抗議をし、それを支持したアメリカのクエーカー教徒の一人が自らに火を放ったのは有名な話しである。1969年には共産主義体制に反対してチェコスロバキアで男性が焼身抗議を行っている。2010年にはチュニジアで果物を商う無職の青年の焼身自殺がジャスミン革命のきっかけとなった。その後民主化運動が拡大し、同様の抗議行動がチュニジアだけでなくアラブ各国で報告された。中国でも政府に反対する中国人が焼身抗議を行っている。

チベットに特有なのは、その悲劇の件数の多さである。これだけの人間が最後の手段として焼身抗議に訴えているというのに、それに対する国際社会の反応は、激しい反ベトナム戦争の動きやアラブの春に見られた力強い支援のネットワークとは程遠いものだ。

中国にチベットとの対話再開を要請した最近のヒラリー・クリントン国務長官による声明をはじめ、国際社会によるどのような声明もチベット民族は歓迎する。しかしチベットの悲劇を阻止するためには現実的なアクションが必要だ。世界が中国の発する騒音を遮断して、これ以上の弾圧は許されないというチベット民族の叫びに耳を傾ける時は来た。チベットの声は彼らの指導者、ダライ・ラマ法王のご帰還を切望している。1959年の亡命以来、世界中の数えきれない人々が法王にお目にかかる機会を得てきた。しかし、チベット内部の人々にはそれも許されていないのだ。

民主主義は普遍的な価値として基本的人権と自由を認めている。だからこそ私たちは国際社会に対し、チベットの状況がこれ以上悪化する前にこの問題に介入してもらえるよう要請しているのだ。今月予定されている中国との人権に関する年次対話において、米国国務省は直ちにチベットへの抑圧を緩和するよう中国当局に強く迫るとともに、悲劇的に件数が増加しているチベット内部における焼身抗議の原因究明のための調査団の派遣を要請すべきである。

(翻訳:中村高子)

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