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焼身抗議に揺れるチベットの決意

(2012年4月18日 スー・ロイド・ロバーツ記
BBCニュースナイト、ダラムサラ)

中国支配に対する抗議のなかで行われている一連の焼身が、チベット仏教最高指導者と非暴力の道に対する亡命チベット人の信念を揺るがしている。

ダライ・ラマ法王は昨年76歳のとき、政治的指導者から引退し500万人のチベット人の精神的指導者としての役割のみを継続する、と発表した。

昨年だけでも32件もの焼身抗議が行われているが、これについてダライ・ラマ法王は不思議なほど口を閉ざしてきた。

「これはじつに政治的な、慎重を期する問題です」とダライ・ラマ法王は厳粛な面持ちで語った。「もし私が関われば、政治的指導者を引退したことが無意味になってしまいます。私が中国政府にどんな発言をしようと、たちまち彼らはそれを巧みに利用するのです」

ダライ・ラマ法王は50年以上にわたって非暴力を掲げ、「中道」の政策を貫いてきた。そして同時に、中国政府とダライ・ラマ法王の特使による継続的な対話を続けてきた。

しかし、ダライ・ラマ法王はそれが時間の無駄であったことを認めている。この2年間、一度も対話が行なわれていないからだ。

「われわれのアプローチは多かれ少なかれうまくいっていません。中国政府とのある種の相互理解、そしてチベット本土のある種の改善に到っていない点について言えば、完全に失敗です。

中国の指導者たちはじつに愚かで、心が狭く、独裁的です。彼らは口しか使いません。耳を使わないのです。他者の意見をまったく聞こうとしません。政府に関していう限り、彼らはじつに、非常に冷酷です。彼らはチベット人の本当の思いを理解していないのです」

その口調には怒りが現れていた。20年間にわたりダライ・ラマ法王をインタビューしてきたが、これほどダライ・ラマ14世らしからぬ法王を私は初めて見た。

ダライ・ラマ法王は中国政府にうんざりし、その信奉者もまた然りである。

何十年もの間、ダライ・ラマやダライ・ラマの政策を批判することは不敬とされてきた。だがそれはもう過去の話だ。

影響力を持つチベット青年会議のラサン・ツェリン元代表(60歳)は、「現在の法王の政策と地位は現実と向き合っていないのではないか、それでチベット人を焼身に追い込んでいるのではないか、と私は疑っている」と語る。

亡命チベット議会のカルマ・チョペル前議長は、さらにこの警告を深く受け止め、「非暴力はこれまでうまくいっていません。暴力が唯一の選択肢になるかもしれません」と語った。

捨て身の抗議

中国のチベット地域に住む僧や尼僧を中心に、昨年だけでも32人が焼身抗議を行なっている。

中国四川省から来たばかりのチベット人のノルブは、勇敢にもヒマラヤを越える危険な旅をしてインドに逃れてきた。ノルブは語った。「世界中の人たちに今チベットで起きていることを伝えるには、ここへ来るしかなかったのです」

「私がンガバ(アバ)の町で買い物をしていたときのことです。突然、炎に包まれた二人の僧侶が通りを走ってきました。一人はチベット国旗を掲げて宗教の自由とダライ・ラマ法王の帰還を叫んでいました。
その数分後に警官と消防士と兵士たちが来て火を消し、二人の僧侶を軍のトラックの荷台に放り込みました。治療のために二人は病院へ連れて行かれるのだと聞かされましたが、病院を訪ねることは誰にも許されませんでした。だから二人が生きているのか死んでしまったのかさえもわかりません」

ノルブが目撃した焼身抗議は昨年9月に行なわれた。二人はロブサン・ケルサンとロブサン・クンチョックで、ともに18歳だった。

このような捨て身の行動はほとんどすべて同じパターンで行われている。僧侶あるいは尼僧(一般市民は今のところ二人だけだ)が、灯油を飲み、そして全身にかぶってから自身に火をつけ、燃え立たせている。
止めに入る警察をてこずらせるために有刺鉄線を体に巻きつける者も多い。この地域ではすべての警察官が消火器を携帯している。

昨年だけで32件の焼身抗議が起きている。私はノルブに、それほどまでにこの話を伝えたかったのなら、四川省から来るのにどうしてこれほど時間を要したのか訊ねた。
ノルブの説明によれば、焼身抗議を行なった人たちの大多数が出身とするキルティ僧院の周辺には、3つの軍隊が駐留し、包囲しているという。

「治安部隊と私服警官があらゆる場所にいます。すべての道に検問所があるんです。インターネットカフェは閉鎖され、電話局すら閉鎖されています。私たちチベット人はひと部屋に閉じ込められて、その部屋に鍵をかけられてしまったのと同然の状態なのです」

中国政府は部外者がこの地域に入ることを禁じている。中国政府は、自分たちは発展の遅れたチベット地域に開発と近代化をもたらしていると思い込み、それを外部勢力、とりわけダライ・ラマが騒ぎ立てているといって非難している。

今チベットで起きていることを知ることができる唯一の方法は、YouTube上の恐ろしい焼身抗議のビデオだけだ。これらの映像は、フリー・チベットやインターナショナル・キャンペーン・フォー・チベット(ICT)などチベット支援グループのウェブサイトにも掲載されている。

ジャーナリストたちは、より多くの情報を求めてインドのダラムサラに向かう。ダラムサラでは15万人のチベット人がダライ・ラマ法王とともに亡命生活を送り、祖国で起きている残酷な出来事を注視しているからだ。

チベット本土のすべての主要僧院は、同等の僧院をインドに有している。ダラムサラのキルティ僧院を訪れた私は、カニャ・ツェリンとロブサン・イシという二人の僧侶のもとへ行くよう指示された。

僧院では、シンバル、ベル、巨大なチベットホルンの響きに伴われて、中世を思わせる声明の声が響いていた。その同じ僧院で、ツェリンとイシはアップル社のMacとスマートフォンを手に仕事をしているのだ。

僧院の最上階にある二人がいる部屋に着くと、また別の焼身抗議が起きたらしく、二人は対応に追われていた。

スマートフォンを耳にあて、中国のキルティ僧院の僧侶と話しているツェリンが、「名前はロブサン・ツルティム。19歳の男性」と、キーボードを素早く叩いているイシに伝える。「スローガンを叫んだのですか? 何が起きたのですか?」

警察はロブサン・ツルティムをトラックに放り込んだが、それでもロブサンは手を振り上げて「チベットに自由を!」と叫んでいたという。「亡くなっていないのですね? 安否の確認は?」

翌日、ロブサン・ツルティムは亡くなった。

二人は異なる3つの筋から情報を得ると、チベット支援グループとジャーナリストにニュースを送った。

それから二人は立ち上がり、狭い階段と廊下を通って僧院長のキルティ・リンポチェの部屋へと向かった。キルティ・リンポチェは中国のキルティ僧院の精神的トップでもある。知らせを聞いたリンポチェの顔が苦痛にゆがんだ。

「今起きている焼身は僧侶のみならず、すべてのチベット人の苦しみの表明です」とリンポチェは言った。

かつて毛沢東は、「抑圧ありしとき、反乱生ず」と言った。

チベット青年会議のテンジン・チョーキー総書記は、ダラムサラの事務所でコンピューターの前に座り、チベットから送られてくる映像をチェックしていた。

その映像から、このほどの焼身抗議のニュースが四川省ンガバ(アバ)に広まり、何千ものチベット人がデモに集まったことがわかる。

彼女はコンピューターのスクリーンに映し出される群衆の言葉を聞き取ろうとスクリーンに顔を寄せて言った。「聞いてください。チベットの人たちが言っています。彼らは自由と独立を求めています。私たちは恐れています。これまでは非暴力でしたが、手に負えない事態に陥ってしまうかもしれません」

その晩、また新たな焼身抗議の知らせがダラムサラに届いた。僧侶、尼僧、一般の人たちが道に出て、キャンドルを灯して行列を作った。

かつて、チベット人が進むべき道を議論したのは亡命中のダライ・ラマ法王とそのチームだった。

しかしチベット本土のチベット人たちが自ら主張している今、亡命中のチベット人はキャンドルと祈りで応じるほかない。

(翻訳:小池美和)

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