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チベット民族蜂起35周年 3月10日声明

(1994年3月10日)

本日、我々の民族蜂起35周年記念日を迎えるにあたり、中国政府との誠実なる交渉を通じてチベット問題に平和的かつ現実的な解決をもたらすため、我々が14年間に亘り行ってきた努力について、ここで総括してみたいと思います。我が国と国民に自由,平和,尊厳を回復するため、私は常に現実的かつ忍耐強く、また将来展望に沿った形で努力を重ねて参りました。

この14年間私は、交渉を開始したいという意思を表明してきたのみならず、一連の発表や提案の中で最大限の譲歩を行ってきたのです。それは1979年に鄧小平氏が表明した交渉のための枠組み−つまり、「チベットの独立を除いて、他のあらゆる問題は交渉可能」という点−と、明らかに合致するものです。1987年の「チベットのための五項目和平プラン」と、’88年の「ストラスブール提案」の中で打ち出した考え方は、チベット完全独立の要求を伴わずに、問題の解決を狙ったものです。しかしそれでも、中国政府はいかなる交渉へ入ることも拒否してきました。実質的な問題の交渉を一切避けて通り、解決すべき唯一の問題は、ダライ・ラマ個人のチベット帰還に関する事柄だ−と主張する態度に終始してきたのです。問題の所在は私のチベット本土帰還ではありません。この点は私が再三に亘り表明してきたところです。真の問題は、600万チベット国民の生存、そして我々固有の文化やアイデンティティー、文明を守り抜けるか否か−という点にあるのです。

交渉は次のような事柄を中心に据えて行うべきだと、私は明言して参りました。

  • 第1は、中国の人口移動政策に終止符を打つこと。中国人のチベットへの大量流入は、チベット国民の生存そのものに脅威を与えています。
  • 第2に、チベット人の基本的人権と民主的自由の権利を尊重すること。
  • 第3に、チベットの非武装化と非核化の実現。
  • 第4に、チベット国民自身に関する事柄について、自己管理を回復させること。
  • 第5に、チベットの自然環境の保全。

そしてまた、いかなる交渉も、中国が「チベット自治区」と称している地域だけでなく、チベットの全域(ウ・ツァン,カム,アムドという3地方の全て)を対象に含めて行うべきだと、私は常に強調して参りました。

私は失望させられることがあっても、また、穏健な姿勢を多くのチベット人から批判されることがあっても、こうしたやり方を14年間維持してきました。120万人のチベット人が命を失ったこと、そして共産党の支配する中国によって我が国が占領されて以来、チベットが計り知れない苦難の道を歩んできたという事実を、私は忘れたことがありません。そしてまたチベット人の皆が、我が国の独立の完全回復を希望して祈っていることも私は知っています。

しかしながら中道的なやり方を採用することにより、やがて相互信頼の雰囲気を醸成し、実りある交渉に結び付け、中国の対チベット抑圧政策を中止させる方向に向かえば…と、私は希望していたのです。多くのチベット人たちが、私のイニシアチブに支持を与え、それが現実に必要だと感じていたことも、今も私はよく認識しています。

中国政府は私の提案を片端から拒否し、いつも真の問題点をはぐらかそうとしてきました。そうしている間に、チベット本土で起きている事態の重大さは深刻の度を急激に増し、エスカレートする一方です。チベットに於ける開発とは、中国による抑圧政策の強化、チベット人が祖国の地で疎外されてゆく状況、チベット独自の文化や宗教がなし崩し的に滅ぼされてゆく事態、チベットの環境の破壊と乱開発…こうしたこと以外の何物でもありません。

今や私のこれまで採用してきたアプローチが失敗に帰したことを、認めざるを得ません。実質的な交渉を実現するという点でも、チベット情勢の全般的な改善に資するという点でも、何ら進展を得ることはできませんでした。そしてチベット本土の内外いずれにあっても、チベット人たちの中で、完全独立を要求しないという私の妥協的な立場に対する失望感が広がる一方だという事実には、私も気づいています。私の声明を聞いて一部のチベット人たちは、基本的権利や自由を回復する希望が全く無いと確信するまでに至ってしまいました。この点と、そして私が過去14年以上に亘り中国政府に対して中国政府に対して妥協的なアプローチを試みても、何ら確固たる成果を得られなかったことは幻滅をひき起こし、一部のチベット人たちの決意をくじく結果になってしまったのです。

国際的には多くの政府,議会,そしてNGOが、私のイニシアチブと提案を現実的かつ穏当なものとして評価しています。しかし国際社会の(チベットへの)支援が増大しているのを尻目に中国政府の方はといえば、一向に建設的な対応を見せることがありません。

中国側との合意に達するため数々の試みの中で、私はあらゆる手段を講じて参りました。有意義な交渉を実現できる希望は、今や国際的な支持と援助に見出すしかなくなってしまいましたが、私はまだ諦めていません。しかし、それすらも失敗に帰することがあれば、こうした政策を−その正当性に自信を持って−推進し続けることなど、私にはもうできないでしょう。そうなったら、自由を求める我々の運動の将来へ向けた進路について、チベット人の民意を問うことが私の責任だと思います。それは、以前から何回も表明してきたことですが、今も強くそう感じています。1950年12月7日、インドのネルー首相が議会で明言した如く、チベットの命運を最終的に決定するのは、チベット国民の声であるべきです。私も一貫して、この立場を主張していました。そうして得られた結果がいかなるものであれ、民意に基づいて、将来の対中関係のガイドラインを規定し、我々の自由を求める運動の路線を見直すことになるでしょう。

私はチベット問題の平和的な交渉による解決を、中国政府との直接的な関係を通じて見出してゆくという立場を、維持し続けます。しかし、こうしたアプローチを取っても、中国側は口先だけの対応に終始するばかりです。

従って次のようなことが明白に言えます。政治,経済両面の外圧が増大することによってのみ、中国の指導部をして、−口先だけの対応でなく−チベット問題を平和的,友好的に解決することが急務だとの感触を抱かせ得るのです。チベットの悲劇を救うには、人権,自由,民主主義を擁護する立場にある世界各国の政府やNGOが、断固たる態度で一斉に働きかけるしかないのです。

もしチベット問題を、相互間の率直な理解を通じて平和的に解決することができたら、600万人の香港住民が抱いている不安を和らげることにもつながると、私は確信しております。そうすれば、また、中国の台湾との関係にも良い効果の生じることが期待でき、中国の国際的なイメージも向上するでしょう。

祖国のために闘って、命を投げ打った勇敢なるチベット人たちのこと…。そして、中国側に捕らえられ、獄中に苦しんでいる同胞たちのこと…。今日は、こうした人々に対する思いを新たにする日でもあります。さらにまた、チベット本土の極端に劣悪な条件下で、民族の自由のための運動を継続している勇気ある兄弟姉妹たち…。こうした本土の同朋たちに尊敬の念を捧げます。

歴史の流れ、そして現在の世界情勢は、我が国の悲願を達成するのに有利な方向へと向かっています。我々の運動は勢いを得つつあります。このような事態の進展を懸念して中国側は最近、我々の亡命政権の転覆を図り、亡命チベット人社会に不和と分裂をもたらすような政策をまとめあげています。それゆえ我々は皆、警戒を怠ってはなりません。まさしく、祖国チベットのために献身する決意を新たにしなければならないのです。

我々の愛してやまぬ『雪国』チベットが政治的に占領支配され、文化を破壊し尽くされ、経済的に搾取され、自然環境は荒廃を欲しいままにされている…。そんな事態に終止符を打つ日が遠からず訪れるだろうと、私は固く信じています。我々が捧げてきた献身,払ってきた犠牲,積み重ねてきた苦労も最終的には、我が国が「捕らわれの身」から解放され、尊厳とともに自由と平和を回復するという、そのような形で実を結ぶでしょう。但し重要なのは、我々の運動をあくまでも非暴力主義に基づいて進めていくという点です。

全チベット国民に代わり、私はこの機会に支援を与えてくださった世界中の多くの友人たちへ感謝の念を表明し、篤くお礼を申し上げたいと思います。また多くの国の議会や政府が、チベット問題の重大性に注目し始めたことに対しても、感謝しなければなりません。もう一つ、この数年間に事態の好転した点をあげれば、中国の人々の間からさえも、我々に対する支援が起きてきたということです。例えば、中国の著名な反体制活動家である魏京生氏から鄧小平氏に宛てた1992年10月5日付の長文の書簡が、最近公開されました。その中でも、チベットに対する中国政府の不当な主張や誤った政策などについて、率直な指摘がなされています。こうした現象は、真実や正義を尊重してゆきたいという、人間の偽りなき心の表れにほかなりません。

この機会に、特に、世界中の中国人の兄弟姉妹たちから寄せられた支援と激励に対してお礼を申し上げます。最後に、亡命チベット人たちを受け入れてくださっている全ての国−中でも、彼らの多数にとって第二の故郷となっているこの国(インド)の国民と政府−に対して、多大なる感謝の念を表明し、改めて御礼を申し上げたいと思います。

生きとし生ける物全てが平和と幸福であるように、祈りをこめて…

1994年3月10日
ダライ・ラマ

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