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2002年の9月11日のテロ攻撃一周年記念に際して
  ダライ・ラマ法王のメッセージ

(2002年9月11日)

2001 年9月11日、テロリストによる世界貿易センターとペンタゴンへの攻撃は深い衝撃と悲しみを与えました。暴力は破滅的感情から生まれるものであり、あのような恐るべき破壊行為は憎しみ以外の何ものでもありません。このような事件は、理性が破滅的感情に支配されるとどれほど悲惨なことになるかを如実に証しています。

このような攻撃にどう対処すればいいのか答えるのは非常に難しいことです。もちろん問題の担当者はわれわれよりもっと分っているでしょう。しかし何よりも大切なのは、更なる熟慮であり、暴力には非暴力の思想をもって対することがより賢明な策ではないでしょうか。このことは非常に重要だと思います。合衆国本土の直接攻撃は大きな衝撃でしたが、一層の暴力を引き起す報復行為は長い目で見て決していい結果を生まないでしょう。

私たちはもっと広い視野を持ち、理性的に物事を判断し、迫りくる悲劇を非暴力によって食い止めるべきなのです。これは単に一国のみならず、人類全体に係わることです。あらゆる形のテロリズムを抑制するため非暴力の役割を長期的方策として探究するべきです。私たちは十分に考え抜かれ、互いの相違を調整した長期的戦略が必要です。人が生きてゆく限り、いつも考え方の違いや衝突は起きるものですし、自然なことです。だからこそそういった相違点を乗り越えて行く積極的方法や解決策を必要とするのです。

今日の現実を考えてみるなら、様々な異和を解決する唯一の道は、話し合いや歩み寄り、人間的理解と謙虚さ以外にはありません。本当の平和は、相互理解、尊重、信頼からなるのを知らねばなりません。人間社会の諸問題は、人間的方法で解決すべきであり、それには非暴力が一番相応しいと思います。

テロリズムは力の行使によっては克服できません。何故なら暴力には今日の複雑で深く潜在的な諸問題を解決する力がないからです。暴力は問題解決能力が無いだけではなく、もっと事態を悪くし、それによって破壊と不幸を撒き散らすだけに終わるでしょう。テロリズムも同じように、特に暴力に頼る時、状況を悪化させるに過ぎません。私たちがテロリズムを非難しなくてはならないのは、その暴力だけではなく、九月十一日に世界中が目にしたような無謀な行為による無辜の犠牲者のゆえなのです。

人の争いはいきなり起きるものでありません。そこには幾つもの原因と条件があり、往々にして舞台の主人公がそれらを握っています。ここに指導者の重要さがあるのです。いつ行動を起し、いつ抑制するかを決めるのは指導者の責任です。衝突した際には、状況が収拾つかなくなる前に予防策を採ることが大切です。暴力沙汰を引き起した原因と条件が行きつく所までいってしまってからでは元に戻すのも平和を作り出すのもとても難しくなります。暴力は更に暴力を生むものです。

もし私たちが暴力を振るわれた時本能的に仕返しをしたら、相手もやり返して当然と思うのではありませんか。暴力はこうしてエスカレートしてゆきます。予防策と抑制は初期の段階で講じるべきです。指導者というものは常に用心深く、思慮と決断力を求められています。

今日、戦争の結末への見方は変わってきています。もはや敵を全滅させるとか、全面勝利などというものを期待するのは非現実的です。そもそも、敵なる存在は絶対的でしょうか?往々にして昨日の敵は今日の友になっているではありませんか。それは物事の相対性、相互関係性、相互依存性を教えています。私たちの生存、成功、発展は相手の幸せに深く係わっています。ですから、私たちも敵なる存在もお互いあってこそなのです。相手を経済的、思想的、政治的ライバルと考えるかどうかに関係なくそうなのです。相手の破滅は限りなく我々の破滅に近づくことなのです。戦争という観念そのものが、単につらい経験だというだけでなく、自己破滅に導く要素であり、もはや意味をなさないのです。

同様に、世界経済が発展するに従い、国と国との依存性は大なり小なり強まっています。今日の経済は、環境問題にも表われているように国境など無視しています。公然とお互いを敵視していても地球資源の利用では協力し合わなくてはなりません。例えば国々は実にしばしば河川や天然資源を共有し合っています。経済関係が相互依存的になればなるほど、政治的関係も相互依存的にならざるをえません。

今日私たちにとって欠くことのできないのは、個人や国の間で、子供から政治指導者にいたるまで暴力の行使は逆効果であり、問題解決の現実的方法とはいえず、話合いと相互理解こそが、この私たちの困難を克服する唯一の道だということを徹底的に教え込むことです。

2001年9月11日の悲劇的出来事の一周年記念は私たちに絶好の機会を与えてくれました。世界はテロリズムに反対しようと決意し、非暴力による長期的予防策を実行に移そうというコンセンサスが生まれています。怒りや諸々の破壊的感情によってとんでもなく暴力的な手段に訴えようとするより、この方が究極的にはずっと効果的ではありませんか。暴力に訴えようとする気持ちは分らなくありませんが、もっと思慮ある道を選ぶことが世界のためになると信じています。

ダラムサラにて、ダライ・ラマ


文責:山際素男

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