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セントラル・パークでの講演

- すべての人の幸福を願い祈りを捧げるダライ・ラマ法王のもと、4万人もの人々がニューヨーク市のセントラルパークに集合 -

(1999/08/15 リンダ・ローズ)

ニューヨーク市は、ダライ・ラマ法王が滞在しているというニュースで持ち切りだった。8月中旬のある暑い週末、店の経営者もレストランのオーナーも、屋台の売り子も、このことを知らないものは誰1人としていないようであった。、テレビや新聞は法王の話題を連日取り上げ、ニューヨーク・タイムズ紙はその1面を法王の写真で飾った。法王の講演が行われるマンハッタン西側のビーコン・シアターでは、その名前を照明で照らし掲げた。法王のニューヨーク市での活動は、単なる仏教徒の集まりというよりは、ニューヨーク市全体の1大イベントと化していた。

ダライ・ラマ法王は、キョングラ・ラト・リンポチェとチベット・センターの招待を受け、リチャード・ギアと彼が率いる団体の尽力により、4日間にわたって講義を行うためニューヨーク市を訪問したのであった。この訪問の目玉は、なんといっても8月15日にセントラル・パークで行われた、希望者は無料で参加することができる公開スピーチであった。この公開スピーチはまた、人々がダライ・ラマ法王とともに、すべての人の幸せのため熱い祈りの言葉を唱える場ともなった。

ビーコン・シアターで法王は、カマラシーラの『瞑想の中間的段階』とトグメイ・サンポの『観音菩薩の37の練行』に基づいて3日間の講義を行ったが、連日満員であった。講義の中で法王は、瞑想に関して大変実践的な助言を示唆し、質疑応答も何度も行われた。聴衆は法王の言葉を、一言も聞き漏らすまいとしていた。

4万人ものニューヨーカーたちは、日曜日、セントラル・パークのイースト・メドウに押し寄せたが、そこではくつろいだ雰囲気が感じられた。国務省の応援のためセントラル・パークの警備に当たっていたジョー・アヤラ巡査は、前夜、ダライ・ラマ法王をテレビで見たそうだ。彼は、「もっとお話を聞きたかったな。法王は心の平和に関してお話していたんだ。教えていただきたいことがまだたくさんあるよ。この世の中、暴力であふれているからね。」と語った。

天気が良い間、セントラル・パークへと流れる人の波が続いた。そこでは家族、友人、子供たちと一緒にピクニックを楽しんだり休息をとったり、または座ったり横になったりする姿が見られたが、その目的はダライ・ラマ法王のスピーチを聞くためであった。リチャード・ギアとセントラル・パーク管理理事であるヘンリー・スターンの紹介を受け、ダライ・ラマ法王が登場し、スピーチが始まった。法王は、ステージから飛び出しそうな勢いで聴衆に語りかけ、非暴力がどれほど必要とされているか、身を乗り出して理解を求めた。富める者、貧しい者、また肌の白い者、黒い者、すべての人々が持つ可能性について触れた後、法王は、自分は奇跡を行うことはできないと述べたが、心の平和を育てることについて再び話をした。

問題の解決は金銭によるものではないことがスピーチの中では強調されたが、法王が言うところの「日常の倫理」に関する話もされた。この「日常の倫理」とは、

人間の良い特性を育て保ち、他者の権利と人間としての価値をお互いに尊重しながら、物事を独占せず思いやりの心を磨いていくことである
と説かれた。そしてダライ・ラマ法王は次のように語った。

皆さんは、ダライ・ラマとは何か特別な人間だという印象をお持ちかもしれませんが、それは違います。私も皆さんと同じ存在です。皆さんには平等な機会と能力が備わっています。皆さんにも同じことができるのです。

そして、そのための具体的な方法とは、心を鍛錬して、思いやりの心と利他主義を育てることであることを説明した。

ここで法王は、シャーンティデーヴァの著作、『Bodhisattva's Way of Life (入菩提論)』から2つの詩篇を朗読したが、この詩篇は参加者が読むことができるよう、大きなスクリーンに写された。ダライ・ラマ法王の要求に応えて4万人の声がこの詩篇を3度朗読したが、その時、朗読する者の心の中には、利他主義と崇高なお方であると自分たちが認めたダライ・ラマ法王への尊敬の念が湧き起こっていた。

貧者には富が見つからんことを
悲しみにくれる弱き者には喜びが見つからんことを
淋しき者には希望、とこしえの幸せ、繁栄が見つからんことを
怖れる者は恐怖が止まんことを
束縛される者が解き放たれんことを
弱き者には力が見つからんことを、そして心が友情で結ばれんことを

この朗読は力強いものとなったが、最後まで大変落ち着いた雰囲気に満ちあふれていた。
同時に法王は、11世紀のチベットの導師であるラングリ・タングパの『心の鍛錬に関する8連の詩句』に関して解説を行った。この解説で法王は、ほとんどの問題は自分たちの心が作り出している、と述べ以下のように語った。

「戦争という概念はもはや時代遅れです。近隣の利益は自分たちの利益でもあるのです。近隣の利益を損なうようなことをするなら、それは結局は自分たち自身を苦しめることになるのです。意見が衝突したときには、真の対話を持つ必要があります。すべての人には人の役に立つ素晴らしい能力があるのです。視野を広げ、すべての事柄の全体像をあらゆる角度でとらえることから始めなくてはなりません。非暴力を思いやりの心で発展させていくことも必要です。

他者は私たちの社会、いうならば体の1部なのです。もし脚が体の1部だとするなら、手はそれを助けに行かなくてはなりません。私たちの家庭、そして国において非暴力による手段を作り上げる必要があります。環境もまた、考慮しなければならない問題の1つです。環境は私たち人類のふるさとです。唯一のふるさとなのです。もし環境を破壊してしまったら、つまり私たちの怠慢により傷つけ破壊してしまったら、いったい私たちの行く先はどこにあるというのでしょう?」

心の鍛錬に関して法王は、不当な扱いを受けたときにどのように行動したらよいか、説き明かしてくれた。

「まず、状況を把握しなさい。自分が状況に耐え得るのであれば、そして否定的な結果が生まれないのであれば、そのまま受け入れなさい。否定的な大きな結果があり何か対策を取らなければならないのなら、怒りを持たずに状況を自覚しながら行動しなさい。腹が立ち感情的になると、消化不良を起こしたり不眠に悩まされたりするかもしれません。それは体にも良くないし気分も害してしまいます。このような状態で、冷静さ、幸せ、心の平安、喜びというものから離れてしまうほど、問題の当事者を喜ばせることになり、彼らの思うつぼにはまることになります。自分の敵こそが自分自身を鍛錬するための最上の教師なのです。」

2時間後、ダライ・ラマ法王は聴衆に向かって手を振りながらその場を後にしたが、法王の知恵、偉大な思いやり、そしてユーモアは残り続けた。法王のスピーチはほとんどが英語で行われ、聴取の心の奥底まで直接伝わった。すべての人が、法王のスピーチから何かを学んだ。大勢がその場を去りがたい思いであったらしく、会場に留まり法王の言葉の意味をじっくりと考えようとする人々でいっぱいであったが、いたる所で笑顔が見られた。

警察当局の発表によると、当日セントラル・パークでの逮捕者は1人もいなかったそうだ。

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