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ダライ・ラマ法王、中国人有識者とテレビ会議で対話(議事録編)

(2011年1月20日 TibetNet)

2011年1月4日、ダライ・ラマ法王と中国人有識者がインターネットを通じて対話するテレビ会議が行なわれた。ダライ・ラマ法王はダラムサラの官邸から参加し、中国人有識者側からは、作家の王力雄(Wang Lixiong)氏、人権派弁護士の滕彪(Teng Biao)氏、北京を中心に活動する弁護士である江天勇(Jiang Tianyong)氏が参加した。対話は、ダライ・ラマ法王が中国本土のさまざまな地域の中国人から寄せられた質問に答える形式で行われた。以下はその議事録である。


■質問1:
猊下がかつて中華人民共和国との交渉にあたらせた特使であり、1951年に十七か条協定に調印したアボ・アワン・ジグメ(Ngabo Ngawang Jigme)氏についてお尋ねします。ジグメ氏は猊下から調印に関する全権を与えられていなかったにもかかわらず調印したわけですが、それでも猊下は後に協定に合意されました。その後、ジグメ氏は猊下と反対の立場を取ることが多くなり、チベット問題の中国政府側スポークスマンのような役割をしました。猊下は、ジグメ氏についてどのようにお考えでしょうか?

■ダライ・ラマ法王:

私は、1950年よりも以前からアボを知っていました。当時、アボを知る人たちは、アボのことを正直で高潔な人物として一目置いていました。私もまた、進歩的で信用できる人物と見なしていましたので、重鎮の一人として信頼していました。十七か条協定の調印の後、私はラサでアボに会いました。そのとき、アボは私に、調印は無理やりさせられたのだと言いました。もし調印を拒んでいたなら、チベットに対する軍事的解決がなされていたと言うのです。軍事的解決よりは平和的解決のほうがいいと、アボは思ったのです。さらに、アボはこうも言っていました。調印の席で、彼らはチャムド政府の公印を持参していたにもかかわらず、それを使えませんでした。中国政府が用意していた偽造の印鑑を強制的に使わされたからです。

同様に亡命後の1979年、鄧小平氏が柔軟な姿勢を見せると、私はすぐに事実を明らかにするために亡命政権の特使をチベットに派遣しました。アボは私の特使に会うと、清王朝時代の事実やチベット政府が管轄する地域では一度も中国に税金が支払われていなかった事実に着目するよう話したそうです。これは明らかにアボの愛国心の表われです。

また、1989年に行なわれたチベット自治区人民会議では、アボは、「南京政府は、ダライ・ラマの転生者の発見のみならず、ダライ・ラマ14世の即位式に関するすべての決定を行なった」と報じた中国国営新聞の記事は事実と異なるとして、これを論破しました。アボは、「ダライ・ラマの転生者はチベット人の摂政が宗教的伝統に則して認定することになっており、外国人が即位式を司ることもない」と述べました。「新聞の記事は政府の役人の主張であって事実ではない」とアボは言ったのです。即位式の頃、私はまだ幼かったのですが、それでも、英国領インド、中国、ネパール、ブータンの代表たちが列席していたことを今も鮮やかに記憶しています。ですからこれについては、アボは事実を明らかにすべく最善を尽くしてくれたのです。アボが逝去したときには、彼のために追悼式を行ないました。我々の友人の中に、アボの追悼式など行なう必要はないと言った人がいたのは事実です。しかし、脅されているときには、与えられた状況に沿って駆け引きをせざるを得ないのもまた事実なのです。ゆえに私は、アボを常に信頼していましたし、亡くなった今も、いつも彼のために祈りを捧げています。


■質問2:
亡命チベット人の中には、猊下ですら制御できない人たちがいると聞きます。彼らを本当に制御できない事態が起きてしまったら、猊下はどのように対処をなさるおつもりでしょうか?

■ダライ・ラマ法王:

15万人のチベット人が亡命生活を送っています。おそらくその99パーセントがチベット問題について同じ不安と真実を共有しています。意見の相違が出てくるのは当然でしょう。私たちは民主的な道を歩んでいるのですから、意見の相違はあって然るべきことです。私は亡命チベット人には、「自由に考え、自由に発言する権利があるのだから、自由に表現しなさい」と言っています。ですから、いろいろな意見が出てくるのは当然のことなのです。たとえば、チベット青年議会はチベットの独立を求めていますので、中道政策を批判しています。彼らに会う機会があると、私は、「中国政府は、私が君らの誰かを逮捕するのを待っているよ」と彼らに言ってやります。しかし、私たちは自由がある国にいるのですからそんなことはできませんし、したいとも思っていません。


■質問3:
敬愛する師である猊下に質問です。中国共産党と対峙するにあたって、非暴力や真実は功を奏しているのでしょうか。功を奏しているのなら、非暴力と真実によってチベット人はどのような恩恵を受けているのでしょうか。

ダライ・ラマ法王:

私がいつもチベット人に言っていることを、ここでもお話しましょう。我々は常に非暴力を土台とする中道政策を貫いて中国政府との対話を行なってきたわけですが、いまだ明確な結果は出ていません。しかしながら、中国人の知識人の方々や学生、現実に起きていることに関心を持つ方たちから強力なサポートをいただいているのは、非暴力と真実を貫いてきた結果なのです。この点において、私は、努力したかいがあったと思っています。

中国政府との合意に至るのは簡単なことではありません。しかし、我々の交渉能力はさておき、こうして中国人の知識人や一般市民の方々との交流を広げていくならば、我々の主張が間違っていないことが広まっていくでしょう。天安門事件の数か月後のことですが、私は米国を訪問した際にハーバード大学で中国人の友人たちに会いました。我々の主張を説明すると、「そのようなことを知ったなら、中国人は一人残らずダライ・ラマの主張を支持するでしょう」と彼らは言ってくれました。


■質問4:
猊下、転生ラマ制度の改革のことでお尋ねします。そのような改革を行なうことは、釈尊の教えに反するのではないでしょうか?

ダライ・ラマ法王:

まず、この質問をした方には、少しでもいいですから大乗経の『カンギュル(仏説部:釈尊の教えそのものが書かれている)』と『テンギュル(論疏部:弟子によるカンギュルの注釈)』に書かれている釈尊の教えを読んでいただきたいと思います。転生ラマを認定する習慣はインドで育まれたのではありません。同様に、タイ、ミャンマー、中国といった仏教国でもこのような伝統は育まれていません。悟りを得た存在の生まれ変わりとして承認する仕組みはありますが、トゥルク(化身ラマ)やラマ(師僧)として認定する制度はないのです。チベットでは、小さな子どもが過去世を記憶していて、その記憶が真実であると証明されたことが事の始まりでした。そして次第に、この仕組みが社会階級制度のようなものとして確立されていったのです。

このような背景があるので、私はトゥルク(化身ラマ)とラマ(師僧)の違いを説明するようにしています。ラマ(師僧)はトゥルク(化身ラマ)である必要はありませんし、トゥルクがラマである必要もありません。あるいは、ラマ(師僧)であり、かつトゥルク(化身ラマ)である場合もあります。学問と実践の結果として与えられる資格がラマ(師僧)です。トゥルク(化身ラマ)は、たとえそのような教育を受けていなくとも、前世がラマ(師僧)であったという理由のもとで社会的地位を享受します。「ラマ(師僧)」と呼ばれる人がその資格に欠けていることがありますが、これは恥ずかしいことです。そこで私は、「トゥルク(化身ラマ)の認定については何らかの制限をかける仕組みが必要である」と40年ほど前から言っていました。資格に欠けるトゥルク(化身ラマ)が何人もいるのはよいことではないからです。

私自身は、輪廻転生制度を釈尊の教えに仕えるための仕組みとして考えています。400年間続いてきた伝統である、聖・俗両方の最高指導者としてのダライ・ラマの輪廻転生制度については、2001年に亡命チベット人による政治的指導者の直接投票が行なわれた時点で終わっています。私は1969年に、「ダライ・ラマ制度を存続すべきか否かは、チベット人民が決定すべきことである」という公式声明を出しているのです。将来、ダライ・ラマの転生者が必要であるという決定がなされたなら、必ずしも従来の手順が踏襲される必要はないと思います。その時々の状況に応じればよいのです。これは釈尊の教えと一致しています。私がラマたちの転生の可能性について話をすると、チベット本土から来たチベット人や中国人の友人のなかには、これはチベット仏教の伝統に沿ったことなのだろうかと思う人がいるものです。それがダライ・ラマの転生についての話となればなおさらです。


■質問5:

現在、中国には猊下に対する根深い怒りや敵意を持っている人たちがたくさんいます。そのような人たちにおっしゃりたいことはありますか?

■ダライ・ラマ法王:

ひと頃、ダライ・ラマは悪魔だと言われたことがありました。悪魔と呼ばれることをどう思うかと尋ねられたことも何度かあります。そのような質問には、「私は悪魔ですよ。頭にある二本の角を見てください」とユーモアで答えたものです。

チベット側と中国側の両方ではなく、中国側からだけの、曲解された一方的な情報しか得られないのならば、そのような感情を抱いても無理はないと思います。たとえばオリンピックの聖火リレーが行なわれたときには、私は、オリンピックは13億の中国人の誇りであるので、いかなる問題も起こしてはならない、と関係者に要請しました。さらには、中国でのオリンピック開催が決定される前、私がワシントンD.C.を訪問していたときのことですが、何人かのジャーナリストから中国でのオリンピック開催について意見を求められました。「中国には豊かな文化遺産があり、最も人口の多い国ですから、オリンピックの開催国となるにふさわしいと思います」と、私は答えました。事実に基づいてそう言ったのです。

しかし、中国政府はいまだに我々がオリンピックを妨害しようとしたと大々的に報じています。そのようなプロパガンダが流され、全体的な状況が知らされないわけですから、中国の人たちを責めることはできません。

その一方で、中国の外に目を向けるなら、私を尊重してくれる人たちが世界中にたくさんいます。

ですから、私の兄弟姉妹である中国人のみなさんには、あらゆる情報を信じる前にまず細部に至るまで検証するようお願いしたいと思います。私は中国人の学生に会うといつも、「自由がある国に来ているのだから、目と耳をじゅうぶんに活用しなさい」と言っているのです。


■質問6:
私たちが知る範囲では、中華民国(台湾)の中央政府はダライ・ラマの転生者選びと即位式に出席していました。そこでお尋ねしたいのですが、猊下は中華民国(台湾)のことを意識しておられるのでしょうか。今後の転生者選びにおいて、台湾政府が再び介入してくるとしたら、どれほどの影響力を及ぼすとお考えでしょうか?

■ダライ・ラマ法王:

これについては、先にアボについて述べたことと重複しますので一般的な話をしましょう。私が台湾にいるのなら、「ワン・チャイナ(ひとつの中国)」を求める声を支持しているでしょう。しかし最終的には、将来ひとつになるかどうかは、中国本土と台湾の双方の方々次第の問題です。それよりも重要なことは、現在の台湾にある民主主義、健全な経済、高い教育水準をきちんと保護していくことなのです。これはいつも言っていることです。


■王力雄氏:
本日は、猊下がおっしゃったように互いの匂いこそ伝えられませんが、実際に猊下に会ってお話しているも同然でした。21世紀はインターネットの時代です。今回、猊下と対話させていただけたことを、今後の礎にしていきたいと考えています。今回のような対話が、中国とチベットの関係にとって建設的で、互いをよりよく理解し合うのに役立つと見なされれば、将来はもっと多くの中国人の有識者やこれに関心を持つ人たちが参加してくるものと期待しています。タシデレ。

■ダライ・ラマ法王:

そうですね、すばらしいことだと思います。いつでも対話させていただきましょう。現代テクノロジーを使って、中国の友人が抱いておられる懸念を拭い去りましょう。私はいつも「中国人とチベット人の友好関係」を大切にしています。

このような会議や対話の機会をたびたび持てるなら、中国人とチベット人が真の信頼関係を築いていくのに大いに役立つことでしょう。気持ちが遠く離れたままでは、信頼関係を築くことはできません。問題について共に話し合い、事実が明らかになればなるほど互いへの信頼も深まるものです。信頼があるところには友好関係が生まれます。友好関係があるならば、たとえ問題が生じても解決することができるのです。

私の顔ははっきり見えていますか? 私の眉が、灰色がかっているのがわかりますか? また会いましょう。タシデレ。ありがとう。

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