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ダライ・ラマ パリマッチ誌 インタビュー

2003年10月パリマッチ誌より抜粋

── 法王は長い間、世界的な武装解除を願っていらっしゃいますね。
ダライ・ラマ法王:

武装解除は実際にひとつの可能性ですが、その実現のためには、各国政府と世界中の人々が一丸となって相当な努力を払わなければなりません。まず、核兵器から始めて、化学兵器、生物兵器へと、段階的に武装解除を進めていく必要があります。そしてその一環として子どもたちに武装解除の様々な良い点を教えるべく、学校での教育プログラムにも取り入れていく必要があります。地球的規模の視野で、各国が同じような問題を抱えており、またどの人もいかなる国とも関わっていることをはっきり理解すれば、武装解除において困難な問題に直面しても、少しずつ兵器削減の実現へ向かう様々な解決策を見出していけるはずです。私の考えでは、それが武装解除という意味において、前に進んでいくための唯一の方法です。

破壊兵器削減は、確かに全世界にとって有益なことに違いないでしょうが、残念ながらそれ以外にも秘密裏にされている多くの兵器や軍事力があるであろうことは誰もが気付いていることです。今日、世界の大多数は、公然と戦争反対を表明しています。一方、昔は、敵を打ち倒すことに、喜びのような、ある種の恍惚感を感じるということがしばしばでした。つまり、昔は平和への渇望というものは、今よりずっと少なかったわけです。今は、兵士も民衆も誰も戦争に参加することを幸福とは感じません。

武装解除に到達するためには、いくつかの軍を統合することから始める必要があるでしょう。例えば欧州では、仏独合同軍を作るというふうに三つか四つの軍に減らしていき、それからひとつに統一していく。そして世界には、ひとつの欧州軍、ひとつの米軍、ひとつの中国軍、ひとつのアフリカ軍というふうに。もちろん、これらそれぞれの軍の規模は削減させていかなければなりません。最終的には、段階を踏まえて、現在、世界で知られているようなテロや事件の煽動者を押さえ、紛争を火種のうちに早期介入して解決できる特殊部隊を持つ移動可能な多国籍軍として、ひとつにまとめていく必要があるでしょう。

結局、地球を武装解除するためには、まず自分自身から武器を手放すことから始めなければならないのです。もし世界の指導者や市民たちが自分の内面からの武装解除を決意するならば、つまり暴力、憎しみといった考えを自分の心から切り離すならば、新しい思考状態が外部の武装解除へと導くことになるのです。ものの考え方を変えることにより、歴史を変え得るのです。政治的な計画が人間の心を元にしたものでないならば、武装解除はほとんど望めないでしょう。

── 世界では、イスラムに対する理由のない恐れが広がりつつあるようにです。そのことによって、他の紛争を巻き起こす危険性はないでしょうか。
ダライ・ラマ法王:

危険性はありますね。米国同時多発テロ「9月11日記念日」に際して、私が米国のキリスト教の大聖堂で言ったことで、これからも言い続けることなのですが、それは、「そうした恐れは、無知、他者の文化に対する誤解によって出来ている」ということです。ある特定のイスラム教徒の破壊的な行為、—本当のイスラム教徒であれば決してしないことですが—、それだけを見て、イスラム世界全体を判断してはいけないということです。テロや政治の陰謀に宗教を使うことは、不幸にも、平和的と言われている仏教も含めて全ての宗教に起こり得ることなのです。例えば、スリランカや、カンボジアで起きたことが挙げられます。ポルポトは仏教徒の出でした。程度は違いますが、しばしばチベットにもありました。

イスラム教徒がアラーに1日5回、祈りを捧げる時、彼らは常に、全ての宗教に共通の美徳である寛容、慈悲を心に刻むのです。イスラム教徒と仏教徒の間では、ユダヤ教徒とキリスト教徒の間でなされているような意見交換や議論は未だにありません。私たち仏教徒は、やがて本として出版できるような、内容の深い対話をイスラム教徒と交わしたことがないままです。もしそれが実現すれば、大変有益なものとなるでしょう。私には残念ながら、こうした対話のできるイスラムの代表的な宗教家の知り合いがインドにはいません。

私は、フランス在住の(イスラム教徒の)ブバカール博士を大変尊敬しています。博士は本当に素晴らしい人物です。一緒にルルドへ巡礼の旅や多宗教間の幾つかの会談にも参加したことがあります。

── イラクで戦争が勃発する直前、何人かが猊下にバクダッドを訪れるよう頼んだということですが、どうして行かれなかったのでしょうか。
ダライ・ラマ法王:

私は、あの戦争に反対した人々を、とても素晴らしいことをしたと感嘆しています。平和のために運動を起こすことは必要なことです。なぜなら、それは人々の声を代表するものですから。しかし、たとえそうであっても、暴力を止めるためには充分であるとは言えないのです。バグダッドで一介のチベット僧の私に何ができたでしょうか。まったく何も役に立たなかったことでしょう。イラクに友人はおりませんし、私はアラビア語も話せません。それに間違いなくビザも下りなかったことでしょう。頭で爆弾を受けるくらいはできたでしょうが。(笑)

反対に、ノーベル賞受賞者で大変素晴らしい人物、例えばバツラフ・ハベル元チェコ大統領やデズモンド・ツツ大主教たち、科学者、哲学者、つまり政治的もしくは経済的な意図を持たない様々な世界の代表者たちが問題に解決を見出すべく一同に会すことは、非常に有益なことだと考えます。今週会うハベル元チェコ大統領にこのことを提案するつもりなのです。私一人では、中国の友人たちを苛立たせる以外に何もできないでしょうから。

── チベット亡命政権は最近、中国とチベットに二度、代表団を送りました。何か特筆すべき進歩はありましたでしょうか。
ダライ・ラマ法王:

2002年9月と2003年6月、チベット亡命政権の代表団が、チベットと中国に送られました。この時の話し合いの主な目的は、中国側によく説明するということです。中国側は、私がチベットの独立をもはや要求しておらず、意味のある文化的な自治を求めているのだということが未だ信じられないのです。私たちは、チベットが防衛と外交面で中国の完全なる一部となることができると考えています。私たちの使節らが会った中国側の代表陣は、丁寧に聞くだけでなく、以前よりずっとオープンに話し合いに応じたということです。また、これらの話し合いは、チベットにいるチベット人の生活改善のためのものでもありました。しかし、残念ながら、対話再開以来、チベットにいるチベット人の境遇には何ら改善がみられません。

チベット入りした使節たちは、いくらかがっくりするような噂を耳にしました。チベットの中国人役人から聞いたようです。それは、ダライ・ラマの使節との話し合いはジェスチャーに過ぎず、現実には「対話」などはどこにも与えてはならないという指示があったというものです。これは本当に残念なことです。なぜなら、そのような話し合いのジェスチャーで、チベット人の境遇が改善されることは決してないからです。

私の中国やチベット訪問の可能性に関しては、ふたつの種類があります。ただ単に「歴史がダライ・ラマのチベット帰還を望んでいる」というようなことではありません。まず、私がずっと以前から願っていることなのですが、例えば中国の五台山(山西省北部にある中国の仏教四大聖地のひとつ)のような場所に純粋に精神的な巡礼を行うための訪問です。次の可能性として挙げられるのは、全く政治的な旅行です。つまり、私が実質的にラサに戻るというものです。しかし、その場合、チベット人があまりにも感情的な反応を示し、大勢になり、コントロールできない状態になり、誰にも予想がつかないことではありますが、中国に対して蜂起に出る、といったこれらのリスクがあるのです。そうなると、状況は全く非生産的なことになってしまいます。ゆえに、私がチベットに帰るのならば、時間をかけてプランを練り、念には念を入れていかなければならないのです。チベット人が落ち着いた状態で私を迎えるために人々に予告していかなければなりません。そのためには多くの準備を必要としなければならないでしょう。また私自身、そうした意味で、かなり明確なメッセージをチベット人に出すことになるでしょう。

── 猊下とローマ法王との関係はどのようなものでしょうか。
ダライ・ラマ法王:

今までローマ法王には何度かお目にかかっています。ローマ法王の、平和へ向けた、いつも変わらない、そして何度も何度も続けられている活動に、また他の宗教に対して常に一身に柔軟でいらっしゃる姿勢に、大変感銘を受けています。とりわけ、アッシジで開かれた歴史的な集まりのことはよく憶えています。

── 猊下は、最近、ボストンでハイレベルの科学者たちと対談に参加されました。科学と仏教のつながりとは、いかなるものでしょうか。
ダライ・ラマ法王:

科学と仏教はだんだんつながりがでています。例えば、まず、私たち仏教徒と科学者との協力関係は、身体の健康には精神的なトレーニングが重要であることを臨床で証明しています。脳の機能、さらには体の機能を変化させるという点で、精神的なトレーニングが重要であることが証明されています。また、現代科学と認識科学(仏教)の共同作業によって、(仏教僧の)深い思索(瞑想)中の科学研究において、脳におけるいくつかのメカニズムが明らかになったということが挙げられます。

── 猊下はしばしば、敵は最良の友人であるとおっしゃっていますが、その理由は何でしょう。
ダライ・ラマ法王:

敵は、私たち自身の進歩や忍耐の実践の手助けとなり、大変貴重な存在です。もし私がチベットにずっといたならば、もし私の国が侵略されなかったならば、おそらく私は今よりずっと保守的になっていたことでしょう。中国人は私を、強靭で決意の固い人間にしてくれました。私は、自分を進歩させてくれた中国人に、感謝しているのです。

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